今回の対象読者
- PMを任されたばかりの、“PM初心者”の方
- PMを目指している、“PM未満”の方
はじめに
読者の皆さま、はじめまして。ベルフェイス株式会社でプロダクトマネージャーを務める石田と申します。現在、私はベルフェイスのメイン事業である、チームで売上を最大化するオンライン営業システム「bellFace」のプロダクト開発に携わっていますが、プロダクトマネージャーを任される際に代表である中島から以下のメッセージをもらいました。
「プロダクトに関する顧客体験の全てに責任を持ち、プロダクトの価値を上げ続ける役割を担ってください。これがベルフェイスにおけるプロダクトマネージャーの役割です」
このメッセージからも分かるように、プロダクトマネージャーはサービスを通して顧客体験を向上させ続けるという重大な責務があります。最近は、顧客体験の設計に関するノウハウが少しずつ世の中に出回るようになってきましたが、どのように取り組むべきなのかが分からない方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、ベルフェイスの顧客体験(UX)に責任を持つ立場として、UX設計について日頃から大切にしている考え方をお伝えできればと思います。
顧客は「ホスピタリティ」を求めているのか?
本題に入る前に、私が過去にUX設計でおかした失敗についてお話させてください。私は、前職では「アイミツ」という受発注のマッチングサービスを立ち上げていました。このサービスでは、コンシェルジュが発注のサポートを行う仕組みがあります。
ちなみに、当時の私は「顧客を感動させたい」や「ホスピタリティ精神を持ったおもてなし」という考えを最も重視していました。
そこで、私はこの考えを社内で啓蒙するために、標語を作り、その標語をポスターにして掲示したことがあります。もちろん、顧客にとって丁寧な対応は悪い気持ちにはなりませんし、雑な対応が良いこともありません。
しかし、発注先を探している顧客の立場からすると、以下のように感じることでしょう。「ありがたいけど、正直そんなことはどうでもいい」「丁寧な対応よりも、どの発注先が良いか教えてほしい」――。
この過ちに気づいたのは『おもてなし幻想』(実業之日本社)という書籍を読んだ時のことでした。頭をガツンと殴られたような感覚を今でもよく覚えています。
UX設計において最も大切なこと
私は過去の失敗を通じて、UX設計において大切なことは、「顧客のことを見る」ではなく「顧客の立場からプロダクトを見る」ことだと考えるようになりました。そして、今でもプロダクトマネージャーとして、私はこの「顧客の立場からプロダクトを見る」ことを最も大切にしています。
また、忘れてはいけないのが、常に主語や主役は顧客として考えるということです。そのため、私は「顧客に向き合う」や「顧客に寄り添う」という言葉を使わないようにしています。加えて、「顧客と同じ立場で(冷静に)ただ見る、味わう、体験する」ことをプロダクトマネージャーとしていつも意識することを心がけています。
ちなみに、私はこの状態のことを「顧客を“憑依”させる」と呼んでいます。UX設計を進める際には、常に顧客を憑依させた状態で、「こういう体験をしたい」「こういう機能を、このように使いたい」と言語化し、顧客にとって理想の体験を考えます。