プロダクト作りにおいて、UXリサーチがもたらすメリットとは
最初のセッションは、メルペイのUXリサーチャーである草野氏と松薗氏による「ユーザーとともに価値あるサービスをつくり続けられるプロダクトマネジメント - プロダクト作りのためのUXリサーチの活かし方」。メルペイは、スマホ決済サービスを提供する企業で、フリマアプリであるメルカリの売上金と連携した支払い機能などを提供し、およそ1000万人のユーザーが利用している。
草野氏はまずUXについて「サービスを使う前、使っている時、使った後に起きる人の知覚や反応のこと」という定義を示した。プロダクトや商品を開発する際、その昔はシンプルに機能だけを提供すればよい時代があった。やがて性能が求められるようになり、プロダクトが複雑化してくると、使いやすさが議論されるようになった。そして、単なる使いやすさだけでなく、満足感なども加味したUXの品質が重視されるように変化してきた。最近では、使う人だけでなく、社会や地球環境にも配慮することが求められている。
メルペイで優れたUXを実現するために、草野氏や松薗氏が行っているUXリサーチとは、「さまざまなユーザー体験について調べて明らかにすること」だという。草野氏は「時代の変化が激しくなり、プロダクト自体も複雑化してユーザーが使いきれないほどの機能やサービスがあふれています。一方でユーザーの多様性も高まっており、たとえば『30代の女性』といった属性だけでは実際のライフスタイルを知ることは難しくなっています。特に、お金に対する考え方や使い方は人によって多様で、想像するのが難しいものです。そうなると『調べるしかない』ので、UXリサーチの必要性は高まってきました。UXリサーチを活用してユーザーから学びを得ることで大きな失敗を避けられるのです」と背景を語った。
ソフトウェア開発においては、リリースしてから大きな失敗に気づいても改修のためのコストがかかるし、ユーザーの離脱も避けられない。UXリサーチは顧客によりより価値を提供するための状況を作るために重要なのだ。ほかにも、データを活用することでよりよい意思決定をすることができる、さらにチームの中での視点を合わせるなどの組織づくりにもよい作用をもたらす。
メルペイのUXリサーチでは、「ユーザーインタビュー」「コンセプトテスト」「ユーザビリティテスト」「アンケート」などを実施しており、必要に応じてさまざまな調査ができる体制が整っている。ユーザービリティテストは、UIのプロトタイプを使い実際に使ってもらって評価と改善を繰り返すもの。草野氏はメルペイにeKYC(電子的な本人確認)機能を導入する際は、何十人ものユーザーの協力を得てよいものができたと述べた(詳しくは以下のnote記事に記されている)。