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Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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「プロダクト企画フェーズにおけるAI活用の将来像」座談会レポート

AI駆動企画の「現在地」【前編】──企画5フェーズはどう変わった? Honda・クリエーションラインが議論

「プロダクト企画フェーズにおけるAI活用の将来像」座談会レポート 前編

 生成AIは、プロダクトの「企画」プロセスをどう変えるのか? AI駆動開発を推進するクリエーションラインが、まさにその「プロダクト企画フェーズにおけるAI活用の将来像」をテーマに座談会を実施した。 本記事【前編】では、その模様をレポート。AI登場「前夜」の企画プロセスと、現場におけるAI活用の「現在地」を徹底比較する。

はじめに

 本座談会を主催したクリエーションライン株式会社のCTOを務める荒井康宏氏は、ChatGPTの登場直後から「AI駆動開発」という言葉を提唱し、その推進を行ってきた。単なるコーディング支援に留まらず、プロダクト開発のライフサイクル全体をAIによって高速化・最適化することを目指している。

AI駆動開発の概念図
AI駆動開発の概念図

 今回、そのクリエーションライン主催で、プロダクト企画の「現場」で活躍する2名をゲストに迎えて開催した。

 1人目は、本田技研工業株式会社(以降、Honda)の山田大輝氏(SDVプロダクト企画部 デジタルラボ プロダクトマネージャー)。UXデザイナーであり、プロダクトマネージャー(PM)でもある。同氏がPMとして推進してきた「RoadVoice(ロードボイス)」(現在はサービス終了)というプロダクトは、まさに2~3年前、本記事で振り返る「Before AI」の時代に企画がスタートしたという。

 2人目は、事業開発コンサルタントの石亀直樹氏。大企業向けの新規事業コンサルタントに加えて、現在はスタートアップで事業開発を統括する。大企業とスタートアップ、両方の事業開発の現場を知る人物だ。

 クリエーションラインからは、CTOの荒井康宏氏が登壇。技術の最前線から、AIが開発プロセスにどのような影響を与えるかを語る。モデレーターは、同社のCAO(Chief Adventure Officer)の根岸慶氏が務めた。

 この3名が、プロダクト企画の「過去」「現在」「未来」をどのように見ているのか。まずは、AI登場以前の「オーソドックスな」企画プロセスから振り返っていく。

座談会に参加したメンバー(クリエーションライン 根岸慶氏、Honda 山田大輝氏、事業開発コンサルタント 石亀直樹氏、クリエーションライン 荒井康宏氏)
座談会に参加したメンバー(クリエーションライン 根岸慶氏、Honda 山田大輝氏、事業開発コンサルタント 石亀直樹氏、クリエーションライン 荒井康宏氏)

1. AI登場「前夜」の企画5フェーズ(Before AI)

 議論の土台として、まずは新規事業開発のプロセスが5つのフェーズで整理された。

  1. 課題探索(CPF: Customer Problem Fit)
  2. ソリューション仮説(PSF: Problem Solution Fit)
  3. MVP構築(SPF: Solution Product Fit)
  4. 市場投入(PMF: Product Market Fit)
  5. スケール(GTM: Go To Market)
プロダクト企画の「5段階フレームワーク」
プロダクト企画の「5段階フレームワーク」

 AIが本格的に登場する2~3年前、これらの各フェーズはどのように進められていたのだろうか。

課題探索(CPF):「思い」と「レポート」の時代

 最初の「課題探索」は、どこから始まるのか。石亀氏は、企業の事業領域やマーケット状況から入るパターンと、社会課題からアプローチするパターンがあると語る。

 一方、Hondaの山田氏は、自身の経験をこう振り返る。

 「Hondaはボトムアップの文化があって、自分の思いとかこういうことをやりたい、人々はこういうものを作ったら喜ぶんじゃないか、というところから始まるんです」

 こうした「思い」を検証するためのマーケット調査は、地道な作業だった。「一生懸命Googleで検索してましたね。矢野経済研究所さんとかのレポートなどは実際に隅々まで読み込む必要がありました」 と石亀氏が語るように、AIがない時代は公開されているレポートを読み解くのが主流だった。

ソリューション仮説(PSF):手書きとデザインツール

 課題が見えてくると、次は「ソリューション仮説」のフェーズに入る。メンバーで集まり、付箋やホワイトボードツールを使ってアイデアを発散させる「アイディエーション」が行われる。

 ソリューション仮説には、「お客さんに刺さるか」だけでなく、「ビジネスモデルとして成り立つか」という視点も含まれる。

 検証のために、当時はアイデアを具体化するモックが必要だった。

 「(モックは)手書きかパワーポイントで行っていることが多かった気がします。当時は(現在はメンテナンスモードとなっている)Adobe XDなんかを使いながら画面のイメージを作っていました」

 ここでモデレーターの根岸氏は、UXデザインにおける重要な視点を指摘する。「UIデザインをお化粧しすぎると、ユーザーがUIにフォーカスしてしまい、本質的な価値(そもそも価値があるか)へのフィードバックが得にくくなる。あえて手書きの方が変なところに注目されなくて済む側面もある」という。

MVP構築(SPF):「将来戦略」でチームの一体感を作る

 ソリューションの方向性が固まると、「MVP(Minimum Viable Product)構築」のフェーズに進む。プロダクトバックログを作成し、MVPとしてどの範囲を実装するかの優先順位を決めていく。

 石亀氏は、このフェーズが「エンジニアリングの人たちと一緒に作っていくフェーズ」 になると指摘し、その難しさを次のように語る。

 「MVPだけれども、将来的な戦略とセットでお伝えしていかないとダメだったりします。(中略)そうすることで、エンジニアの皆さんとチームとしてのゴールが共有できて一体感も作れますし、システム面でもプロダクト将来像を踏まえた設計を進めてもらえます」

市場投入(PMF)とスケール(GTM):茨の道と組織への引き渡し

 MVPが完成すると、いよいよ「市場投入」だ。山田氏はこのフェーズを「プロダクトマーケットフィットするまでは茨の道」 と表現する。リリースしてすぐに使ってもらえるとは限らず、地道に改善を繰り返す必要があるからだ。

 PMFを達成し、グロースの道筋が見えると「スケール」フェーズに入る。ここからはマーケティングやA/Bテストといった施策に加え、営業活動も本格化する。石亀氏は「グロースのフェーズ前後からセールスチームが入ってくる印象です」 と語り、プロジェクトメンバー主体だった活動が、一般的な組織に引き継がれていく段階だと説明した。

現状のプロセス(Before AI)の全体像
現状のプロセス(Before AI)の全体像

次のページ
2. AI活用の「現在地」

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

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