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DXの落とし穴を解決するプロダクトマネージャ―のすすめ

事業戦略部門が示すビジョンを具現化するためのDX推進とプロダクトマネージャーの役割

DXの落とし穴を解決するプロダクトマネージャ―のすすめ 第4回

 DXやシステム化の実現のためには、戦略とシステムのつなぎ役である「プロダクトマネージャー」の存在が必須である。しかし、事業会社では意外と、その存在も必要性も知らず、「DXやシステム化はIT部門に頼めばやってくれる」「戦略をきちんと作ればいいシステムができる」とプロジェクトをスタートしてしまい失敗することが多い。本連載では、DXやシステム化がうまくいかない事例とともに、プロダクトマネージャーの必要性を訴えていく。第1回では、プロダクトマネージャ―とは何か、プロダクトの成功とは何かについて、第2回では、IT部門の課題と解決の方向性について、第3回では、「新規事業/新規サービス」の立ち上げを指示された「事業部門」のみなさんにとっての悩みとその解決方法についてみてきたが、今回は、事業戦略部門(経営陣)の視点で、DXの推進や実現のために何ができるか考えてみたい。

はじめに

 日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際、しばしば戦略やビジョンの重要性が軽視され、技術導入が目的化するケースが見られます。しかし、DXの成功には、まず明確なビジョンを策定し、それに基づいて事業を立ち上げ、運営し、全社一丸となって目標を達成する体制が必要です。

 本稿では、事業戦略部門が示すビジョンに基づき、事業部門が新規事業を立ち上げるプロセスを主導するプロダクトマネージャー(PdM)とIT部門の役割について解説します。

事業戦略部門が示すビジョンの重要性

 DXを企業成長の柱とするためには、まず事業戦略部門が長期的なビジョンを明確にし、それを組織全体に浸透させる必要があります。このビジョンは、単に新しい技術を導入するためのものではなく、企業がデジタル時代において持続可能な成長を遂げるためのモデルです。

 事業戦略部門が示すビジョンがあることで、各部門が自らの役割を理解し、共通の目標に向かってDX推進に取り組む土台ができます。

 具体的には、経営陣の命を受けた事業戦略部門は市場のトレンド、顧客のニーズ、技術革新などを踏まえて「どのような事業が将来の企業価値を高めるか」という方向性を示します。このビジョンは、事業部門が具体的な事業立ち上げに取り組む際の指針となります。当たり前のことではありますが、このことが明確に記載された中期経営計画をIRで見ることは珍しいことです。

事業部門による事業立ち上げと運営

 事業戦略部門のビジョンを受け取った事業部門は、そのビジョンに基づき、新たな事業を立ち上げ、事業の具体的な戦略を定めて実行に移します。事業部門は、ビジョンの内容を深く理解し、それに基づいて顧客価値を創出するプロダクトやサービスを企画します。

 事業部門の役割は、単にビジョンに従うだけでなく、自らがそのビジョンを現実にするためのリーダーシップを発揮することです。市場の動向や顧客の期待を反映した製品やサービスの開発・提供を行い、事業戦略部門が掲げるビジョンを具現化していきます。

 これも当たり前のことではありますが、主体性をもって、自分ごととして新規事業や新規サービスを企画し実行できているケースは日本ではまだまだ少ないと言えます。

次のページ
プロダクトマネージャーの役割:事業部門を支援する戦略的リーダー

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この記事の著者

西村 大輔(株式会社DNTI)(ニシムラ ダイスケ)

アクセンチュアでキャリアをスタートし、日立コンサルティングの立ち上げ、日本IBMなどで30年にわたりビジネスコンサルタントとして活躍。コンサルタントとしては、消費財、電気、化学、食品、日雑、文教、通信業界など、幅広い業界における、全社業務改革、グループ/グローバル経営管理、大規模なCRM/ERP導入...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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