1.はじめに:AI時代に問われるプロダクトマネージャーという役割
ChatGPTをはじめとする生成AIの普及は、ビジネスにおける意思決定の在り方を大きく変え、同時にプロダクトづくりにおける「顧客理解・要件定義・プロトタイプ検証」を大幅に高速化できるようになりました。
こうした中で、プロダクトマネージャーの存在意義は改めて問われています。AIの浸透により、プロセス運営の一部は効率化の対象になりました。だからこそ「何を作るか」を見極めるディスカバリーが競争優位の源泉になります。
ラクスは、プロダクトマネージャーが「AIを前提に価値を定義する側」へと進化することを重視しています。AIの能力を前提化したうえで、人間にしかできない「顧客理解」と「意思決定」の質を磨き上げる──この姿勢こそが、AI時代におけるプロダクトマネージャーの本質的な使命だと考えています。
2.企業ごとに異なるプロダクトマネージャー像とラクスの定義

プロダクトマネージャーの役割は企業文化や組織構造、事業フェーズによって大きく揺れます。
ラクスもかつて、プロダクトマネージャーの役割が明確でない時期がありました。そこで私たちは、「我々は何者か」を明文化しました。
ラクスにおけるプロダクトマネージャーは、「強い意思決定」と「巻き込み力」をもって組織を前進させる存在です。単なる進行管理役ではなく、「価値を定義し、方向を決め、組織を前進させる存在」として、プロダクトの命運を担います。
プロダクトマネージャーは「お客さま」「ビジネス」「開発」の三者をつなぐ中心に立ちます。
顧客体験(UX)・事業利益・技術的実現可能性という3つの要素をバランスさせながら、カスタマーサクセスに直結する「売れる製品=利用され続ける」を実現する役割を果たします。あくまでビジネスなので、お客さまにお金を払ってでも利用し続けたい価値を提供できるかが重要です。
この明確な定義を打ち出したことで、ラクスでのプロダクトマネージャーの採用活動は大きく前進して、結果、同じ方向を見据えた多くの仲間を迎え入れることができ、約4年で2名から12名となりました。
3.AIが変えるプロダクトマネージャーの常識
AIの進化は、プロダクト開発の前提を根本から変えつつあります。ラクスではこの変化を次の3点で捉えています。
AIの標準装備化と価値モデルの再定義
もはやAIは「付加価値」ではなく「標準装備」です。SaaSプロダクトにおいてもAIを搭載することは当たり前になり、価値モデルの見直しが迫られています。
職種間のボーダーレス化
AIが要件定義やリサーチ、分析を支援することで、プロダクトマネージャー・エンジニア・デザイナーの境界が薄れ、より横断的な連携が求められています。ただし、境界が曖昧になるからこそ、各役割の定義を明確にすることで、それぞれの専門性がより輝くようになります。
ワークフロー変革の重要性
AI活用の本質は単なるツールの導入ではなく、生産性向上のためのプロセス全体の再設計にあります。
こうした中で、プロダクトマネージャーの役割も進化を求められています。
AIが実行フェーズ(デリバリー)を効率化する一方で、「何を作るべきか」を定義する課題探索(ディスカバリー)こそが、競争優位の源泉となるのです。
プロダクトマネージャーは、AIが示す最適解を鵜呑みにするのではなく、顧客の「まだ言語化されていない課題」を発見し、仮説を立て、検証する力を磨かなければなりません。プロダクトマネジメントの中心は、「要件定義」ではなく「体験の再設計」に移りつつあります。
