プロダクトロードマップとは
プロダクトマネージャーにとって、最も重要な仕事の一つが、「プロダクトロードマップの作成」だと思います。誰の、どのような課題を、どういった解決策で、いつ解決することで、どのようなアウトカムを期待するのかという大枠のマイルストーンとなり、そのために必要な人員の確保や新しい技術の導入などを、経営陣を含めてディスカッションするための土台となります。
私自身、Chatworkのプロダクトマネージャーに就任して最初に行ったことは、プロダクトロードマップの作成でした。その後、社員数もユーザー数も大幅に増え、会社の規模や事業ステージが変わっていく中で、プロダクトロードマップの作成方法も変化させていきました。今回は大きく3つの異なる作成方法をご紹介します。
サービスリリース初期のロードマップ
初期の製品を市場にサービスインして、創業者や社員の周囲のコミュニティから徐々にユーザーが増えていき、一定の収益化が見え始めた時期では、社長や上層部のメンバーが、最も顧客にもプロダクトにも詳しく、かつ強い意志を持っていることが多いと思います。社内における新サービスとしてリリースする場合は、担当のプロダクトマネージャーや事業責任者がそれにあたるかもしれません。
どちらの場合においても、関係者がそこまで多くないため、社内やチーム内での情報共有は比較的行いやすく、特に意識しなくても普段の会話などから、他の社員も共通した顧客イメージと課題認識をしている状態だと考えられます。
この時期のロードマップの作成は、意思決定者による「スコアリング方式」で、機能開発の優先度を決めていました。これは、CEOやCTO、プロダクトマネージャー、デザインマネージャー、セールスマネージャーなど、各領域の意思決定権を持ったリーダーが3~5名ほどで集まって、開発優先度を評価する方式で、プロダクトマネージャーはその場のモデレーションを行いながら、ビジネスやデザイン、経営などそれぞれの観点でのWhyを引き出すように務める必要があります。
実際の流れ:
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参加メンバーの選定
- ビジネス・技術・ユーザーの3つの観点が補えるように選定
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機能アイデアリストの作成
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ユーザー要望と各メンバーの観点で開発すべきだと思う機能をリスト化
- 役員:ビジョンや経営目標を見据えて将来的に必要になる機能を考える
- セールスやマーケ: 既存の製品と潜在顧客のニーズを捉えて、未来の顧客獲得に向け提供すべき機能を考える
- サポートやデザイナー:既存の製品における顧客課題を捉えて、解決しないと解約につながりうる課題から優先すべき機能を考える
- 開発:各アイデアの実現性と開発難易度を捉えて、開発観点で優先すべき機能を考える
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ユーザー要望と各メンバーの観点で開発すべきだと思う機能をリスト化
- 機能アイデアリストに対して、各意思決定者が10段階で重要度を評価
- 人によって優先度の差異が大きいもののすり合わせを行う
- 最終的なスコアを入力し、スコアの高いものの中からロードマップに乗せるものを検討
この方式では、意思決定者が参加することで、短時間で大枠のロードマップにまで落とし込むことができます。優先順位に基づいて、最終的に何をロードマップとして実行すべきかの判断はプロダクトマネージャーが行う必要がありますが、社長や上層部が参加している場合は、その場で基本合意を得られるメリットがあります。
一方で、デメリットとして、定期的に開催してアイデアリストをアップデートしていかないと、実際のニーズや課題と、開発優先度の間にギャップが生まれてしまう可能性があります。手法として時間がかからないため、定期的に開催をすることが望ましいです。また、基本的にトップダウンで決める手法のため、他の社員が良いアイデアを持っていたとしても、回収できない可能性があります。社員が改善提案できるような仕組みとセットで行えると良いかもしれません。