はじめに
ここ数年、大手企業さまのDXの推進、新規事業/新規サービスの立ち上げをご支援していて気がついたことがあります。ほぼ漏れなく、今や当たり前となった技術であるモバイルとクラウド、そして、それらを前提とした顧客体験(CX/UX)についてあまりにも経験がなさ過ぎるのです。
もちろん、一人のユーザーとしてスマホでいくつかの顧客体験をしている人はいますが、経営陣、事業責任者、リーダークラスに、付加価値の高い新規サービスの体験、経験、知見を持った人材は皆無に等しいと言えます。また、大手企業において、それらのサービスを技術的に実現することを期待されるIT部門でさえ、そのような人材は十分とは言えないのです。
一方で、近年、国内でも急激に増えているベンチャー企業では、当たり前のように、付加価値の高い新しい顧客体験を提供するサービスが生まれています。
本連載では、この差はなぜ生まれるのか、大手企業の経営陣、事業部門、IT部門、DX推進部門のそれぞれの視点からみた課題を整理しながら、ベンチャー企業などでは活躍しているが、大手企業においては、特にデジタルサービスについてはあまり存在しない「プロダクトマネージャー」という役割にフォーカスを当てて解決策を考えてみたいと思います。
私は、1989年に今のアクセンチュアでキャリアをスタートし11年、その後、日立コンサルティング、日本IBMなどを経て2020年に株式会社DNTIを設立しました。30数年にわたりITコンサルタントとして、また営業としてさまざまな業界において、業務改革やシステム導入をご支援し、この10年はAIやIoTビジネスの立ち上げ、企業の新規事業/新規サービスの立ち上げ、DXの支援をしてきました。その経験から得た「成果の出るDXの推進のコツ」を一人でも多くの方に分かりやすくお届けしたいと思っています。
大手企業のDX推進のキーマンは誰か!?
第1回である今回は、大手企業の方にも理解いただきやすいように、そもそものプロダクトマネージャーの役割について説明した上で、プロダクト(=新規サービス)の成功とは何か、またDXの成功のために関連する経営陣、事業部門、DX推進部門、IT部門などにおける課題全般について考えてみたいと思います。