データを意思決定に活かして、より良いプロダクト作りを
世界で8000社以上が導入しているデータ分析ツール「Mixpanel」。「世界がデータから学ぶことを支援する」をミッションとして2009年にサンフランシスコで2人の学生が生み出した。SQLを書かずとも、実際にプロダクト内で“誰がどんな行動をしているのか”といったデータを、プロダクトに関わるあらゆるメンバー(プロダクト開発チーム・マーケティングチーム・営業チームetc.)が同じダッシュボードを見ながら、数字をもとに議論する環境を構築できる。
Mixpanelのようなプロダクト分析ツールを導入していない場合、プロダクトマネージャーはどのように機能開発の優先順位を決めているのだろうか。ユーザーの要望に応じて、スコアリングしてみたものの、結局、上層部から降ってきたものから対応せざるを得なくなったり。さまざまな部門からいろいろな要望が入ってきて、社内政治に振り回されながら、次から次へと受け身で対応するのに必死だったり。「限られたリソースのなかでより良いプロダクトを作りたい」と思っていても、なかなかそうシンプルには優先順位を決められず、意思決定のために多くの工数を割いている現状があるのではないだろうか。
「優先順位を決めるためのヒントは、データにある。何かしらのデータ分析をしていたとしても、そこから次のアクションの優先順位を決められるほどの精度で可視化できている企業は少ないのではないか」と指摘した松本氏は、Mixpanelで何ができるのかを示すために、実際のダッシュボードを見せながらデモに入っていった。
6つのシーンで見るデータの活かし方
今回、松本氏が例に挙げたのは、SlackのようなBtoB向けのチャットツールを提供している企業である。チャットツールのプロダクトマネージャーであるあなたが、次の6つのシーンに遭遇したときをイメージしながら読み進めていただきたい。
シーン1:注力するプラットフォーム(例:ブラウザの優先度を決めるには?)
ブラウザ別にユーザーがどんな行動をとっているのかを見てみる。KPIの達成に寄与する行動を多くとっているユーザーがいるブラウザを優先すべきだろう。
シーン2:チュートリアルを離脱したユーザーは誰なのか?
アカウント作成から始まるチュートリアルを完了して、チャットを送るまでのファネルを用意していたとする。しかし、チュートリアルを完了せずに離脱してしまったユーザーがいた。Mixpanelの中では、その離脱したユーザーが誰なのかを特定できるため、カスタマーサクセスチームがフォローしてもいいだろう。あるいは、チュートリアルで離脱したユーザーを集めて、ユーザーインタビューをしてみるのもいいかもしれない。
シーン3:効果の高いマーケティングキャンペーンは?
アクセス解析でも「どのキャンペーンから入ってきたか」までは分かるが、プロダクト分析ツールを使うと、さらに「どのキャンペーンから入ってきたユーザーが、どのボタンを押してプロダクト内に入り、その後どんな行動を重ねてコンバージョンに至ったのか」まで細かく知ることができる。理想的なジャーニーをたどるユーザーが多いキャンペーンの投資を増やしたり、そのキャンペーンで使用していたメッセージを他のキャンペーンに転用したりすることで、ROIが高まるだろう。
シーン4:ボトルネックを探したい
プロダクトの改善に向けて、ユーザーの行動を阻害している「ボトルネックはどこなのか」を知りたいとき。特にBtoBの場合、本当のエンドユーザーに直接ユーザーインタビューを行うのは、なかなか難しいことが多い。実際にユーザーがアプリを開いた後、どんなパスを踏んでいるのか。そのパスは自分たちが想定するものと合致しているのか。合致していないのなら、どこで道を外れて迷い込んでいるのか。そうしたデータを分析して改善すれば、ユーザーの利便性を高めることができる。
シーン5:有償プランを契約してもらいたい
有償プランへの切り替えを促進したいなら、実際に有償プランを購入したユーザーがたどってきたパスをさかのぼってみるのが一番だ。顧客となったユーザーにインタビューをしても、きっとどんなパスをたどったのかまで、正確に思い出してもらうのは困難だからである。プロダクト分析ツールを使えば、ユーザーの無意識で行ったことまで正しく可視化できる。
シーン6:機能追加をした結果の、ユーザーへのインパクトを測る
例えば新しく「メンバーを招待する」機能を追加したとしよう。売上増加が果たしてマーケティングでなく本当にその機能の影響だったのか、立証するのは難しい。そんなときは「インパクトレポート」というMixpanelの機能を使えば、新機能追加によるインパクトの有無や大きさを確認することができる。
「時間をかけて機能追加してもらったものを『これは失敗だったね』とは言いづらいと思うが、客観的なデータを介在することで、プロダクトマネージャーとしての会話がしやすくなると思う。成功したならもう一度繰り返せばいいし、失敗したならやめればいい。『実際のユーザー行動』と『自分たちが届けたいユーザー価値』をうまく連携しながら可視化することで、プロダクト開発が進めやすくなる」(松本氏)
SansanにおけるMixpanelの活用法とは
次に、MixpanelのユーザーであるSansanの乙幡氏が登場し、ユースケースを紹介した。Sansanではプロダクト改善に、頻繁にデータを活用している。乙幡氏が紹介した2つの事例をそれぞれ見ていこう。
事例1:プロダクト改善箇所の分析と重要度の理解
Sansanのモバイルアプリでは、ニュース情報がプッシュ通知で配信される。その通知をタップするとSansanが立ち上がり、ニュースのフィード画面に遷移する仕様になっていた。しかし、ニュースの通知をタップしてSansanのフィード画面に遷移しても、該当のニュース記事が見つからない、というフィードバックが1件だけ届いていた。
フィードバックはわずか1件だったが、乙幡氏自身がこの事象に遭遇した経験を持っていたことから、改善したほうが良いのではないかと考えた。だが、それでもたった2件である。バイアスがかかっている可能性を懸念した乙幡氏は、ほんとうにそれがユーザーの課題になっているのかをMixpanelの「ファネル機能」を使って確認することにした。
結果、プッシュ通知をタップしたユーザーのうち過半数がニュース記事にたどり着けていないことが判明。課題の重要度を把握するとともに、改善策が必要であると確信した。他にも、機能リクエストがあった場合の影響度が低いケースを見極める、など優先順位決めにも活用している。
事例2:カスタマーリテンションのための、メール配信対象ユーザーの抽出
エンドユーザーの満足度やスティッキネスは重要なものの、B2Bのサービスでは本当のユーザーの声を聞く機会がB2Cよりも更に限られる。Sansanは営業DXサービスのため、主なユーザーは営業部門の人だ。しかしSansanを導入するのは人事部や総務部、情報システム部などのケースも多い。そうした場合には、Sansanのカスタマーサクセス部が、主なユーザーである営業部門の人と直接会話して、より有効な活用方法を提案できる機会は限られている。
そのためSansanのカスタマーサクセス部では、利活用の促進を目的として、既存顧客向けのセミナーを実施している。そのセミナーへ誘致するために、Mixpanelのイベントログ(直近1か月以内にログインしたユーザー、特定の機能を利用したユーザーなど)を活用したメール配信を行っている。
セミナーの中に、Mixpanelで抽出した営業部門や営業企画部門のマネージャーのような参加者がいた場合、Sansanのカスタマーサクセス部からアプローチをすることで、活用状況や困りごとのヒアリング、リテンションや貴重な提案機会の創出につなげているのだ。
上記2つの事例を受け、「プロダクトチームが他部署と協働する際に、データを活用することはあるか」と尋ねた松本氏。これに対し、乙幡氏は「私が所属する部署と他部署の間で意思決定をする際には、データをかなり活用している。根拠のない議論をしても最終的な着地に至らないので、定量情報は欠かせないものだ」と答えた。
最後に、「MixpanelはBtoB、BtoCを問わず、さまざまなお客様にご利用いただいている。プロダクト内におけるエンドユーザーの行動を分析するのは、全ユーザーにインタビューするのと同等かそれ以上の価値がある。顧客の感じているプロダクトの価値を『データから』理解して施策を打つことで、プロダクト開発の効率と勝率を高めていける」と松本氏は語り、講演を締めくくった。
ユーザー行動をもっと深く知り、プロダクトグロースに活かしたい方へ
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