SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

プロダクトづくりが捗るエキスパートから学ぶFigma/FigJam実践活用術

組織に浸透する「生きる」デザインシステムを創るための戦略──アフラックUXチームの取り組み

プロダクトづくりが捗るエキスパートから学ぶFigma/FigJam実践活用術 第8回

 近年、プロダクトは、機能だけでなく「体験」においても評価されるようになってきた。金融・保険などの競争が激しい業界において、UI/UXはもはや「差別化の手段」ではない。プロダクトの設計段階から体験設計を緻密に組み込んでいくことが、事業の成否を左右する重要な鍵となっている。今回は、2025年1月にFigmaが開催した金融業界向けミートアップの第2弾として、アフラック生命保険株式会社(以下、アフラック)のプリンシパル・エクスペリエンスデザイナーの服部雄さんと、シニア・エクスペリエンスデザイナーの正源司智博さんによるセッションを紹介したい。「『生きる』デザインシステムを創る」と題して、アフラックUXチームの取り組みについて語っていただいた。

アフラックデザインシステムとは

 アフラックではFigmaを活用したデザインシステムを構築したことで、デザインの標準化が加速し、社内外の連携が強化されたという。同社のデザインシステムプロジェクトの特徴は、デザインシステムを作って終わりではなく、その「浸透」までを視野に入れて取り組んでいる点にある。

 本記事では、アフラックがデザインシステムを構築するに至った背景や具体的なプロセス、またデザインシステムを「浸透」させるノウハウを紹介し、金融機関がデザインシステムを導入する際のヒントを探る。

アフラックがデザインシステムを構築した理由

 アフラックは自社のデザインシステムを、ルールブックである「UI/UXガイドライン」と素材集である「UIライブラリ」、それらをどのように使用するかを記した「業務ガイドブック」の3つによって構成している。さらに、社員による活用を後押しするため、詳細な手順をまとめた「活用プロセス資料」も用意した。

 ではなぜ、生命保険会社であるアフラックはデザインシステムを構築したのだろうか。

 1つは社内外の関係者に一貫したUXを提供することにある。生命保険会社にとって代理店をはじめとしたパートナー企業は、ときに会社の「顔」になる大切な存在だ。アフラックに関わるすべての企業・代理店とデザイン方針を共有することで、アフラックに関わるすべてのタッチポイントにおいて、お客様に快適なUXの提供が可能になる。

 また、アフラックは自社だけでなく、保険業界全体のUX向上によって、保険に関心を寄せられるすべてのお客様にストレスのない保険体験を提供したいと考えている。生命保険を検討する際には、複数の保険商品を比較検討するのが一般的だ。だからこそ、同社は自社のデザインシステムの取り組みを他社にも積極的に共有し、業界全体のUI/UXに対する意識の向上を図っている。

 こうした状況のもと、アフラックは2024年5月にデザインシステムを社内リリース。同年8月には「UIライブラリ」の一部をFigmaコミュニティで一般公開した。

 プリンシパル・エクスペリエンスデザイナーの服部さんはその意義を以下のように語る。

 「われわれが先んじてデザインシステムを公開することで、保険業界全体のUXが向上するきっかけになればという想いで公開させていただきました」

 なお、保険業界ではデザインシステムの一般公開の前例がないため、社内の理解が得にくい面もあったのではないかという問いに対して、「最初にやれば先進的な取り組みとして注目される。その上、アフラックの中期経営戦略にある『感動的なお客様体験を提供する』ことに真摯に取り組んでいるというアピールにもなり、ブランド力の向上にもつながる」と説得したそうだ。

デザインシステム構築におけるハードルとは

 とはいえ、新たなデザインルールの導入は容易ではない。服部さんは、デザインシステムを作るときの悩みどころの一つとして「既存デザインとのギャップ」を挙げる。

 デザインシステムを導入する際、デザインとしての最善を追求したいところだが、既存のデザインとのギャップが大き過ぎると、サイトの改修作業に過大な負荷がかかる。そうなると、社内においても受け入れられない、使ってもらえないものになってしまう。

 「結局、デザインシステムというのはそれを適⽤することに意味がある。作って誰も使わなかったのでは意味がない。『生きる』デザインシステムをつくるには、適⽤フェーズのことを考慮しておくことが重要です」(服部さん)

要素を限りなくそぎ落としたアフラックのデザインパーツが格納された「UIライブラリ」
要素を限りなくそぎ落としたアフラックのデザインパーツが格納された「UIライブラリ」

 そこでアフラックでは適用フェーズを考慮し、色や形状のパターンを徹底的にシンプルにしたデザインシステムを構築した。そうすることで、社外の協力会社に委託する際にも、作業者が悩まず高い再現性を実現できる。

 「『色はこれだけ、ボタンはこれだけ』と限定すれば迷いようがなく、誰がデザインしてもデザインの統一が図れます。バリエーションを増やしたほうがリッチなデザインになるケースもありますが、適用のしやすさを優先し、みんなが簡単に使えるデザインシステムというものを目指しました」(服部さん)

次のページ
「生きる」デザインシステムの適用範囲

この記事は参考になりましたか?

プロダクトづくりが捗るエキスパートから学ぶFigma/FigJam実践活用術連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷 拓樹(Figma Japan株式会社)(タニ ヒロキ)

Figma Japan株式会社デザイナーアドボケート。中小企業向けのSaaS、フリーランスでの受託、起業やスタートアップでの開発チーム立ち上げを経験。Webのフロントエンド開発や、UI・UX設計をおこなう。現在はFigmaのマーケティングやリソースの設計・開発に取り組んでいる。またデザインシステムに...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

ProductZine(プロダクトジン)
https://productzine.jp/article/detail/3418 2025/04/30 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング