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成長企業の事例から学ぶプロダクトマネジメント

「note」がプロダクトマネジメントチームを立ち上げた理由――PMの石坂優太氏に背景と組織作りのポイントを聞く


 サービス開始から7年を経て、現在も急速な成長を続ける「note」。noteでは今年から新たに、プロダクトマネジメント制の導入を行った。同社がプロダクトマネジメントを必要とした背景や、導入において直面した課題について、チームの立ち上げから運営までを主導しているプロダクトマネージャーの石坂優太氏に話を聞いた。

note株式会社 PMリーダー 石坂優太氏
note株式会社 PMリーダー 石坂優太氏

「note」に、なぜ組織的なプロダクトマネジメントが必要となったのか

 2014年にサービスを開始し、文章だけでなく、グラフィック、音楽、動画など、さまざまなジャンルのクリエイターが集うプラットフォームとして成長を続けている「note(ノート)」。2020年には、月間アクティブユーザー数が6300万を越え、社名も前身の「株式会社ピースオブケイク」から、サービス名と同じ「note」へ変更した。「note」を中核とした新たな事業展開にも注目が集まっている。

 サービス開始以来、「note」というプロダクトの方向性は、創業者でありCEOの加藤貞顕氏と、2017年にCXO(Chief Experience Officer)としてジョインした深津貴之(fladdict)氏が中心となって作り上げてきたが、サービス開始から7年を経て、noteは「プロダクトマネジメントチーム」の構築に踏み切った。

 「note」の開発に、組織的なプロダクトマネジメントが必要となった背景とは何か。また、同社でプロダクトマネジメントチームを作り上げていく上での課題にはどのようなものがあったのか。入社以来、エンジニアとしてnoteの開発に携わり、現在はプロダクトマネージャー(PM)として、組織作りに取り組んでいる石坂優太氏に話を聞いた。

「課題解決」を指向しプロダクトマネジメントの必要性を訴求

――石坂さんの経歴や、今回プロダクトマネジメントチームを率いることになったきっかけを教えてください。

石坂:新卒では、メーカーの「パイオニア」にソフトウェアエンジニアとして入り、7年ほど、主にカーナビゲーションシステムの開発やプロジェクトマネジメントをやりました。その後、求人サービスの「ビズリーチ」に転職し、Web系を手がけるようになります。同社には2年いたのですが、最初の1年はエンジニア、後半の1年は、それに加えてPM的な仕事にも携わっていました。

 その後、リテールテックのスタートアップにエンジニアとして入り、そこでも2年ほど働きました。10人規模のスタートアップだったのですが、最初はやはり開発エンジニアとして入社し、しばらくしてPM的な役割も担うようになりました。エンジニアリングだけでなく、マーケティング、カスタマーサクセスチームの立ち上げなど、いろいろな経験をしました。

 noteに入ったのは2年ほど前です。noteも、エンジニアとして入ったのですが、2021年の春ごろからプロダクトマネジメントチームの立ち上げをはじめ、夏以降は、ほぼ専任のPMとして活動しています。

――プロダクトマネジメントチームの立ち上げにあたって、エンジニアだった石坂さんがPMに起用された理由は何だったのでしょうか。

石坂:まず、これまでのキャリアの中で、何度かプロダクトマネジメントに携わる機会があり、note社内では経験値が高いほうだったというのがあります。

 個人的にも、noteには組織的なプロダクトマネジメントが必要になってきていると感じていました。エンジニアには、技術を突き詰めたいタイプと、課題解決に関心のあるタイプがいると思うのですが、自分は後者だと思っていて、その点で特に「エンジニア」や「PM」というロールそのものに強いこだわりがあったわけではありません。

 社内でも、経営メンバーやCTOがプロダクトマネジメントを行う組織の必要性を感じており、私からの働きかけなどもあって、全員の合意のもと、PMチームが発足した形になります。

「自律分散的な意思決定」で組織とプロダクトの成長を加速

――今回、プロダクトマネジメントの観点で新しい組織を作る必要があった背景について教えてください。

石坂:おかげさまで、noteというプロダクト自体は好調に成長を続けていて、開発や運営に関わるメンバーも急増しています。それに伴って、これまでnoteに関わる最終的な意思決定を一手に担っていた、CEOの加藤やCXOの深津の負担が増し続けているというのが、課題になっていました。これまで、noteでは意思決定のプロセス自体を変えることは、意図的にやっていなかったのですね。開発リソースが数倍に増えても、最終的に意思決定ができる人の数が増えなければ、そこが将来的にボトルネックとなることは明白です。

 今後もプロダクトと企業が成長していく上で、意思決定を自律分散的にし、会社全体としてのパフォーマンスとアウトカムを高めていける体制づくりは避けられない状況でした。そのために、プロダクトマネジメント制を導入し、PMを中心にして意思決定を並列化する必要がありました。

――チームづくりを始められてから、半年ほどになると思いますが、現状のPMは社内で登用されているのでしょうか。それとも、外部から採用されているケースが多いのでしょうか。

石坂:当初、PMについては採用を中心に集める案もあったのですが、感覚として「それは難しそうだな」と感じており、実際そうでした。PMとしてのスキル評価というのは、面接で簡単にできるものではありません。また、noteには独特の社内文化があって、チームの立ち上げ当初は、そこに外部から入ってきても、すぐにPMとしてスムーズに仕事を進めるのは難しいと思われました。そのため、もし社内から登用できるのであれば、そのほうがうまくいく可能性は高いだろうと判断しました。

 そうした経緯で、最初のPM陣については主に社内のメンバーで構成したのですが、その後、PMに伴走ができる人が出てきたことや、人事も含めてオンボーディングの体制ができてきたこともあり、現状のPMの半分ほどは、外部からの採用で入ってきてもらった人になっています。

 現在、PMチームには全部で7名が在席しており、うち5名で構成されたグロースサイクルチームのリーダーを私が務めています。残りの2名はプラットフォームチームとして、noteの安心安全など、守りの面を中心に担当しています。

「チームづくり」はPMの重要な役割の一つ

――noteでは、PMをどのように定義していますか。

石坂:役割としては「プロダクトを作ること」と「プロダクトチームを作ること」の大きく2つです。

 特に後者について、noteはこれまで、組織のトップに意思決定を寄せていたこともあり、「現場での意思決定力」というのが、若干育ちにくい環境でした。PMのミッションとしては、チームが自律的に意思決定を行うためのノウハウを、現場に蓄積していくことを掲げています。

 意思決定の基準となる、さまざまな情報の「可視化」も仕事の一つです。また、noteはこれまでの経緯から、開発が主導的な立場でプロダクトを作り、他のチームと一緒にプロジェクトを進めていくというケースが多いのですが、現場での意思決定にあたって、開発だけでなく、ディレクター、マーケティング、経営といった、社内のさまざまなロールを持ったチームの間をうまくつなぎ、コンセンサスを取るというのもPMの仕事になります。

――PMの果たす役割は、会社によっても変わってくると思いますが、現状でnoteのPMに、特に必要とされていることは何でしょうか。

石坂:10人のスタートアップなどでは、それこそ「人がいない」ので、PMとはいえ、必要なことは何でもやらなければいけないのですが、組織の規模が大きくなるほど、役割はある程度分化していきます。

 現状、noteは社員が146名(アルバイトを含めると165名)といった規模の組織ですが、今、その中でPMとして動く上では、エンジニアリングについての知識が、かなり重要だと考えています。社内文化的にも、エンジニアと技術面での議論ができることが、意思決定のスピードを上げるための大きな要素になると思います。

次のページ
「グロースモデル」に沿って経験を積みレベルアップを目指す

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この記事の著者

柴田 克己(シバタ カツミ)

フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。 現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いてい...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

メディア編集部 メディア1(CodeZine/EdTechZine/ProductZine)編集統括 兼 EdTechZine/ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開...

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