QCDSはすべては満たせない。前提を疑い、捨てる決断を
プロダクト開発の現場で必ず直面するのが「QCDS(品質・コスト・納期・スコープ)」の調整だ。現場では「すべてが大事」と言われがちだが、蜂須賀氏はこの考えを明確に否定する。
「世の中、皆真面目すぎるんです。1から10のステップがあるときは3までやって達成できるならそこでやめればいいのに、10までやろうとしてしまう。例えばコストを圧縮したいなら、クオリティやスケジュールを思い切って犠牲にすればいい。すべてを丸く収めようと過剰に考えた結果、どうでもいいものができあがってしまうのです」
優先度1のことだけを本気でやれば3か月で勝てるかもしれないのに、2も3も4も一緒にやろうとするから、1年経っても成果が出ない。
「与えられた問いや制約が、本当に守るべき制約なのかを疑うべきです。相手の土俵で戦うのではなく、自分の戦いやすい土俵に引きずり込んでくる。この『地の利』を活かすスキルが高いことこそが、一流のプロダクトマネージャーの条件です」
明日から現場を変える「辞書」としての教科書活用法
多岐にわたる領域を網羅した本書だが、最初からすべてを完璧に実践しようとすると挫折してしまう。蜂須賀氏は、自己肯定感を保ちながら「小さな成功を繰り返すこと」の重要性を説き、本書の「辞書的」な活用を推奨する。
「人によって今興味のあるテーマは違います。利用規約を作る仕事が来たら法務の章を読む。今は関わりがなくても、自分が成長してマーケティングやPRを任されるようになったときはかつて興味のなかった章が猛烈に役立つはずです。一度読んで終わりにするのではなく、手元に置いておき、必要な時に開いてほしいですね」
さらに、個人で読むだけでなく、関連する他部署のメンバーを巻き込んだ活用も効果的だという。
「プロダクトマネジメントチームで輪読会をして、人事の章なら人事担当者を、マーケティングの章ならマーケターをゲストに呼んで一緒に議論する。自分の専門領域をプロダクトマネージャーがどう見ているかが可視化されるので、他部署の人にとっても相互理解の強力なツールになるはずです」
「作る」ことが民主化され、誰もがプロダクトを生み出せるAI時代。だからこそ、事業としての成功に責任を持ち、泥臭い現実と向き合いながらチームを勝利に導く「真のプロダクト責任者」の価値はかつてなく高まっている。自らのキャリアに危機感を覚え、同時に大きな可能性を感じているすべての開発者にとって、本書はかけがえのない道標となるだろう。
『勝てるプロダクト開発の教科書』は2026年7月22日発売。現在、Amazonなどの書店で予約の受け付けを開始している。
また、7月16日・17日に開催される開発者向けカンファレンス「Developers Summit 2026 Summer(デブサミ2026夏)」では、蜂須賀氏による関連セッションが実施される。会場では書籍の事前発売会および著者サイン会も予定されており、一般発売より早く本書を手にする貴重な機会となる。AI時代を生き抜くための武器を手に入れたい方は、ぜひ足を運んでみてほしい。
