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ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

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1人目プロダクトマネージャーの教科書 ~成長の立役者になるには~

1人目PMがチームで成果を出すために

1人目プロダクトマネージャーの教科書 ~成長の立役者になるには~ 第4回

4.2 まずは「理解すること」から始める

 とはいえ、「いきなり成果を出すのは難しい」と感じるのも当然です。PMという職種は、他者の協力がなければ何も成し得ません。「成果を残すには協力が必要だが、協力を得られないと成果を残せない」という鶏と卵問題が発生します。

 特に1人目PMは、組織の中でまだ確固たるポジションを確立していないため、「何をどう動けばいいのか?」というあいまいさの中でスタートすることになります。

 そこで最初にやるべきは、「チームを理解すること」に全リソースを割くことです。行動に落とすならば、とにかくチームに張り付くことです。

  • 現場を観察し、何が起きているのかを理解する
  • 質問を重ね、チームの課題やニーズを引き出す
  • とにかく「理解しようとする姿勢」を見せる

 具体的には以下のアクションです。

  • エンジニアのSlackやNotionを日々観察する
  • 日報やレトロスペクティブを読み込む
  • 実装中のコードやデザインに目を通す
  • 雑談にも積極的に参加し、感情の機微を感じ取る
  • チームメンバーに「どこがやりづらい?」と素直に聞いてみる

 このように、相手を理解しようとする姿勢は、それ自体が信頼への第一歩になります。心理学的にも、「自分に関心を持ってくれる相手には心を開きやすくなる」という「好意の返報性」があるとされています(Robert B. Cialdini『影響力の武器』より)。

 この段階では「何かを変えよう」とするのではなく、まずは理解することに徹するのがポイントです。このプロセスを丁寧に行うことで、チームは「このPMは私たちのことをちゃんと考えてくれている」と感じるようになり、協力的な姿勢を取るようになることでしょう。

4.3 小さな成果を積み上げる

 理解が進んだら、次は「自分の力で解決できる小さな課題を整理し、解決すること」から着手していきましょう。観察と質問を通じて得た一次情報を基に、すぐに取り組める課題を見つけ、それを解決していくのです。

 PMという職種は「プロダクト全体を変える」イメージを持たれがちですが、実際はチームの働き方を少し楽にする「連続的な改善(ボトムアップ)」と、事業レベルでのイノベーションを起こす「非連続なインパクト(トップダウン)」があります。

 チームからの信頼を得る段階では、連続的な改善を進めることが目にみえる成果であり、得策です。私自身、目先の課題を無視して中長期的な課題のみを突き進めてしまい、チームからの信頼を得られず暴君となるPMを多く見てきました。これらの連続的な改善と非連続なインパクトは双方必要であり、連続的な改善で信頼を得ることで初めて非連続なインパクトに挑戦できるというステップがあると私は考えます。

 例えば、

  • 毎回あいまいだった仕様決定のフォーマットを整える
  • タスク管理ツールに「目的」「背景」「完了条件」を追加する
  • Slackのルールや通知をチューニングしてノイズを減らす
  • 社内のよくある質問を1ページにまとめて共有する

 こうした目先の小さな課題の改善は地味ですが、効果はボディーブローのように効いてきます。また複利の効果で早く改善したほうがその先の未来の活動に大きな影響が積み上がります。なぜなら、「仕事がしやすくなった」「チームのストレスが減った」といった肌感覚の変化は、メンバーの態度を確実に変えるからです。

 「この人、ちゃんと見てくれている」「いると仕事がスムーズになる」──そう思ってもらえるようになれば、チームの協力も得やすくなります。こうして、「お客さん扱い」から「仲間」として期待される存在に変わっていくのです。

 この状態に早くいけないとオンボーディング期間という認識が長くもたれ、なかなか成果を出す準備ができないまま3か月、半年と経過してしまいます。

次のページ
4.4 仲間を増やすことで初速を上げる

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この記事の著者

蜂須賀 大貴(ハチスカ ヒロキ)

Newbee株式会社 代表 / プロダクトマネージャー IMAGICA Lab.でエンジニアとしてキャリアを開始後、複数企業でプロダクトマネジメントおよび開発組織の立ち上げに従事。サイカではHead of Productとしてプロダクト戦略をリードし、事業成長に貢献。PIVOTではプロダクトマ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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