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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZineイベントレポート(AD)

真の意味で顧客を理解できているか? よくあるプロダクト改善の落とし穴と、リサーチを活用する際の4つのアプローチ

「ProductZine Day 2024 Summer」レポート

 プロダクトやサービスが細分化・多様化する中で、プロダクトづくりも顧客やユーザーの立場に寄り添ったものが求められている。そのためには顧客理解が非常に重要だ。電通マクロミルインサイトでは、リサーチを通じて顧客理解を深め、その成果を基にプロダクトやサービス開発を支援している。2024年8月30日に開催された「ProductZine Day 2024 Summer」において、同社の内藤泰嗣氏は、プロダクト開発における顧客理解のためのリサーチ手法と具体的な事例を紹介した。

真の意味で顧客を理解できているか? プロダクト改善の落とし穴

 電通マクロミルインサイトは、電通とマクロミルの合弁による総合マーケティングリサーチ会社だ。主に一般消費者の洞察を基に、国内外の多様な業種のクライアントに対してマーケティング活動や製品・サービスの開発を支援している。内藤氏は、外資系リサーチ会社や外資系広告会社でマーケティングリサーチとUXリサーチの経験を積んだ人物で、現在は同社のリサーチオペレーション部デザインリサーチグループに所属している。

株式会社電通マクロミルインサイト リサーチオペレーション部 デザインリサーチグループ 内藤泰嗣氏
株式会社電通マクロミルインサイト リサーチオペレーション部 デザインリサーチグループ 内藤泰嗣氏

 内藤氏はまず、顧客の成長プロセスについて説明した。顧客は、最初は製品やサービスの認知や興味喚起によって「見込み客」となり、試用や競合比較を経て「顧客」となる。そして、その製品やサービスを繰り返し使ってくれる「リピーター」へ進み、最終的にはその製品やサービスだけでなく、その企業に対して愛着を抱く「ロイヤルカスタマー」と成長する。このように、顧客が成長していく過程で満足度や利用頻度も自然と上がっていく。

 顧客の成長を促す具体的な施策として、まず「見込み客」から「顧客」にするためには、認知度を高め、販促キャンペーンなどを通じて試しに使ってもらうことなどが挙げられる。その次に、UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上を図り、使ってみたら「これは良い」という印象を強めて「リピーター」にする。最終的にはCX(顧客体験)の向上により、企業が提供するサービス全体への満足度を高めて「ロイヤルカスタマー」に至る形だ。

顧客の成長には、顧客に寄り添う必要がある
顧客の成長には、顧客に寄り添う必要がある

 内藤氏は、この講演では「顧客」から「リピーター」へと発展させる部分、つまり「UXの向上」について焦点を絞って解説するとし、その取り組みで生じるよくある課題と解決策を紹介した。

 まず内藤氏は、こんなことはないかと聴講者へ問いかけた。

  • 「自信を持って開発したWebサイトやアプリなのに、思ったより売れなかった」
  • 「顧客の声を反映して改善したつもりが、思ったより評価が上がらなかった」

 これらの問題が当てはまるなら、「このような場合、顧客やユーザーの理解が真の意味でできていないのでは? つまり、顧客やユーザーの課題に寄り添ったプロダクトやサービスが開発できていないのではないか」と、内藤氏は語った。

 続いて、よくある調査計画の例として「ECサイトのUI改善」を挙げた。このケースの課題として考えられるのは、「認知度はある程度高いが、期待したほど売上が伸びていない」「使いづらいという口コミは少ないものの、初回購入者が少ない」「リピート購入者は比較的多いが初回購入者が少ない」といったものだ。

 課題発見の手法として、よく行われるのは「ログデータの分析」で、流入元や滞在時間、離脱率、カート放棄率などを調べ、どこに課題があるのかを探る。内藤氏は、この調査は間違いではないとしながらも、「問題がある箇所は想定されるが、そこに至る状況や離脱背景が不明だったり、原因の特定には至らなかったりすることが多い」と指摘した。

ログ分析やアンケートだけでは、顧客の本音が見えにくい
ログ分析やアンケートだけでは、顧客の本音が見えにくい

 一方で、サイトの総合評価や満足度を調べるために、「ユーザーアンケート」を行うこともある。使いやすさなどについて10点満点で何点かを尋ねることが多いが、回答者は必ずしもアンケート時にそのECサイトを実際に使いながら答えているわけではない。そのため、「よく分からないけど6点でいいか」といったあいまいな回答をされることもあり、評価の詳細な理由がはっきりと分からないことがある。自由記述で理由を尋ねられるものの字数制限などもあり、具体的な回答を期待通りに得るのは難しい。

 内藤氏は「数量的、表面的な実態を示すことはできても、サイトの利用文脈がどうしても不明確になってしまう点が課題だ」と述べ、このような調査だけでは顧客を理解するには不十分だと強調した。

調査を通じて顧客を理解する際の4つのアプローチ

 では、顧客を深く理解してプロダクトやサービスを開発するにはどうすればいいのだろうか。内藤氏は、調査を通じて顧客やユーザーの思考や行動を理解すること、つまり「顧客視点」「人間中心」であることが重要とし、その観点で次の4つのアプローチを説明した。

  1. 自社と競合他社の利用実態を知る
  2. 製品やサービスの利用上のユーザー課題を発見する
  3. すでに自身で課題を解決して上手に利用しているユーザーから、解決方法を学ぶ
  4. 想像もしない使い方をするユーザーから、その使い方に至った経緯を知る

 これらの調査を行うことで、顧客に確かな価値を提供できるだけでなく、新しい顧客体験や価値の創出も期待できる

顧客視点・人間中心の調査が求められている
顧客視点・人間中心の調査が求められている

 4つのうち最初の2つ「自社と競合他社の利用実態を知る」「製品やサービスの利用上のユーザー課題を発見する」については、平均的なターゲットユーザーへのアンケート調査が有効だ。例えば、ECサイトやECアプリでは、現金とカードを併用している人や、スマートフォンは主に1台を使用している人など、平均的なユーザーに対して調査を行う。

 思いもよらない発見によって新しい価値を創出したいときは、残りの2つ「すでに自身で課題解決して上手に利用しているユーザー」「想像もしない使い方をするユーザー」に対して調査を行う。ECサイトなら、現金しか使わない人や、その逆で現金を一切持ち歩かない人、またはスマホを使わない人や、複数のスマホを使い分けている人など、極端な属性を持つエクストリームユーザーだ。これらのユーザーがどのような工夫をして課題解決を行っているかを確認するのだ。

 後者の「新しい顧客体験や価値の創出」については別途、具体例として不動産販売会社のWebサイトリニューアルのケースを紹介し、深く掘り下げた。

 この不動産会社では、顧客から寄せられた「使いにくい」という声やアンケート、クレームを収集し、それを反映して情報や機能を増やす取り組みを行った。物件情報を増やし、検索機能を強化したが、結果的に検索条件が絞りにくくなり、ユーザーが期待する結果を提供できなかった。つまり、リニューアルが逆効果となってしまったのだ。

 そこで今度は、「不動産の購入者が、そもそもどういったプロセスで不動産を検討し、購入に至るのかを深く理解すること」に立ち返ることにした。実際に不動産を購入した人にインタビューを行い、購入プロセスを深く探った。その結果、理想的な購入プロセスに寄り添い、最終的に購入の後押しをするというコンセプトを作り上げ、改善を行った。すると、サイトの滞在時間が増加し、相談件数も増えるというポジティブな結果が得られた。

 成功したリニューアルで実施したユーザーインタビューでは、何が決め手になったのだろうか。このケースで行ったインタビューの対象者は「不動産を徹底的に検討し、納得のいく物件を購入できた人」、つまり先述の「すでに自身で課題を解決して上手に利用しているユーザー」だった。

 具体的なインタビュー内容としては、初めて不動産を購入した人には「賃貸から購入する際の壁」や「初期にどんなことを検討していたのか」などを聞いた。家を買い替えた人には「査定相場をどのように調べたのか」「査定業者の選定」などを詳しく聞き出した。

 網羅的なインタビューの結果、購入に至るプロセスとして、「検討段階」「探索段階」「検索段階」「選定段階」「決定段階」があることを改めて確認できた。そして、各プロセスに対して「思考」「行動」「情報取得手段」「課題」「課題解決の方向性」を整理した。

段階に応じた思考や行動、課題などを整理
段階に応じた思考や行動、課題などを整理

 例えば、不動産の「探索段階」では、「戸建てに住みたい」や「駅近がいい」といった大まかな条件から始まり、思いつきで物件を探していくが、直感的に良いと思える物件が見つからないとこのサイトでの検討を諦めてしまうことがある。こうした利用状況が想定できると、希望の条件を整理する難しさや、一長一短がある条件の譲歩など、ユーザーが抱くであろう課題が浮かび上がってくる。すると、「ユーザー自身とその家族の条件を整理するためのコンテンツを提供するべき」「こういうサービスが必要」といった具体的な解決策が明確になる。

 内藤氏は「調査によってステークホルダー間で顧客に対する共通理解が得られれば、アイディエーションやコンセプト作成といった次の段階に進むことができる」と述べた。

リサーチで顧客を知ることは、プロダクトで新たな価値を創出する武器になる

 内藤氏は最後に、自社で提供する調査の支援サービス(デザインリサーチ)の手法を2つ紹介した。

 「ユーザビリティテスト」は、目の前でユーザーにWebサイトやアプリの操作をしてもらって「ここが使いにくい」「あそこがおかしい」といった課題を発見する調査だ。この調査では、ログ解析だけでは分からない、UI上の原因やユーザビリティの課題が抽出でき、ユーザーの離脱に至る理由を明らかにできる。また、実際のユーザーによる利用場面を観察することで、想定外の課題を発見することも期待できる。さらに、関係者間で実際のユーザーのリアルな情報を共有できるメリットもある。

 「エキスパートレビュー」は、専門家がユーザーの代わりに操作をして課題を発見する。この調査は、プロトタイプを評価したい場合など、まだ一般の人が操作する段階でなくても一時的な評価が必要なときに役立つ。また、新しいサービスで情報漏えいを防ぎたい場合など、一般の人に操作させることができないときもある。そうした場合、ユーザビリティの専門家や顧客理解に詳しい人物が実際に操作し、不具合を探ることがある。

 専門家による評価では、見た目や使い勝手などさまざまな点を考慮する。例えば、採用情報のページなら、志望者がどのようなプロセスを踏んで応募に至るか、ということを仮説として立て、その気持ちになって実際に操作する。そうすることで、「提供者側が最も伝えたいと思っていることにユーザーが気づきにくい」など、サイトの課題が次々と見えてくる。その結果、課題の詳細についてロジカルに説明可能となり、具体的な改善点も明確になる。

ユーザビリティテストとエキスパートレビューの概要
ユーザビリティテストとエキスパートレビューの概要

 電通マクロミルインサイトでは、このような人間中心やUXの観点から製品やサービスの開発・改善を支援している。また、調査結果に基づいたプロトタイプの制作やシステム開発など、実行フェーズの支援も行っている。内藤氏は最後に「顧客を知ることで、既存のプロダクトの改善や新しいプロダクトの創出、またUI/UXの向上など、さまざまな場面で役立ちます。そういった意味で、リサーチは非常に有効です」とコメントし、同社サービスの利用を促した。

ユーザー体験を最適化するためのデザインリサーチ

 デザインリサーチとは、製品やサービス(以下、プロダクトと称する)の開発に向けて、ユーザーの声を聞き、理解し、反映させるための調査手法です。ユーザー体験(UX)を向上させるために、インタビューや行動観察、データ分析などを通じて、新たなアイデアを得たり、改善すべき点を見つけることができます。

 電通マクロミルインサイトのデザインリサーチは、豊富な経験と知識を活用してユーザーの真のニーズを見つけ出し、定量的な分析やアクセス解析を活用して、より深いインサイトを提供します。本記事で興味を持たれた方は、電通マクロミルインサイトからお問い合わせください。

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提供:株式会社電通マクロミルインサイト

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://productzine.jp/article/detail/2904 2024/10/22 12:00

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