PMMがエンジニアの新たなキャリアパスとしてオススメな理由
村上氏はPMMとして働く中で、自身がエンジニアとして培ったスキルが活かされたと感じた場面に遭遇した。グレープシティは国内外に拠点を有しており、各拠点にマーケティング部がある。マーケティング部の基本構成は、コンテンツ作成、広報・宣伝、サイトデザイン、アナリティクス・SEOだというが、PMMがいる拠点といない拠点があるという。「拠点ごとの戦略に基づく話なので、PMMがいたほうがいいとは一概に言えないが、PMMがいない拠点ではコンテンツ作成で非常に苦労しているという話を聞いた」。
例えばブログ記事を作成する場合。「製品の概要・セットアップ方法(環境構築を含む)・機能の使い方・実装方法(サンプルコードを含む)・応用例」を書いていくが、PMMがいない場合、以下の図のような流れで作成していくという。
マーケティング部だけでは完結できず、随所にPMや開発部が絡んでいることが分かる。マーケティング部の中にはコードが書けるレベルの人がいないためだ。マーケティング部で記事公開のスケジュールを引いても、PMや開発部のスケジュールに大きく左右されるため、なかなか思うように進まないという問題も生じる。
だからと言って、PMMを新たに立てるのは容易なことではない。マーケター出身のPMMでは上記の課題を解消できず、マーケターが実用レベルのエンジニアリングスキルを身につけるのは学習コストが高すぎる。「われわれの製品がライブラリなこともあるが、SaaSやPaaS、Web APIといった高度なソフトウェアを取り扱っている企業では、同様のことが起こり得るのではないか。私のようなエンジニアのバックグラウンドを持ったPMMがいると、マーケティング活動が非常にスムーズに進められるようになる」と村上氏はその有用性を説いた。
エンジニア出身のPMMがマーケティング活動において果たせる役割が大きいことは分かったとしても、そもそも何を語ればいいのか分からないという人もいるだろう。そんなときにはサポート経由で入ってきたお客さまの質問がヒントになるという。例えば「○○の機能が動きません。△△といったシチュエーションで使いたいのですが?」と質問がきた場合、エンジニアであれば「その状況であれば、こっちの機能のほうが適している」といった回答が自然と思い浮かんでくるのではないだろうか。それをコンテンツにして語れば良い。「マーケティングだからと言って、何も身構える必要はない」と強調しつつ、「エンジニアの新たなキャリアパスとしてPMMを検討してほしい」と村上氏は語り、セッションを締めた。