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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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プロダクトマネジメントにおけるデザインとの向き合い方

あなたのプロダクトはユーザーに向き合えてますか?――UXリサーチを導入してユーザー目線のプロダクトマネジメントを実現する

プロダクトマネジメントにおけるデザインとの向き合い方 第2回

 本連載では、特に「デザイン」に関する認識の差から生まれるズレをなくし、健全なプロダクト開発を実現するために、プロダクトマネージャーが押さえておくべきデザインの考え方やヒントを解説していきます。第2回は、ユーザー目線でプロダクトを磨き上げるために役立つ「UXリサーチ」の紹介と、UXリサーチの導入時につまづきがちなポイントを解説します。

想定読者

  • 初中級レベルのプロダクトマネージャー
  • UXリサーチを聞いたことがあり関心があるが、まだ実践したことがないという方

はじめに

 プロダクトマネジメントにとって重要な専門領域の一つであるUX(User Experience)。

 重要だと分かっているけど、あまり考慮できてない、またはUXを考慮しているけど、ちゃんとできているのか不安、という方も多いと思います。

 「UX=ユーザーが製品・サービスを利用する体験そのもの」と考えると、「ユーザー目線」で商品企画や開発、デザインを行うことで、プロダクトやサービスのUXをよくしていけると言えそうです。最近では、UXという言葉が当たり前に使われるようになり、プロダクト開発においてUXの話題が出ることも増えてきていますが、そのUXに関する会話の中に「ユーザー不在」の場合もまだまだ多いのではないでしょうか。

 ユーザー不在のよくある例としては、

  • ユーザーの属性が分かっていない
  • ユーザーのプロダクトに対するニーズやモチベーションが分かっていない
  • ユーザーがプロダクトを利用する際、どういう行動を取るかが分かっていない

などが挙げられます。

 こうした状況では、実際にプロダクトを使ってくれているユーザーのことがよく分からず議論が止まってしまう、あるいは、過去の経験からユーザーの傾向が語られることになってしまいます。そしてユーザーはこうするはずだ、という持論・推論が展開されると、話が空中戦になってまとまらないか、声の大きい人の意見に流され意思決定が下されることになってしまいます。

 こういう状況を打開するのに有効な手段が「UXリサーチ」です。UXリサーチとは、ユーザーインタビューやモックアップを使ったユーザーテストなど、さまざまな調査手法を駆使してサービスやプロダクトを利用するユーザーの体験について理解し、サービスやプロダクト開発の意思決定にコミットする活動のことです。

 UXリサーチを実施することによってユーザーの体験について理解できるようになれば、ユーザー目線でサービスやプロダクトの設計を行えるようになり、ユーザーに受け入れてもらうことができるプロダクトを作るためのハードルを下げることができます。

 ただしハードルが低いと言ってもそれは相対的な話で、新しいことを導入するには困難がつきものです。また、リサーチ実施のタイミングや導入の仕方を誤ると、せっかく価値のある活動をしていても、プロダクト開発にうまく反映することができません。

 これまで私はいくつかの事業会社で、UXデザインプロセスの一つとしてUXリサーチの導入に携わってきました。本稿ではこれまで導入に携わった中でうまくいった/うまくいかなかった経験をもとに、なぜUXリサーチが必要なのか、またUXリサーチに興味を持って実施しようとした時のつまづきポイントについて解説したいと思います。

UXリサーチの始め方

 本稿では文章量の都合もあり、UXリサーチの学び方、実践方法については深く踏み込みまないことにします。もし本稿をお読みになってUXリサーチの具体的な進め方について知りたいと思ったら、メルペイ草野孔希さん、松薗美帆さんが連載されていた「プロダクトマネージャーに贈る、UXリサーチの入門と実践~ユーザーとともに価値あるサービスをつくるヒント~」を読んでください。逆に草野さん、松薗さんの連載を読んでUXリサーチの実践方法について学んだあと、導入のコツについて確認するためのテキストとして、本稿を読んでいただいてもいいかもしれません。

 UXリサーチについてさらに詳しく学びたいという方は、以下の2冊の書籍をおすすめします。

 1冊目は、同じく草野さん、松薗さんが執筆された『はじめてのUXリサーチ』です。この本では、UXリサーチの基本的な考え方や、UXリサーチの導入方法、また事業会社において、UXリサーチを仕組み化するための方法について書かれています。

 もう1冊はフリーランスのUXリサーチャー奥泉直子さんが執筆された『ユーザーの『心の声』を聴く技術』です。こちらも1冊目と同様に実践的な内容なのですが、インハウスでの導入推進などはなく、代わりにリサーチャーとして奥泉さんがこれまでに経験されてきたことをもとに、調査計画や見積もり、調査の実施(実査)、分析に関するTIPSとつまづきポイントが豊富に掲載されています。どちらも良書なので、みなさんの興味に合わせてお選びいただければと思います。

長引く議論を打開するための手段としてのUXリサーチ

 あなたの関わるプロジェクトでこういう経験をしたことはないでしょうか?

  • プロダクトの仕様が決まらない
  • プロダクトの方向性について意思決定ができない
  • せっかく議論を積み重ねてプロダクトの仕様を検討したのに、鶴の一声で検討内容が覆ってしまう

 例えばアプリの新しい機能を実装しようとして議論している時はユーザーやユーザーニーズに関する情報がないと、議論を詰める決め手にかける、場の雰囲気でなんとなく決まる、あるいは声が大きな人の鶴の一声で意思決定がくだされ、開発が進行していくことになります。UXリサーチを実施してユーザーの声を聞いておけると、こうした議論にストップをかけ、長引く議論に終止符を打つことができます。

次のページ
UXリサーチを導入するためのコツ

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この記事の著者

脇阪 善則(ワキザカ ヨシノリ)

 パナソニック株式会社デザイン本部コミュニケーションデザインセンター所属/クリエイティブディレクター。デジタルプロダクトやインターネットサービスのUXデザイン&ディレクションについての経験が長く、現在では同社のアプリやウェブサイトのクリエイティブディレクションや、デジタルプロダクトデザイン強化施策に...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/788 2022/01/04 14:00

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