「製品主導の成長」とは何か
製品主導の成長(Product-led Growth)は、ユーザー中心のストラテジーです。プロダクト自体が、コンバージョン獲得、リテンション、拡大のため主要なチャネルとなるのです。この戦略では、エンドユーザーにフォーカスしてプロダクトを作ります。ユーザーにとって、他者に共有したくなるほどの素晴らしいプロダクト体験を作り上げることに重点をおいたアプローチ方法です。
製品主導の成長戦略が最も効果的なのは、データに基づいて、その後のアクションを決定する時です。プロダクトのロードマップを決定する際には、プロダクトの主要な指標をマップ化して測定します。このようなデータ主導のアプローチをすれば、プロダクトのロードマップをただの臆測だけで決めてしまうという事態を防げます。プロダクトの状況が順調かどうかを素早く把握し、順調でない場合には、すぐに軌道修正できるようになるのです。
「製品主導の成長」を理解する
製品主導の成長の要となるのは、顧客にとってのプロダクトの価値を理解することです。
この価値が理解できれば、行き当たりばったりに新機能を考え出す必要がなくなり、より構造的で考え抜かれたプロダクト作りができるようになります。ユーザーにとって必要でない部分に、時間とリソースを費やすことを避けられるのです。
ここでは、製品主導の成長戦略を始めるために重要な、4つのステップをご紹介します。
- ユーザーが、どのようにプロダクトを利用しているのかを知る
- どの機能を使ったときにユーザーが離脱してしまったのかを把握する
- ユーザーが、素晴らしいプロダクト体験や、ひらめきや気づきを感じる瞬間を定義する
- カスタマージャーニーを追跡し、どのようにバリューモーメント(価値を感じる瞬間)にたどり着いたかを特定する
バリューモーメントを特定するための、普遍的な方法はありません。なぜなら、各企業のプロダクト、ビジネス、戦略、目標の性質や成熟度によって、大きく異なるからです。
多くの企業は、データ不足のために、バリューモーメントを正確に定義できていません。そんなときは、必要に応じて、分析ツールを使ってみると良いかもしれません。手始めに指標を設定し、バリューモーメントの仮説のテストを行い、再認識することができます。
実際の企業のプロダクトでは、どのような瞬間をバリューモーメントと定義しているか、例をご紹介します。
- 「楽天Viber」(無料通話&メッセージアプリ)の場合:ユーザーがアプリ内でグループチャットを作成した瞬間
- 「Twitch」(ライブストリーミング配信プラットフォーム)の場合:ユーザーがライブストリーミング配信を5分以上視聴した瞬間
同じ業種のプロダクトでも、バリューモーメントの定義が異なる場合があります。例えば「Twitch」と「TikTok」は、どちらのプロダクトにもソーシャルネットワークと動画の要素があります。しかしそれぞれの性質が違うため、バリューモーメントの定義は異なってきます。
「Twitch」は、ユーザーがライブストリーミング配信を5分以上視聴した瞬間を、バリューモーメントと定義しています。一方「TikTok」では、60秒以下のショートムービーを配信しているため、ユーザーが「TikTok」の動画全体を見終わった瞬間を、バリューモーメントと定義することができるでしょう。
ユーザーをバリューモーメントに導くことは、製品主導の成長戦略においてのキーポイントです。
ではプロダクトマネージャーはどのようにして、バリューモーメントを正確に特定していけば良いのでしょうか。