NTTドコモは、企業固有のデータと大規模言語モデル(LLM)によって生成したユーザーモデルへのヒアリングを通じて、実ユーザーの行動や選択をシミュレーションする技術および基盤を開発したことを、3月21日に発表した。
同技術では、バイアスの影響を抑えるように学習したパラメーター(属性ベクトル)を用いてユーザーモデルを生成するとともに、数千〜数万の質問を大量に並列実行した結果を統計的にまとめることによって、LLMが内包するバイアスを取り除いて、精度と信頼性の高い回答を取得する。
ユーザーモデル生成にあたっては、匿名化された企業固有のデータをさらに多段階のクラスタリングで統計化した、クラスタ情報をもとに出力データセットを生成して、属性ベクトルの抽出に利用する。属性ベクトルをLLMに加えることで、性格、価値観、考え方といったさまざまな属性の付与が可能になり、この属性をユーザーモデルのプロファイルとして用いる。

また同技術では、大量の質問を短時間で処理すべく、属性ベクトルの内部計算や効率的なキャッシュ処理を行う高速なLLMサービング基盤を開発しており、従来の手法と比較して、回答生成のための計算速度を最大6倍向上している。

同技術の効果検証のために、NTTドコモが2万人に対して実施した味覚に関するアンケートを使用して、それぞれの設問に対して2万人の平均に近い回答を生成できるかどうかを実験したところ、通常のLLMを使用した場合の正答率は最小30%、最大65%と安定しなかったのに対して、属性ベクトルを与えた上で質問をパラフレーズ(質問の順序入れ替えなど)した同技術では、73%の安定した正答率となった。
さらに、小売店舗における利用者の好みに合った新商品の選定に関する実証実験として、Relicが運営する「コンビニエンススタンドTUKTUK」の一部店舗にて、発注担当による選定、一般的なLLMによる選定、同技術を活用した選定を用いて商品の販売率を比較したところ、同技術は発注担当による発注と同等の販売率となり、一般的なLLMによる選定を用いた販売率を約4%上回っている。
あわせて、NTTコミュニケーションズが企画・運営する大手町プレイス28階の無人物販店舗での実証実験では、同技術が新商品の売上順位を高精度に予測した。
同技術は、目的に応じて適切なユーザーモデルを生成することで、市場調査やABテスト、商品開発といったさまざまなユースケースでの活用が期待できる。
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ProductZine編集部(プロダクトジンヘンシュウブ)
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