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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

実践派ぶっちゃけ系プロダクトマネジメントのススメ

「言うは易し、行うは難し」のプロダクトマネジメント

実践派ぶっちゃけ系プロダクトマネジメントのススメ 第1回

 「プ譜(=プロジェクト譜)」という進行管理ツールで、「予定通り進まないプロジェクトを、思った以上の成果に変える」支援に取り組まれている後藤洋平さんに、ご自身の経験を交えながらプロダクトマネジメントにおける課題について全3回の短期連載で語っていただきます。第1回は、プロダクト開発における実体験と、そのふりかえりを紹介します。(編集部)

はじめに

 初めまして。「予定通り進まないプロジェクトを、思った以上の成果に変える」プロジェクト進行支援家の後藤洋平と申します。”何を・どこまで・どうやって実現するか”が未知である、新たな取り組みにおける共有ビジョンづくりの方法論である「プ譜(=プロジェクト譜)」という進行管理ツールの普及に取り組んでいます。

 プロジェクト進行支援という仕事柄、発展的に、プロダクトマネジメントにおいてもプ譜を適用する事例が増えています。そんなこともあって、この度、縁あってProductZineに寄稿させていただけることになりました。自分自身も現場で奮闘する人間として、現場感覚を主軸にしつつ、大局観や理論も見失わないようにして、有益な情報を提供できるように努めたいと思っています。お付き合いのほど、宜しくお願い申し上げます。

想定読者と連載のゴール

 本連載は、サブスクリプション型SaaSベンダーの経営者やCTO、あるいは現場指揮官であるセールスやカスタマーサクセス系の部門のマネージャの方々を読者として想定しています。全3回の短期連載形式で、プロダクトマネジメントという課題における要諦について整理をさせていただきたいと考えています。

 具体的には、プ譜という独自の方法論にたどり着く前と、その後、両方の取り組みについて紹介していくことで、最終的には、プロダクトマネジメントという活動において「どんな業務の形、どんな情報の流れのデザインが望ましいか」についての提言ができると良いなと思っています。

 というわけで、さっそく、第1回に入らせていただきます。題して、一見正しそうに見えて、実は悪手なオーソドックスアプローチ。間違わないようにすると、正解にたどり着けないという、プロダクトマネジメントの難しさについて語ってみたいと思います。

プロダクトマネジメントの目的は実にシンプル「開発優先順位を発見し、合意すること」

 まずは議論を始める前提を整理するために、プロダクトマネジメントが求められる背景について簡単に整理させていただきます。

 AWSが初めて公開された2006年から実に14年という時間が経過し、世はまさにSaaSの百花繚乱時代を迎えています。サブスクリプション型SaaSという提供形態は、従来のパッケージ型の製品と異なり、製品全体が完成する前段階でも提供開始でき、少ない初期費用と利用量に応じた月額課金によって資金の回収もでき、それをさらに製品の改良改善につなげられるという、ベンダー/ユーザーの双方にとって、実に都合のいい座組みを実現するものでした。

 しかし、一方でこの形態は、製品の開発と提供における、あらゆる課題を解決できるわけでなかったことが、昨今、分かってきています。

 問題は、実際にサービス提供を行って、対価を得ながら、製品を改良改善していくという根本的なモデルそのものに内在しているのでした。

 そもそも、従来型のパッケージ&オンプレミス型製品かサブスクリプション&SaaS型製品かによらず、この世に完全なプロダクトは存在しません。実際にそれが業務の現場で動き始めたとたん、さまざまな利害関係者から無限の要望要求が雨あられと降ってくる状態が訪れます。

 違いがあるとすれば、極端に言うと、旧来型の製品は「我慢して使う(そしていつの間にか慣れる)」という方法を選ばざるを得ず、逆に言えばそれで済んでもいたのでした。どうしてもカスタマイズしたい場合は、自社専用に構築した情報システムなので、資金とエンジニアさえ確保できればそれも可能でした。

 一方、SaaSは常に未来への可能性に開かれており、時間が経つと、もっと良くなるかもしれない。また、追加開発するにしても、標準的な全ユーザー共通の機能にするのか、個別企業向けのカスタマイズにするのか、またそれらについての課金はどのようにするのかなど、複雑に関連する問題が多く、永遠に増え続ける要望要求と付き合う難易度が、実は、こちらのほうが遥かに高い一面があります。

 営業的には「売るためにはこういう機能や仕様が必要だ」、マーケ的には「注目を集めるような斬新なコンセプトと美しい事例を」、顧客からはもちろん「もっと使いやすく、もっと便利に、もっと安価に」、経営者からは「機能も顧客満足も大事だが、利益も大事」etc.……。どれもこれも、一つひとつは至極まっとうな正しい意見なのですが、当たり前ながら、開発するためには時間も資金も必要であり、困ったことに、そうした資源は、有限なのです。

 こうした理由によって、実にシンプルな「開発優先順位を発見し、合意すること」というだけのことが、非常に難しいのが、SaaS製品特有の悩みとなっています。

 筆者自身は、人材サービス企業向けのマーケットシェアNo.1の基幹業務システムをSaaS提供する企業で、カスタマーサクセス組織を立ち上げ、導入・運用コンサルティングに奔走した経験があります。さほど大きな組織というわけでもなかったのですが、処理しなければならない情報は非常に多岐にわたり、さまざまな課題を感じながら仕事をしていました。

 その時にこれは問題だと思ったのが、顧客対応含めた全般的なオペレーションの効率悪化と、それに根ざした組織感情の悪化の問題でした。真面目で優秀な人達が、共通のゴールに向かって仕事をしているはずなのに、部門間の利害対立や不信感が企業全体の効率性を極めて下げていると感じ、どうにか解決できないかと思っていたのでした。

補足

 2016~7年ぐらいのこと、当時はプロダクトマネジメントという言葉は流行していなかったと思いますが、今から振り返ると、まさにあの当時、自分が所属していた組織はプロダクトマネジメントの不在に悩まされていたのだなと思っています。

次のページ
こうすれば良い! プロダクトマネジメント

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この記事の著者

後藤 洋平(ゴトウ ヨウヘイ)

「なぜ人と人は、考えたことを伝えあうのが難しいのだろうか」を生涯のテーマとしている、プロジェクト進行支援家。1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。想定外のトラブルが絶えない現場を前進させる方法論「プロジェクト工学」を考案し、2018年に『予定通り進まないプロジェクトの進...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/44 2020/07/14 11:00

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