なぜスキルの延長線上に、シニアPMはいないのか
シニアPMを定義する際に、特に重要だと考えているのは、この役割が「現場でプロダクトを作るためのスキル」の延長線上にはないという点です。

例えば、エンジニアリングスキル、UXリサーチや定量分析のスキル、営業・マーケティング理解や、ステークホルダー調整力などは、いずれもプロダクトマネージャーにとって非常に重要です。ジュニア〜ミドルのフェーズでは、こうした個別スキルを磨くことがそのまま成果や成長に直結し、いわゆる「スキル成長モデル」がきちんと機能します。
一方で、ミドルPMの仕事の中にも意思決定は数多く存在します。ただ、その多くは「選択肢がある程度見えている判断」や「後から正解が検証できる判断」であることが少なくありません。
例えば、ユーザー調査とデータから主要なボトルネックが見え、施策の候補も複数あり、あとは優先順位を付けて実装していく。こういう局面は、もちろん難しいのですが、頑張れば「答えに近づく」構造になっています。よい意思決定を支える材料が揃っているからです。
しかし、シニアPMが向き合う意思決定には、次のような性質のものが増えていきます。
- 正解が存在しない
- 周囲の納得をその時点では得られない
- 正しさを証明することもできない
さらに厄介なのは、その判断が「選んだ瞬間」では終わらないことです。選んだ後に、組織・ロードマップ・採用・予算・他部門との関係……さまざまなものが連鎖し、実行の過程で前提が崩れ、作り直しが発生します。つまり「決める」以上に「決め続ける」必要があるのです。
この性質の違いが、ミドルPMとシニアPMの間に存在する「キャズム」なのではないか。私はそう考えています。スキルを積み上げても「次に行けない感覚」が生まれるのは、努力が足りないからというより、戦っている問いが変わっているからかもしれません。
シニアPMが持つべき2つの視点
では、DIGGLEで定義するシニアPMには、どのような視点が求められるのでしょうか。私は、大きく2つあると考えています。

視点①:組織を理解し、動かす
- 組織構造・役割・期待値を理解する
- 市場フェーズと組織の相性を見る
- 「正しさ」よりも「今やるべきか」を判断する
- 人に動いてもらうことを前提に考える
ここでのポイントは、組織論を語ることではなく、「組織として実際に動ける状態」をどう作るかです。よい戦略があっても、実行のための組織設計が伴わないと、何も前に進みません。
視点②:事業計画を理解し、戦略を立てる
- 事業計画を「数字の羅列」で終わらせない
- 数字の裏にある賭け方を読み取る
- 不確実性を前提に、戦略を描く
事業計画は、達成すべき数字の表でもありますが、それ以上に「限られたリソースをどの領域に賭けるのか」という意思の集合です。この視点がないと、プロダクトの判断が“局所最適の積み上げ”になりやすくなります。
これら2つの視点は、それ自体が答えを与えてくれるものではありません。ただ、正解のない選択に向き合い続けるための土台になると考えています。
まとめ
ここまで、DIGGLEにおけるシニアPMの定義と、ミドルPMとの違いについて整理してきました。現時点で私が思うのは、シニアPMとミドルPMの差は、スキルの量や経験年数では測れない、ということです。
むしろその差は、
- どのような問いを引き受けているか
- その問いに、どこまで向き合い続けているか
といった点に現れるのかもしれません。
次回は、このキャズムを越えるために、実際の現場ではどのような視点や行動が求められるのかを、DIGGLEでの具体的な事例も交えながら掘り下げていきます。
