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Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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プロダクトとUXのあいだで ──デザインと思考の話

AIが「作れる」時代に、私たちは何をするのか──「判断できる人間」が価値を持ち続けるプロダクト開発の構造変化

プロダクトとUXのあいだで ──デザインと思考の話 第4回

 「AIで作ってみたが、なんかしっくりこない」──プロダクト開発の現場で増えつつあるこの違和感の正体は何なのでしょうか。AIによってUI実装やコーディングのハードルが下がり、「作れること」の価値が相対的に低下する今、開発チームの役割は大きく変わりつつあります。本記事では、factory4のUI/UXデザイナー・新谷氏が、AI生成物が「刺さらない」理由をUX理論から紐解き、これからのプロダクトマネージャーやデザイナーに必須となる「編集と判断の力」について考察します。(編集部)

はじめに

 こんにちは。Cosmowayが組織するデジタルプロダクション「factory4」のUI/UXデザイナー、新谷です。

 最近、現場で感じることがあります。

 「AIで作ってみたんですが、なんかしっくりこなくて」

 プロダクト開発の現場で、こうした声が確実に増えています。Claude CodeやFigmaのAI機能、GoogleのStitchのようなツールを使えば、コードを書いたことがない人でも、WebサービスやアプリのUIを形にできるようになりました。設計から実装、デプロイまで、1人で完結してしまうことも珍しくありません。特にXなどSNSでは、Claude Codeについては日々新しいトピックが上がっています。

「Claude Code by Anthropic | AI Coding Agent, Terminal, IDE」より引用
Claude Code by Anthropic | AI Coding Agent, Terminal, IDE」より引用

 海外では、AIを活用して個人開発者が数週間でプロダクトを立ち上げ、収益化に成功する事例も増えています。「Vibe Coding」と呼ばれるこのムーブメントは、もはや特殊事例ではなく、一つの現実になりつつあります。

 少し前まで、「作れる」こと自体が価値でした。しかし今、その価値は確実に薄れ始めています。

 では、この変化の中で、デザイナーやエンジニア、プロダクトマネージャーの役割はどう変わっていくのか。そして、私たちは何を武器にすべきなのか。

 今回はこの問いを、UX理論と実際の現場感覚を交えながら、一緒に考えてみたいと思います。

AIは「間違っていない」のに、なぜ「刺さらない」のか

 実際にAI生成のUIを扱っていると、不思議な感覚に陥ることがあります。

 レイアウトは整っている。UIも破綻していない。コードも問題なく動く。「普通に使える」ものは、すぐに出てきます。

 なのに、どこか違う。

 ブランドの空気感が出ていない。言葉の温度がわずかにズレている。余白の取り方がほんの少しだけ違う。どこを強調し、どこを削るか。その判断が、微妙に「惜しい」方向にある。結果として、「ちゃんとしているのに、刺さらない」プロダクトが出来上がる。

 この違和感を埋めるために修正を重ねるくらいなら、最初から設計し直したほうが早い。そう感じた経験は、現場でプロダクトに携わる人なら、一度はあるのではないでしょうか。

 なぜこうなるのか。UXの観点から整理してみます。

 デザイン理論家のDonald Normanは、著書『Emotional Design』の中で、人間がプロダクトに反応するとき、本能的(Visceral)・行動的(Behavioral)・内省的(Reflective)という3つの認知レベルで処理していると述べています。

「Emotional Design - Wikipedia」より引用
Emotional Design - Wikipedia」より引用

 AIが現在、高い精度で達成できるのは、主に「行動的レベル」──つまり、機能として使いやすいUIの設計です。

 一方で、「このブランドの空気感に合っているか」「この余白がどんな印象を生むか」といった内省的レベルの判断は、依然として人間の経験と文脈に強く依存しています。AIは「正しい形」を出すことができる。しかし、「なぜそれであるべきか」までは担保しない。これが、「間違っていないのに、刺さらない」という違和感の正体です。

「作れる」の希少性が下がると何が上がるのか

 ここで起きている変化をシンプルに整理すると、こうなります。

 作ることの希少性が下がり、判断することの希少性が上がる。いま起きているのは、価値の置き場所そのものが変わるような変化です。

 かつて「作れる」こと自体が希少でした。Webサイトを設計できる人、UIを実装できる人、それだけで市場価値があった。しかし今、その希少性は急速に失われつつあります。

 では、価値はどこへ移るのか。

 それは「何を作るか」ではなく、「何を作らないか」を決める力です。「どのUIを採用するか」ではなく、「どのUIを捨てるか」を選ぶ力です。

 プロダクトマネージャーの世界でよく言われる「PMM(Product Marketing Manager)的な視点の重要性」も、この文脈と重なります。機能を積み上げるプロダクトマネージャーではなく、削ぎ落とすことができるプロダクトマネージャーが、今より強く評価されるようになっている。

 それは、AIが「作ること」を担い始めた結果として、「何を残すか」を判断する役割の価値が、相対的に高まっているからです。

 これは、プロダクト開発の構造そのものが変わり始めているということでもあります。

デザインは「作る仕事」から「編集する仕事」へ

 この変化は、デザインの領域でも同様です。

 「デザイン」という言葉の語源を辿ると、ラテン語のdesignare(デジナーレ)──「意味を示す、印をつける」という意味にたどり着きます。本来、デザインとは意味を与える行為であり、形を作る行為ではありませんでした。
    

 にもかかわらず、長年にわたって「デザイン=ビジュアルを作ること」という慣習が定着してきました。AIの台頭は、その前提を静かに揺らし、デザインの本質を問い直す契機になっています。

 では、これからデザイナーに求められる仕事の重心はどこに移るのか。

  • 生成されたUIを評価する眼:AIが出してきた複数の候補の中から、ブランドの文脈に最も合うものを選ぶ力。
  • 不要なものを削ぎ落とす判断:AIは「ゼロから追加する」ことは得意ですが、「あえて削る」という意思決定は苦手です。何を見せないかを決めることが、体験の質を大きく左右します。
  • 方向性を言語化して導く力:AIへの指示そのものが設計になる時代において、「何を求めているか」を的確に言葉にできるかどうかが、アウトプットの質を決定づけます。

 これらをひとことで言えば、編集と判断の仕事です。

 出版の世界における「編集者」の役割に近い、というとイメージしやすいかもしれません。優れた編集者は、必ずしも自ら原稿を書くわけではありません。しかし、何が読者に届くかを知っている。何を残し、何を削るかを判断できる。著者よりも、読者に近い視点を持っています。

 AIが「下書き」を出す。人間が「意味」と「責任」を与える。この関係性が、これからのプロダクト開発の基本構造になっていきます。

次のページ
プロダクトマネージャー・デザイナー・エンジニアに共通して求められるもの

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この記事の著者

新谷友樹(株式会社Cosmoway/factory4)(シンタニ トモキ)

大手広告デザイン会社を経て、デジタルプロダクション「factory4」に所属。モバイルアプリやWeb、IoTシステム開発を中心に、UI/UXデザインやアートディレクション、デザインコンサルティングを担当する。映像制作や動画コンテンツ制作、写真、イラストレーション、デザイン講師など活動領域は多岐にわた...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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