今回の対象読者
- PMを任されたばかりの、“PM初心者”の方
本当に「PM=ミニCEO」なのか?
「プロダクトマネージャーはプロダクトのミニCEOである」
これはプロダクトマネージャーの役割を説明する際にしばしば使われる比喩表現だ。とてもわかりやすい喩えである一方で、誤解を招く危険な表現でもある。
『プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』(オライリー・ジャパン)では、自身をCEOだと「勘違い」したプロダクトマネージャーの失敗が描かれている。チームの声に耳を傾けないスティーブ・ジョブズ気取りの独断的なプロダクトマネージャーになってしまったのだ。
この失敗は「権限」と「責務」を取り違えたことが原因だろう。「プロダクトマネージャーはプロダクトに対してCEOと同じ権限を持つ」と考えるのは間違いで、「プロダクトに対してCEOと同じ責務を持つ」と考えるべきなのだ。
- 権限:個人がその立場でもつ権利・権力の範囲
- 責務:責任と義務。また、果たさなければならない務め。
※出典:デジタル大辞泉(小学館)(Weblio辞書より)
会社が進むべき方向性を指し示す責務があるのは誰だろう。言うまでもなくCEOだ。同様にプロダクトの進むべき方向を指し示す責務を持つのがプロダクトマネージャーである。
プロダクトの改善案について、AとBのどちらの選択肢を選ぶべきか。どちらも一長一短あり、正しい選択がどちらなのか誰も判断できない。そうしたときに最終的な意思決定を行うことがプロダクトマネージャーの責務の一つだ(もちろん、ただ決めれば良いわけではなく、意思決定の背景を関係者が納得できるように説明できる必要がある)。
プロダクトマネージャーはプロダクトに対して、CEOと同様に結果責任を持つ。会社の失敗は誰の責任か。失敗した原因が何であれ、最終責任はCEOにあるだろう。同様にプロダクトが失敗すればその最終責任はプロダクトマネージャーにあると考えよう。
「いやいや大した権限もないのに責任だけ取らされるのは割に合わない」と思うかもしれない。もちろんプロダクトが失敗したからといって、プロダクトマネージャーが会社をクビになったり降格させられたりするのはフェアではない。実際にそんなことは起こらないだろう。
ただ、プロダクトマネージャーは「プロダクトに関する結果責任は自分にある」というマインドセットでことに当たるべきだ。そうしたマインドセットがプロダクトマネージャーとしての意思決定の質を上げ、チームから信頼される振る舞いにもつながる。