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成長するスタートアップのPMが語る、BtoBプロダクトでの実践――「Product Management Night Tokyo」

「Product Management Night Tokyo」レポート前編

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2020/12/02 11:00

 9月9日、freeeはプロダクトマネジメントにフォーカスしたイベント「Product Management Night Tokyo hosted by freee」をオンラインで開催した。プロダクトマネジメントの国際的なカンファレンス「Product Management Festival」の協賛を得たローカルイベントという位置づけだ。初回となる今回は、「BtoBのプロダクト」にフォーカスして6人のプロダクトマネジメント担当者が登場し、それぞれの経験や学びを語った。

目次

PMF(Product Management Festival)とは?

 PMFはスイスを本拠地とし、プロダクトマネジメントにフォーカスしたイベントや調査を行う会社。イベントはスイスとシンガポールで毎年開催されており、プロダクトマネジメントをテーマに最新トレンドなどさまざまなセッションが開かれる。

 Product Management Night Tokyoは、このイベントを知って日本で開くことにしたというfreeeのProduct Owner 宮田善孝氏の働きかけにより実現、東京ローカルイベントとして同社が運営した。開会にあたって宮田氏は「何か1つでも明日から役立つヒントがあるのではと思います」とコメントした。

 登場したのは、プレイドのプロダクトマネージャー棚橋寛文氏、freeeの宮田氏、ラクスルの執行役員CPO 水島壮太氏、SansanのCPO 大津裕史氏、スマートニュースのDirector of Product 小越崇広氏、MetrolyのCEO兼CPO ケン ワカマツ氏の6人。

 前編となる本記事では、棚橋氏(プレイド)、宮田氏(freee)、水島氏(ラクスル)のセッションをレポートする。

GTMは重要、PMは一人で抱え込まないーープレイド棚橋氏

 プレイドの棚橋氏は、自身の経験からSaaSの新規事業立ち上げのポイントを伝授した。同氏は、顧客体験プラットフォーム「KARTE」のアプリ版のPMである。

株式会社プレイド プロダクトマネージャー 棚橋寛文氏
株式会社プレイド プロダクトマネージャー 棚橋寛文氏

 まずSaaS立ち上げまでの流れとして、(1)マーケットを捉える→(2)プロダクトを作る→(3)PMF(プロダクトマーケットフィット)を図る→(4)GoToMarket(GTM)戦略を考える→(5)スケールのためにアクセルを踏む→(6)利用企業を増やしながら高速改善・顧客成功の実現、という6つのステップで進めていくことを確認した。

 ここで棚橋氏は「初期の段階で(2)と(3)に全力を注ぐ企業が多いが、実は(1)のマーケットを捉えると(4)GoToMarket(GTM)も重要」と述べ、事業立ち上げに自身が関わったアプリ版のKARTEでのGTM戦略の変遷を紹介した。

 アプリ版のKARTEは、Web版から3年後にリリース。当初はWeb版を利用している既存顧客を中心に利用が進んだが、2~3か月経過するとうまく進まなくなったという。

 理由は、アプリはWebと異なり作業が多く発生するため導入のハードルが高くなる点、マーケットの成熟度が違う点などだ。そこで、プレイドでは方針を変更し、アプリが事業の中心のスタートアップを狙うことにした。

 GTMの変更は成功、「まずはスタートアップに使ってもらいながらプロダクトの精度を上げて汎用的な仕組みやナレッジを蓄積。それを武器にスタートアップ以外の企業に向けたセールスやカスタマーサクセスチームに生かす活動につなげていった」という。

 このような経験から「GTMは超重要」と棚橋氏。そして以下の3つの教訓を挙げた。

  1. エントリーが重要。メリットが多いところを狙うべき
  2. つながりを考える。高速にアセットを溜め、それが活きる構造を作る
  3. マーケットの特徴(Webとアプリの違いなど)を捉える

 続いて棚橋氏は、新規事業においてプロダクトマネージャー(PM)が「やるべきこと・他の人に任せること・捨てること」について自身の考えを明らかにした。

 「新規事業はカオス。やるべきことはたくさんあるのに人は少ない。状況の変化も激しく優先順位もコロコロ変わる」という。ではプロダクトマネージャーはどこに注力すべきだろうか。棚橋氏はまず「やるべきこと」として以下の4つを挙げた。

  1. マーケット、顧客についての「解像度」を高く持ち、常にアップデートする
  2. 刺さる切り口とユースケースを見極め、そこをプロダクトと仕組みで強化する
  3. 方向づけと優先順位づけ
  4. チームづくり

 最も重要という(1)については、「顧客に会うことは重要。直接会話をしてコンテキストを含めて理解したり、質問して深掘りしたりをやり続ける」と棚橋氏。さらにセールスやカスタマーサクセスの領域にも踏み込んで刺さるポイントや課題をヒアリングすることもあるという。「『なんとなくいいな』という機能が3つあるより、(3つの機能のうち)2つは使えなくても1つはしっかり刺さっていれば、そこを突破口に道が開ける」とも述べた。

 他人に任せることとしては、以下の3つを挙げた。

  1. 解き方を考える
  2. 開発チームのビルディング
  3. 「やった方がいいこと」のうち、他の人でもできる、または他の人の方がうまくできること

 「プロダクトでどう課題を解くかは、エンジニアやデザイナーが主体的に考えた方がスピードも出るしいいものになる。自分は事業とプロダクトのひもづけのところを全力でやる」と話す棚橋氏。一方、「一番やってはいけないことは、PMが一人で全部抱えてスピードを落とすこと」と指摘した。

 最後に、一見有効そうで取り組みがちだが、やらなくてよいと判断している「捨てること」について述べた。以下の4点だ。

  1. 細かな数字を見る
  2. 局所的な改善
  3. 売り上げ目標などのKPI
  4. The Modelの思考

 (1)について棚橋氏は「少ないユーザーの細かい数字はミスリードになる。直接話して定性的なフィードバックを得る方が価値がある」と指摘。(3)についてはPMFやGTMを優先し、持つべきタイミングでKPIを設定するのがよいと説明した。

 最後に、「新規事業立ち上げ時はPMFとGTMの確認が最優先。プロダクトマネージャーの立場にある人は誰よりもマーケットと顧客について理解する必要がある。同時に、人にどんどん任せることも大切。細かなことにとらわれず、大きく思考して大きく動かすことが重要」と棚橋氏はアドバイスした。


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著者プロフィール

  • 末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

    フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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