プロダクト開発の重心が、“コード”から“判断”へ移る
ここからがプロダクトマネージャーにとって本質的な論点になる。Rae Wang氏は、コードもTeamwork Graphの一部として意味的に分解・相互参照されるようになったと説明したうえで、開発プロセスそのものの見直しを促した。従来、ソフトウェア開発は「コードを書くこと」という単一のボトルネックを中心に組み立てられてきた。けれど、AIによってその制約が解けたとき、本当に重要になるのは別のものだという。
「コードがもはやブロッカーでなくなったなら、計画、判断、そして“正しいことを正しい方法で行っているか”を確認することこそが鍵になります」とWang氏は語る。これはまさに、プロダクトマネージャーやデザイナーが担ってきた領域だ。実行が安価になるほど、何を作るべきかを見極める上流の判断が、組織のボトルネックとして前面にせり出してくる。
この変化を製品として体現するのが、Jiraに組み込まれた「AI Planner」だ。デモでは、Jiraのボードから新機能の概要を入力するだけで、RovoがTeamwork Graphを横断してビジネス全体のコンテキストを集め、GitHubなどのリポジトリから既存コードベースを意味的に検索して取り込んでいった。
注目したいのは、AIが勝手に突き進まない点だ。例えばデータの保存方式について「データレイクかデータウェアハウスか」といった選択を、理由つきで人間に問い返す。要所で人が判断を下す「Human in the loop」(人間を意思決定プロセスに組み込む設計)が随所に埋め込まれている。
承認後、Rovoは変更に必要な作業項目を洗い出し、「この部分はClaude Codeに、この部分は人に、この部分はRovoの開発エージェントに」とタスクを振り分ける。コードを理解し、過去に誰がどの変更を行ったかを把握しているため、適切な担当へ割り当てられるという。
そして、これらのエージェントを束ねる器が「Agents in Jira」になる。画面の脇にチャットボットが居る形ではなく、Jira上のメンバーのようにエージェントをアサインし、タスクを自動でこなさせるイメージだ。同機能はすべてのJira顧客に提供が始まり、MCP経由でサードパーティのエージェントも接続できる。GitHub Copilotが数週間以内に標準対応し、Claude Code、Cursor、OpenAI Codexによるエージェントも続く予定だという。すでに顧客全体では、月間500万回ものエージェント呼び出しが実行されている。
エンジニアリングのスループットがここまで高まると、今度は「次に何を作るべきか」を決めるプロダクトマネージャーやデザイナーへのプレッシャーが、これまで以上に高まっていく。Wang氏自身がそう指摘した。その問いにアトラシアンがどう答えるのか。買収から生まれた新アプリ「Feedback」と新コレクション「Product Collection」、そして“壁の外”へコンテキストを開放する戦略については、後編で詳しく掘り下げる。
