UX改善における主な定性データと活用例
ユーザーの「行動」を可視化できる定量データに対して、その行動の「理由」や「行動背景」の特定に活用できるのが定性データです。さまざまなリサーチ手法がありますが、ここでは代表的なリサーチ手法を5つ、アプリのフェーズや目的に応じた活用例と合わせて挙げていきます。
1.ユーザーインタビュー
アプリやサービスの利用状況や意見を、ユーザーに直接ヒアリングするリサーチ手法。ユーザーの感情や行動背景、動機など、利用実態の把握とインサイト理解を深めることに効果的です。
また、課題が表面化していて阻害要因が不明な場合にも、インタビューで改善点について深掘りできます。
活用例
アプリに興味を持ったきっかけや、インストールに至った理由を明らかにする。
2.ユーザーアンケート
多数のユーザーから意見やフィードバックを収集するのに最適な手法で、短期間で幅広いデータを得ることが可能。調査形式によって、定量的なデータと定性的なデータをそれぞれ収集できます。
活用例
ユーザーがアプリを利用する動機や目的の把握や、新機能を導入したが期待したほど使用されていないという課題に対して、ユーザーがその機能を認識しているか、興味を持っているかどうかなど、フィードバックをもらうことで阻害要因を確認し、改善策の方向性を導き出す。さらに、特定の課題に対して「Yes/No」や5段階評価などの選択肢で回答できるクローズドエンド型で意見やスコアを収集することで、満足度や利用意向などの傾向を定量的に把握する。
3.ユーザビリティテスト
実際にユーザーがアプリを操作する様子を観察し、ユーザーがどのようにアプリを利用しているのかを調査する手法。特にUI/UXの操作性、使いやすさを検証することに適しており、「何に迷ったのか」「何に分かりづらさを感じたか」をその場で確認することで、UIやUXの改善に直結する課題要因を可視化します。
活用例
途中離脱が多い機能や、新たに追加された機能、インターフェース変更後のユーザー体験を検証する。
参考:似ているけれど違う、ユーザーテストとユーザビリティテスト
「ユーザーテスト」と「ユーザビリティテスト」は似ている部分もありますが、目的やアプローチが異なるため、同じものではありません。ユーザーテストは「ユーザーのニーズや価値」にフォーカスし、コンセプトやアイデアがユーザーに受け入れられるかを評価するもので、アプリの企画段階で有効な手法です。それに対してユーザビリティテストは「ユーザーが直感的に操作できるか」にフォーカスし、使いやすさの検証に用いられる手法で、アプリのリリース後の改善に適しています。
4.行動観察
ユーザーがアプリを利用している自然な環境での行動を直接観察する調査手法。ユーザー自身が意識していない潜在的な行動パターンや、無意識のうちに生じている隠れた課題を発見するのに有効です。ユーザーに対して干渉せずに観察するため、アンケートやインタビューでは得られないリアルな使用状況を把握できます。
活用例
会員証機能を持ったアプリについて、店頭での利用シーンを観察することで、ユーザーが会計時に素早くアプリを起動できなかったり会員証を見つけるのに手間取ったりしている様子を捉える。観察を通じて、アプリ内の会員証機能が直感的に操作できない、もしくはユーザーインターフェースのレイアウトに問題がある可能性に気づくことができる。
さらに、ユーザーが店員にアプリの使い方を質問する場面や、周囲の視線を気にして操作にストレスを感じている様子などから、ユーザーインタビューだけでは把握しきれない潜在的な課題を見つけ、効果的なUX改善のための具体的なアクションを考える。
5.ソーシャルリスニング
X(旧Twitter)やInstagram、アプリストアレビュー、ユーザーレビューサイトなど、SNSやオンラインの口コミを分析して、ユーザーの反響やトレンドを把握する手法。直接的なインタビューでは得られない率直な感想や、意図せず出た本音を収集できます。
活用例
「アプリの通知機能が煩わしい」という意見がSNSで頻出しているのを確認。インタビューやアンケートでは表面化しにくいユーザーの本音として、通知頻度の調整や設定項目の改善を検討することで、ユーザーの満足度向上を目指す。