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ProductZine Day 2024 Summer

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生成AI領域のプロダクト作り──どのように市場を選び、新たなプロダクトを作るべきか?

生成AIネイティブなプロダクトのUX設計──生成AI領域のプロダクト作り

生成AI領域のプロダクト作り──どのように市場を選び、新たなプロダクトを作るべきか? 第3回


 近年、生成AI技術は目覚ましい進化を遂げ、その活用範囲は急速に拡大している。こうした中、私たち株式会社Algomaticでは、生成AIを活用した複数のサービスを開発している。その過程で痛感するのは、生成AI技術の真の実用性を引き出すには、AIモデル自体の性能向上と同様に、生成AIネイティブなプロダクトのUX設計が不可欠だということだ。

生成AIサービスにおけるUXの課題

 現状、一部の生成AIサービスに対し「使いづらい」「実用性に欠ける」といった声も聞く。その根底には、1つ、UXの未成熟さという問題が存在する。極端な例えではあるが、それは時として「超優秀な部下とトランシーバーだけでやり取りしながら仕事をする」ような状況に類似している。いくら部下が優秀でも、情報共有やコミュニケーションの手段が限られていては、その能力を存分に発揮することは困難である。一部の生成AIサービスも同様の課題を抱えている。例えば、チャットという限定的なインターフェースでは、生成AI技術の能力を十分に引き出せていない場合もあるのだ。

 生成AIは、従来のITプロダクト開発で活用されてきたツールとは異なる特性を持っていると考えられる。特に、「人間的な知的能力を有するような挙動が可能である」という点は、生成AIの大きな特徴の一つだろう。もちろん、これはあくまで筆者の見解であり、生成AIを従来の技術とこのように明確に区別することが常に適切だと主張するつもりはない。しかし、従来のITプロダクト開発の常識にとらわれることなく、生成AIのこのような特性に着目することで、人間同士がコミュニケーションしたり協働したりする様子のアナロジーから学び、AIならではの強みを活かした新たなUXの設計手法を見いだせる可能性がある。

生成AIネイティブなUX設計の5つの観点(1/3)

 では、生成AIの力を最大限に活用するには、プロダクトのUXをどのように設計すべきか。私たちは日々の議論と実践を通じ、以下の5つの観点を重視するようになった。

1.AIをオンボーディングする

 人間同士の協働では、タスクを効果的に遂行するためには、新規メンバーに必要な情報を共有する「オンボーディング」が不可欠だ。例えば、プロジェクトの目的、各メンバーの役割、期限、リソースなどの情報を共有し、全員が同じコンテキストを持ち作業を進めることが求められる。これと同様に、AIとの協働でも、タスク遂行に必要な情報をAIに適切に与える仕組みが重要となる。

 例えば、AIと共同でプログラミングを行うようなプロダクトでは、ソースコードやドキュメントをAIと共有し、AIがコンテキストを理解した上でタスクに取り組める環境を整えたい。そうすることで、より質の高いアウトプットを得ることが可能になるのだ。このような情報共有が自然になされるUXを設計することが、生成AIサービスの実用性向上に貢献する。

 具体例として、AIを活用したコードエディターであるCursorでは、エディタがソースコードのフォルダにアクセスできる状態にすることで、自然と必要な情報がAIにシェアされる。さらに、追加でドキュメントを読ませることで、コードベースについてより精度の高い理解を得られるような機能を設けている。

ドキュメントを与える例
ドキュメントを与える例

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生成AIネイティブなUX設計の5つの観点(2/3)

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この記事の著者

大野 峻典(株式会社Algomatic)(オオノ シュンスケ)

東京大学工学部卒。東京大学にて深層学習を用いた研究プロジェクトに従事。Indeedにて新規事業のソフトウェア開発・プロダクトマネジメント、機械学習基盤の開発を行う。2018年、機械学習・深層学習を用いたソリューション開発を行う株式会社Algoageを創業。2020年、DMMグループへM&Aによりジョ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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