ヌーラボは10月4日、プロジェクト・タスク管理ツール「Backlog(バックログ)」の利用料金を2023年1月11日から値上げすることを発表した。料金改定は2018年12月以来で、値上げ幅はプランごとに異なり、最大で月額50%増となる。また、年契約の割引率も現行の2か月分(16%)から一律5%に引き下げる。
料金改定の背景について、ヌーラボ 代表取締役の橋本正徳氏は、「ユーザーへ安定的なサービス環境・機能改善の提供を継続するため」と説明している。また、上位プランほど値上げ率が高い点は、アクセスログの提供など、機能の充実度の違いだという。
Backlogは2005年にリリースされた、チームのコラボレーションを加速させるプロジェクト・タスク管理ツールで、オンラインサービスとして利用できる。ソフトウェア開発者やデザイナーを中心に利用が広まったが、開発の原点として「開発者だけでなく誰でも使いこなせるツール」を掲げており、直感的でユーザーフレンドリーなデザインを追求することで、現在では営業やバックオフィスまで、幅広い用途で使われている。
2022年6月末時点で有料契約数は1万3361件、有料ユーザー数は107万人であり、月次解約率は0.86%(月額利用料の減少金額ベース)と定着率が高い。売上高は2022年3月期で21.8億円となっている。
多くのSaaSビジネスではユーザー数単位の利用料になっているのに対し、Backlogでは、個人利用を想定したスタータープランを除くスタンダードプラン以上で、契約単位の利用ユーザー数が無制限となっている。
橋本氏はこれについて、Backlogがユーザーから支持されている特長の一つであり、会社やチームがどんな成長過程であっても安心して使うことができ、社内外のステークホルダーを簡単に招待できるなど、引き続き重視する点であることを強調した。
また、今後の成長領域としては、開発者のように自分たちで活用できる人々だけでなく、タスク管理やプロジェクト管理に親しみがないビジネス層へのリーチを拡大していくとし、「Backlogは、皆のため、チームのためのツール」というスタンスを継続していくと述べた。一方で、ビジネス層の利用は既に始まっており、それを加速することを意味し、顧客層や戦略変更の予定は現時点でないとも言及している。
具体的な施策としては、より直感的な使い勝手の強化、マニュアルやQ&Aの整備、自動化の推進、公式パートナー制度などを挙げている。そのための人員や開発支援ツールにも投資していくという。
東証の適時開示情報で、「2023年3月期の連結業績に与える影響は現時点において軽微と判断して」いると説明している背景については、「新料金の適用が新規契約ユーザー、または以降の契約更新のタイミングになること」「前回の値上げ(平均22%程度)では大きな影響がなかったこと」「今までに対し価値を感じていただいているお客様が多いと思われること」を挙げている。KPIへの影響は今後慎重に見ていくとした。
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斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)
株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...
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