LT3:「高成長期から成熟期の優先度の決め方」
- 発表者:稲垣剛之氏(株式会社ラクス プロダクトマネージャー)
続いて登壇したのは、「楽楽精算」などのSaaSプロダクトを手がけるラクスの稲垣剛之氏です。事業フェーズが成長期から成熟期に移行する中で、どのように優先度判断の軸をシフトしてきたのかを具体的に紹介しました。
「維持管理」「財務効果」だけでは測れない価値がある
プロダクトの市場浸透率が60%を超えるなか、ラクスでは依然として年4回のウォーターフォール型リリースを実施しています。限られたリリース回数の中で「どの施策を入れるか」の選定は極めて重要です。
ラクスではこれまで、施策の優先順位づけにおいて「維持管理(例:法令対応)」と「財務効果(例:売上増・解約抑止)」の2軸が主軸とされてきました。しかし、財務効果に影響がないVOCの優先度が下がったり、数値での裏付けが難しい領域(AIやUX改善など)への挑戦が困難になったりするなどの課題感があったとのことです。
その課題感から、「ユーザー価値」という新たな観点を優先度評価に加える方針へと移行しました。

数字に表れない価値にどう向き合うか
このジレンマを乗り越えるため、稲垣氏らが導入を始めたのが「ノーススターメトリクス(NSM)」です。ユーザー体験や中長期的価値に直結する指標を設け、まずはAI関連施策から試験導入をスタートしました。

総括
稲垣氏の発表は、プロダクトの「健全な成長」を持続するための意思決定に焦点を当てたものでした。事業インパクトだけでなく、顧客体験やプロダクトの未来に対する長期的な視点が、これからのプロダクトマネージャーには不可欠であるというメッセージが印象的でした。