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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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プロダクトマネジメントにおけるデザインとの向き合い方

人間中心設計を導入し、価値あるプロダクトを開発する

プロダクトマネジメントにおけるデザインとの向き合い方 第5回

 本連載では、特に「デザイン」に関する認識の差から生まれるズレをなくし、健全なプロダクト開発を実現するために、プロダクトマネージャーが押さえておくべきデザインの考え方やヒントを解説していきます。第5回は、人間中心設計(Human-Centered Design=HCD)に関する解説とプロダクトマネジメントにおけるHCDの活用方法について解説します。

はじめに

 過去4回の連載では、クリエイティブブリーフデザイン要件UXリサーチプロトタイピングについて書いてきました。第5回となる今回はプロダクトマネジメントと「人間中心設計(Human-Centerered Design=HCD、以後HCD)」の関わりについて書きたいと思います。本稿での狙いは以下の3つになります。

  • HCDについて理解する
  • HCDがプロダクトマネジメントに役立つことに関する解説
  • HCDを実践するための具体的なステップ

HCDについて

 まずHCDについて簡単に解説するところから始めたいと思います。HCDとは文字通り、プロダクトやシステムに関わる人間を中心に据えて設計するプロセスのことです。類似語にUCD(User-Centered Design=ユーザー中心設計)があり、概念としてはほぼ同義ですが、対象とする人が異なります。UCDは設計時に利用を想定する対象がユーザーであり、HCDはユーザー以外のステークホルダーも含めた人間を対象にしています。

 元々HCDは、人間工学やユーザビリティ工学から発展してきた考え方であり、プロダクトやシステムをユーザーにとって使いやすく設計することや改善することが主眼に置かれていました。その後、HCDの考え方が発展するに従って、ユーザーの気づいていないニーズに設計者が気づき、プロダクトのUXをよくしていくこともHCDのプロセスで取り組むようになりました。また、設計の対象についても、初めはハードウェアプロダクトやインターフェースが対象でしたが、次第にシステムやサービスにもスコープを広げ、HCDが適用される範囲は次第に広がっていきました。

 皆さんは開発しているプロダクトについて、こんな経験をしたことはないでしょうか?

  • 開発チームで散々議論して設計した画面がユーザーにとって使いにくいものになってしまった(Howの失敗)
  • ユーザーにとって便利だろうと思って開発した機能(What)があまり使われなかった。
  • プロダクトを実現する目的(Why)がうまく定まらない。

 こうした問題は、いずれもHCDの考え方やアプローチが不足していることにより起こります。プロダクトのユーザーやステークホルダーのことを理解していない、またはユーザーの要求事項を満たすための活動をしていないことが原因なのです。人間を中心に据えてデザインすることで、上記のような問題は解決できます。

 実は、日頃から顧客価値をしっかりと考えてプロダクト開発をしているプロジェクトやチームでは、自然とHCDが実践できていると言えます。ペルソナやカスタマージャーニーを作って、顧客インサイトを分析する。顧客起点でプロダクトに対する仮説を立て、仮説を検証するためのプロトタイプを作る。ユーザーインタビューやユーザーテストを実施して、仮説検証を行う。これらはいずれもHCDの活動なので、これらを実行していればHCDを導入していると言っても差し支えないかもしれません。ただHCDの概念について知っておくことで、自覚的にユーザーに向き合ってプロダクトを作ることができます。従って、ユーザーに向き合いながら、PDCA/OODAのループを回していくことができるようになるでしょう。

 では、人間を中心に据えて設計するとは、どういうことなのでしょうか? HCDの文脈において、人間を中心に据えて設計する活動は、以下のステップに沿って解説されています。基本的には前半の2ステップがユーザーを理解するためのステップで、後半の2ステップが設計案の作成と評価のステップになります。

  • 「ユーザー理解」のステップ
    1. 利用状況(利用者の特性、利用実態など)の把握
    2. ユーザー要求事項の明示
  • 「設計案の作成と評価」のステップ
    1. 設計案の作成:プロトタイピング、PoCによる設計案の作成
    2. 設計案の評価(ユーザビリティ評価、UXリサーチなど)
図1 HCDの活動サイクル(特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構「HCD専門資格コンピタンスマップ」より引用)
図1 HCDの活動サイクル(特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構「HCD専門資格コンピタンスマップ」より引用)

1.利用状況の把握

 ユーザー/ステークホルダーの特性や、彼らがプロダクトを使う際の利用状況を把握するための活動になります。具体的には、アクセスログの解析やUXリサーチ、カスタマーサポートが入手しているデータなど、さまざまな調査分析手法を駆使してユーザーの特性や彼らの利用状況を理解し、分かったことをドキュメントにまとめることで、開発メンバーが利用状況を把握できる状態にします。

2.ユーザー要求事項の明示

 ステップ1で行った分析結果やドキュメントを使って、ユーザーがプロダクトに対して何を求めているのかを洗い出します。ユーザーの要求事項の洗い出し方は、本連載の第3回「デザイン要件を定義する」でも解説しています。

3.設計案の作成

 このステップでは、ユーザーの要求事項をもとに、ユーザー課題の解決策になり得る仮説としてのプロトタイプを作成します。このプロトタイプの作成方法は、本連載の第4回「プロトタイピング」で詳しく解説しています。

4.設計案の評価

 プロトタイプを作った後は、ユーザーの要求事項を満たしているかどうかの評価になります。この評価のステップで、設計案(=プロトタイプ)がユーザーの要求を満たしているかを検証します。検証の仕方は、本連載第2回「UXリサーチ」の回を参考にしてください。このステップはあくまで検証であり、検証の結果出てきたプロダクトに関する課題や改善点に応じて上記1〜3のステップに戻り、HCDのプロセスを繰り返します。そういう意味では、HCDというのはイテレーションがあるプロセスであり、人間を中心に据えてこのプロセスを繰り返すことがHCDであると言えます。

次のページ
プロダクトマネジメントとHCD

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この記事の著者

脇阪 善則(ワキザカ ヨシノリ)

 パナソニック株式会社デザイン本部コミュニケーションデザインセンター所属/クリエイティブディレクター。デジタルプロダクトやインターネットサービスのUXデザイン&ディレクションについての経験が長く、現在では同社のアプリやウェブサイトのクリエイティブディレクションや、デジタルプロダクトデザイン強化施策に...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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