双方向の医薬サプライチェーンにアプローチし、全体感を醸成する
さまざまなプロダクトによってユーザーの課題を解決し、データの利活用で業界全体を大きく変革すること。あらゆるシステムや関係者が連携する医療プラットフォームを創出し、新たな社会的価値を生み出すこと。そうした構想実現に向け、今後はミッシングピースとなっているプロダクトの開発、データの利活用の実現、プラットフォームへの統合などが、プロダクトマネージャーのミッションとなる。
現在、カケハシのプロダクトマネージャーは18名を数え、Musubiシリーズの4プロダクト、M&Aにより参画したプロダクト、新規開発中のプロダクトが存在する。それぞれのプロダクトにプロダクトマネージャーとプロダクトマーケティングマネージャー、それを統括するプロダクトリードがおり、複数のプロダクトを束ねる形でHead of Productがいるという組織の構成だ。さらにプラットフォームやデータAIなどの技術寄り領域についてはエンジニア中心の組織となっており、プロダクトマネージャーと密に連携している。
「当社にはプロダクトの仕様を決めるなど、一般的なプロダクトマネージャーの役割も存在します。しかし、もう一段高い視座から、患者さんと薬局・薬剤師、さらに医薬品メーカーや卸という、双方側のステークホルダーの真ん中に立って、業界全体を見渡しながらプロダクトを設計できる。そうした存在になっていただきたいと考えています。医薬品サプライチェーンの両方にアプローチできていることが、カケハシの強みに直結していることは間違いありません」(中川氏)
事実、山本氏も医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」においてプロダクトリードを務めながら、医薬品の二次流通事業を展開する「Pharmarket(ファルマーケット)」についてもマネジメントを担い、医薬品卸や製薬メーカーと連携した医薬品のサプライチェーンにおける需要予測によりジェネリック医薬品の生産・供給管理、抗がん剤や希少疾病薬といった高額医薬品の流通課題の解消という新たなチャレンジにも取り組んでいる。
そのような山本氏をはじめ、カケハシのプロダクトマネージャーには、「本質的な課題やニーズ」を捉える力とともに、複雑なステークホルダーと連携し、調和させていく力が求められる。その背景には、特有の慣習や常識などが根強く残り、規制も多い医療業界ならではの事情があるという。
「なにか壁に突き当たった時に、それがなぜなのか、どのような理由や状況でそうなっているのかを、紐解いて考える必要があります。その背景には業界の規制や慣習的なものが含まれているケースが多々あり、そこが難しいところと言えるでしょう。カケハシのミッションでもある『日本の医療をしなやかにする』には、従来の延長線上にいては実現は難しい。『あるべき世界』を考え、ストーリーとして示しながら、人や物事を動かしていく必要があります。そのためには、さまざまなステークホルダーと折衝し、理解や合意を得るコミュニケーション力が欠かせません」(山本氏)

その一方で、カケハシだからこそ、そうした力を育める環境があるという。その理由として、山本氏は「薬剤師やヘルスケア領域でのキャリアを持つメンバーなど、多彩なステークホルダーが社内にいること」をあげ、「カケハシならではの組織体制が大きい」と語る。社内にユーザーのペルソナを持つ存在がいるからこそ、なかなか表に出にくい事情や課題を詳しく聞くことができ、ためらいなく疑問をぶつけることができる。何気ない会話から斬新なアイデアや構想が生まれることも少なくない。そうしたさまざまな声が聞ける環境下で、山本氏がプロダクトマネージャーの役割として重視しているのが「全体感の醸成」だ。
「プロダクトを創るという日常の観点のみで日々を過ごしてしまうと、視野が狭くなりがちです。そこで少しでも視野を広げ、多彩な知見や価値観に触れてもらうために、プロダクトマネージャーにはできる限り、薬局(本部/現場)、卸/製薬会社、官公庁など各種ステークホルダーと接する機会を設けています。それはエンジニアやデザイナーについても同様で、例えば薬局にも異職種のメンバーで一緒に行ってもらうようにしています。そうすると例えば往復の時間で当該薬局とプロダクトに関する議論が、異職種ででき、それが組織全体の解像度の向上に役立つと思っています」(山本氏)
その上で、プロダクトマネージャーとして特に重視されるのが、多彩な情報を受け入れながらも、咀嚼して整理し、物事を組み立てる力だ。アジャイルで検証しながら解を見つける手法が主流とはいえ、BtoBのプロダクトとしての精度は必要であり、試行錯誤にも一定の確度が求められる。
「自身が培ってきた経験や知識をもとに咀嚼し、調査し、仮説を検証していく。そうした『自分なりの解釈』のプロセスを持てるかどうかが大切だと思います。裏返して言えば、そうしたベースがある人こそ、カケハシのようなユーザーを近くに感じられる環境下で力を最大限に発揮できると思います」(山本氏)
非連続的な事業ポートフォリオで、多様な経験と成長機会を提供
さまざまなステークホルダーと思いを共有し、理想とする世界に向かって着実に一歩一歩積み上げる直線的な成長とともに、非上場のスタートアップとしては珍しく、積極的なM&Aによって非連続的な成長が得られることも、カケハシのユニークな魅力といえるだろう。
2021年4月に、医薬品の二次流通事業「Pharmarket」、2024年には調剤薬局向けのPOSレジ「Plat's」を提供する「コード・アール」、2025年2月には“レセコン”と呼ばれる薬局向け業務システムを開発・提供する「ノアメディカル」が、カケハシグループの一員となった。そうした会社と共同で新たな領域を切り拓く、経営陣の一員となってプロダクト組織の変革を担うなども、今後のプロダクトマネージャーに期待される重要な役割となることは間違いない。
「M&Aに伴う新しい領域への挑戦、経営側として組織改革や新規事業に取り組むなど、カケハシのプロダクトマネージャーにはさまざまな経験と成長の機会があります。正直、簡単ではないと思いますが、それだけに腕が試され、やりがいや成果は大きいものになるでしょう。通常のスタートアップにはない、複雑性と事業難易度を駆け足で体験できる環境は、力のある方にこそトライしていただければと思います」(中川氏)
入社7年目を迎える山本氏も、「大手企業では味わいづらい会社の変化が自身の成長にもつながっている」と断言する。
「自分が持つ経験やスキルを活かして社会に貢献したいと考えたときは医療というドメインに加え、スタートアップの持つスピード感や熱量が、より大きな成果につながると考えました。実際に、面接で中川や薬剤師メンバーと話し、課題感や変革への熱意に驚くとともに、そこに自分の力が具体的に役立つイメージを得ることができました。入社してからもイメージ通り、いや、イメージ以上に会社が成長することで、活躍の場、必要とされる場が広がっていると感じます」(山本氏)
市場インパクトの大きいプロダクトのマネージャーとして活躍するだけでなく、データを活用した新規事業、プラットフォームとしてのシナジー戦略、さらにはM&Aによる非連続領域で、新たなプロダクトをコンセプトレベルから構築することや、経営的視点から拡大成長するプロダクト組織の改革に取り組むなど、プロダクトマネージャーの資質・能力・経験を活かせる可能性が多岐にわたって広がっている。興味のある方は、ぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。