3.2 業界の未来と現在を知る──インプットに仮説を乗せる
業界の動向を常に熟知している状態でいることは、1人目PMの必須スキルです。これは、一時的なスナップショットにとどまらず、常に変化を敏感に感じ動向に気を配っていることを指します。しかし、重要なのは「どれだけ情報を集めたか」ではなく、“仮説を持った上で情報を読み解けているか”です。
- 海外で起きている流れは日本の市場でも適用できるのか?
- なぜ競合はそのアクションを選んでいるのか? 背景の戦略は何か
- レッドオーシャンな市場に後発で参入すべきか? そこで勝ち切れるMOATはあるか
こうした問いを持たずにリサーチをすると、表層的な情報だけがたまり、戦略の材料として活用することができません。
情報収集はあくまで“仮説検証の材料”。漠然と事実をとらえるのではなく、その奥にあるインサイトや狙いを解き明かす視点で思考しながら摂取することが重要です。PMには、仮説→インプット→再解釈というループを回すことで、業界を広がりとドメインの深さのみならず、過去~未来の時系列を含めて立体的にとらえる力を養っていくことが必要です。
3.3 会社の未来と現在地を知る──答えは対話の中にある
業界全体の未来と現在が見えてきたら、次は自社の未来と現在地を把握するステップです。
このプロセスでは、とにかく徹底的に「対話すること」が必要になります。特に、経営層(社長を中心に)と話し続けることが最も重要です。1人目PMとして入社したばかりの頃は、毎日でも社長と話す時間を作ってもよいでしょう。
しかし、多くのケースで忙しさや遠慮からこのステップがないがしろにされるのも事実です。だからこそ双方が意図して時間を作ることを進めてください。
社長のビジョンとシンクロすることが戦略の出発点になるため、「この会社はどこを目指しているのか?」という問いに対して、疑問を完全に解消するまで対話を続けるべきです。時には、合宿や局所的な1on1を毎日やることも効果的です。
では、具体的にはどんなアプローチが良いのか、列挙していきます。
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会社の未来を知るために
- 社長や経営陣に、ビジョンや戦略の意図を深掘りする
- 事業計画や中期経営計画を確認する
- 経営層がどんな言葉を使って未来を語るのかを理解する
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会社の現在地を知るために
- 社内の各チーム(営業・開発・CS)と対話する
- 取引先や顧客から直接フィードバックを得る
- できる限り一次情報に触れ、データを集める
特に、現在地を知るためには「一次情報」にこだわることが重要です。報告書や二次情報に頼るだけでなく、現場で起こっていることを自分の目で見て、手で触れ、直接対話することにこだわりましょう。
特に顧客との直接的な対話は、担当営業やCSから時には嫌がられることもあるでしょう。しかし、このステップを飛ばしてしまうと仲介者を介したバイアスによって事実が曲解して伝わり、その誤った情報を元に意思決定をしてしまいかねません。その結果、経営に関わる根本的な方針であるプロダクト戦略を間違えてしまうことの方が、おおごとではないでしょうか?