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デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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イベントレポート

コードはもう“ボトルネック”ではない──アトラシアンが説く、AI時代の判断とコンテキスト戦略

「Team on Tour Tokyo 2026」レポート(前編)


 6月16日、アトラシアンが東京で「Team on Tour Tokyo 2026」を開催した。先月米国で開かれた年次イベント「Team '26」の流れをくむ国内向けイベントで、基調講演には同社マーケティング統括マネージャーの朝岡絵里子氏と、エンタープライズ製品部門を率いるRae Wang氏が登壇。繰り返し示されたのは「ビジネスの推進力=インテリジェンス×コンテキスト」という等式だった。インテリジェンスがエンジンなら、コンテキストは燃料。プロダクトマネージャーにとって、これは「何が組織の競争力を決めるのか」という問いに直結する。

モデルはコモディティ化した。勝敗を分けるのは「コンテキスト」

 いま世間は「どのAIモデルが優れているか」という話題で持ちきりだ。新しいモデルが出るたびにベンチマークが更新され、各社が乗り換えを検討する。しかしアトラシアンは、この議論そのものがすでに終わっていると断じる。モデルがもたらす知識や推論力はもはやコモディティで、誰もが同じモデルを使える以上、持続的な差別化要因にはならないという見立てだ。

 朝岡氏は同日午後に行われたメディア向け説明会で、より踏み込んで説明した。「新しいモデルが出ても、半年後には他社に追いつかれてしまいますし、モデル自体も短いサイクルで次々に手に入る。誰もが同じものを使えるようにコモディティ化しています」。これは自社の主張ではなく業界全体の前提だ、と同氏は付け加えた。

基調講演に登壇した、アトラシアン株式会社 マーケティング統括マネージャーの朝岡絵里子氏
基調講演に登壇した、アトラシアン株式会社 マーケティング統括マネージャーの朝岡絵里子氏

 では何が勝敗を分けるのか。答えは「コンテキスト」になる。過去の決断の背景、プロジェクトの経緯、組織独自のワークフロー。こうした組織の記憶こそ、他社が決して模倣できない唯一無二の資産になるというのが、アトラシアンの中心的な主張だ。

基調講演で示された「ビジネスの推進力=インテリジェンス×コンテキスト」のスライド
基調講演で示された「ビジネスの推進力=インテリジェンス×コンテキスト」のスライド

 この主張が現場でどれほど「腹落ち」したか。基調講演直後の「CxO座談会」で、モデレーターを務めたインプレスの田口潤氏が会場に三択を投げかけた場面が示唆的だった。「完全に理解できた」「大体分かったが少しモヤモヤが残る」「難しくてついていきにくい」。挙手を求めると、二番目の「モヤモヤが残る」に多くの手が挙がった。本稿では、その“モヤモヤ”を、メディア向け説明会で語られた具体で解きほぐしていきたい。

株式会社インプレス 編集主幹 IT Leadersプロデューサーの田口潤氏
株式会社インプレス 編集主幹 IT Leadersプロデューサーの田口潤氏

コンテキストの正体──“後から集めない”Teamwork Graph

 コンテキストとは技術的に言えばナレッジグラフのこと、と朝岡氏は噛み砕く。誰が何に取り組み、どんな経緯があり、何が優先順位で、誰と誰が一緒に働いているか。データ同士の関係性を明示的に定義し、知識を構造化する仕組みだ。アトラシアンはこれを「Teamwork Graph」と呼ぶ。プロジェクト、ドキュメント、コード、会話、人、目標がノードとしてつながり、その関係性がエッジとして保持される基盤になっている。

 ここでアトラシアンが強調するのが、ナレッジグラフの「作り方」の違いだ。朝岡氏によれば、他社の一般的なアプローチは「後から集める」もの。メールやチャット、議事録、ファイルといった、仕事の周辺で発生する記録を後から収集し、テキストの類似性から関係性を推論する。散らばった断片をかき集め、検索によって文脈を後付けで構築しようとする発想だ。

 対するアトラシアンのアプローチは逆を行く。「仕事をすること自体が構造を生む」という考え方だ。Jiraでチケットを進め、Confluence(同社のドキュメント・情報共有ツール)でページを書き、目標を更新する。ユーザーが普通に仕事をしているだけで、誰が何に取り組み、何と何が依存し合っているかがリアルタイムにグラフへ蓄積されていく。

Teamwork Graph(ナレッジグラフ)のイメージ。Jiraの「Work item(作業項目)」を起点に、さまざまな人やツールが関わっている様子が可視化されている
Teamwork Graph(ナレッジグラフ)のイメージ。Jiraの「Work item(作業項目)」を起点に、さまざまな人やツールが関わっている様子が可視化されている

 「グラフを構築するための追加作業はゼロで、仕事を進めれば進めるほど、構造化された関係性が複利的に積み上がっていきます」と朝岡氏は説明する。プロダクトマネージャーの視点で言い換えると、意思決定の背景がドキュメント化の手間なしに資産化されていく、ということになる。

 なぜここまでコンテキストにこだわるのか。エンタープライズでAIを使う際に本当に怖いのは、AIが誤った答えを出すこと自体ではない、と同氏は指摘する。事実としては正しくても、その組織にとっては間違っている回答を、エージェントがそのまま自律実行してしまうこと。これこそが最大のリスクだという。だからこそ、組織固有のコンテキストがAIの判断を正す手がかりとして欠かせなくなる。

 その効果は数字でも実証されている。アトラシアンは、まったく同じAIコーディングエージェント「Claude Code」を2つ用意し、同一のリポジトリに同一のプロンプト(新機能の実装計画を立てる指示)を与える実験を行った。違いはTeamwork Graphに接続したかどうかだけ。

 接続しなかった側は、目の前のコードをいきなり読みに行き、関連する別システムの存在に気づかず、実在しないデータ構造をでっち上げた“バグのような計画”を出力してしまう。一方、接続した側は、まず仕事の背景を確認し、Confluenceに書かれた設計方針を読み、関連システムを正しく発見したうえで計画を立てた。結果、回答品質は44%向上し、トークンコストは48%削減されたという。少ない取得回数で正解にたどり着くぶん、コストも自然に下がる。

Teamwork Graphの有無でAIの回答品質とトークンコストを比較した、アトラシアンの社内実験結果
Teamwork Graphの有無でAIの回答品質とトークンコストを比較した、アトラシアンの社内実験結果

 このTeamwork Graph(コンテキスト)と、AIゲートウェイ経由で最先端モデルを使い分けるインテリジェンスを掛け合わせ、その力をアプリ群全体に自然に溶け込ませて届ける存在が、同社のAI「Rovo(ロボ)」になる。

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プロダクト開発の重心が、“コード”から“判断”へ移る

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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