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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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新規プロダクト開発における陥りやすい罠とその善後策

一度頓挫したプロダクトチームを復活させたメンバーのマインドと、信頼を取り戻し社内で応援されるに至るまで

新規プロダクト開発における陥りやすい罠とその善後策 第2回


 この連載では、Goodpatchの自社プロダクトを手がけるプロダクトチームが、開発現場で起こるあるあるの失敗談を対談形式でお話ししながら、新規プロダクト開発における陥りやすい罠とその善後策をお届けします。第2回は、信頼が失われた中でStrap開発をしていく苦悩や、チームの縮小によるリソース不足・前回の失敗経験を踏まえチームで取り組んだことについてをお届けします。(編集部)

残されたメンバーで共創組織を目指す

 2018年当時、Goodpatchが開発・運用する国産初のプロトタイピングツール「Prott」はグローバル対応と技術的負債を解消するため、フルリニューアルを計画していました。しかし、リリースされることなくリニューアルプロジェクトは終了を迎えます。その後、PO/CTOの離脱や大量離職、売上が上がらない重圧などの壁にぶつかります。苦しい状況でも諦めず、組織エンゲージメントスコアを48から80まで改善。新規事業として立ち上げたオンラインホワイトボードツール「Strap」は、大企業からベンチャーまで多様な企業が導入するまで成長し、2021年9月に1周年を迎えました。

 この連載では、開発現場で起こる、あるあるの失敗談を対談形式でお話ししながら、新規プロダクト開発における陥りやすい罠とその善後策をお届けします。現在のStrapプロダクトマネージャー大竹が聞き手となり、当時の様子や想いについて、エンジニアリングマネージャーの西山が語ります。

 第1回では、多国籍で優秀なメンバーがそろっていたにも関わらず、PO/CTOの離脱、メンバーの大量離職、化石化していくシステム現場など、過酷な状況に陥ってしまった過程とその失敗からコラボレーションの重要性に気づくまでをお届けしました。

 第2回の今回は、信頼が失われた中でStrap開発をしていく苦悩や、チームの縮小によるリソース不足・前回の失敗経験を踏まえチームで取り組んだことについてをお届けします。

追い詰められ選んだ道

大竹:Strap開発の経緯を改めて教えてください。

西山:詳しい経緯については代表の土屋がnoteにまとめているので、こちらもぜひ目を通してもらえればと思います。

 プロトタイピングツール市場の競争激化といった外部環境要因からProttのリニューアルプロジェクト(以下、Prott v2)が開発停止となってしまったことがStrap開発の発端です。Prottは長期的に運用していくにあたり技術的な負債がたまり運用上のメンテナンスが困難になっていたんです。

 ここでの選択肢は2つあり、一つは「上記の問題を抱えた上でProttの成長鈍化をなんとか食い止め継続して運用すること」、もう一つは「新しいプロダクトの開発を行うこと」のいずれかでした。

 Goodpatchの文化である「自分たちが使うものは自分たちで作っていく」を継承するのがProduct Divです。僕たちは、Prottの成長鈍化をなんとか食い止め継続して運用しながら、新しいプロダクトの開発も行うという選択肢を取りました。

今いるメンバーで職能を超える

大竹:この頃のチームの状況はどんなものだったのでしょうか?

西山:チームを縮小することになり、退職するメンバーや他部署に異動するメンバーもいました。その分、最後まで残ったメンバーからはとても強い結束力を感じていましたが、多くのメンバーが離脱していくのを目の当たりにしていたため、無念な気持ちや先の見えない不安も抱いていたのが正直なところです。

 チームの人数がおよそ半減していた状況だったので、限られたリソースで物事を進めていく必要がありました。以前よりも少ない人数でProttを運用しつつ新しいプロダクトも作るという2つの難問をクリアしなければなりませんでした。

大竹:一つずつでも難しいと思うのですが、それぞれどのように解決したんですか?

西山:チーム体制を工夫し、解決を目指しました。1つの部署で2つの課題があるという状況だったので、課題ごとにチームに分けるという選択肢もあったのですが、そうはせずに「1つのチームで両方に立ち向かう」ことに決めたんです。

大竹:課題ごとにチームを分けるのがシンプルな解決策だったと思うのですが、なぜそうしなかったのでしょうか?

西山:実は、Prott v2を開発していたときは、現行版のPrott v1を運用するチームとPrott v2の開発を行うチームとでメンバーを明確に分けていました。これによりチームの分断を招いてしまったんです。お互いが何をやっているのか分からないため、Prott v1の運用メンバーが新規プロジェクトのPrott v2に参加できず、寂しさを感じていました。やはり新しいプロダクトを作る方がワクワクしますし、ポジティブな感情も生まれやすいですよね。一方、既存のプロダクトを運用していくことは、必須であるものの負債と向き合いながら開発を進める大変な道のりです。このような気持ちの差から、チーム内に不要な亀裂が生じてしまいました。

 この経験から、全員で朝会を行う、チームは分けずタスク単位で担当を割り振る、といった風に1つのチームで2つの課題解決を目指しました。

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エンジニア全員がフロントエンドとバックエンド開発

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この記事の著者

大竹 智史(株式会社グッドパッチ)(オオタケ サトシ)

株式会社グッドパッチ Product div. プロダクトマネージャー。 2017年にグッドパッチに入社。デザインパートナー事業にて、BtoB SaaSのグロース、BtoCマーケットプレイスのプロダクトの立ち上げ、大手製造業の商品企画(エスノグラフィ調査/コンセプト立案)を担当。2018年グッドデ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

西山 雄也(株式会社グッドパッチ)(ニシヤマ ユウヤ)

株式会社グッドパッチ Product div. エンジニアリングマネージャー。 慶應義塾大学環境情報学部卒業後、インターネット普及期からスタートアップを中心にWebアプリケーション開発に従事。フリーランスのフロントエンドエンジニアとして新規事業に参加したことをきっかけに、2017年にグッドパッチに...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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