編集部注
記事掲載時点(11月11日)では、当該セッションについては未公開だが、YouTubeのProduct Leadersのチャンネルで、Product Leaders 2022のセッション録画が順次公開されている。
異なる分野での数々の経験が、CPOとしてのキャリアに活かされている
ムトゥクマール氏は、McKinsey & CompanyやTwitterを経て、Oculusでは製品担当ディレクターとして、Oculus Quest、Oculus Rift、Oculus Go、Samsung GearVRの主要ソフトウェアを支えるチームを指揮した。前職のRobinhoodでは、プロダクトチームを10倍に拡大し、2021年の株式公開に貢献した経験を持つ。
ムトゥクマール氏の両親はインドからアメリカに移住した科学者。大学時代は両親の希望もあって医者を目指していたが、数学と生物学の道に進む。そして人間のシステムについても興味を持ち、卒業後はコンサルティングの道に進み、メディア企業や教育機関などとの仕事に携わった。
そのうち、南アフリカ共和国政府の基礎教育省と働く機会を得て、ソフトウェア開発に携わることとなる。幼稚園から高校までの教育用ソフトウェアを開発し、エンジニア、デザイナー、研究者とともに、教育状況の改善に貢献した。
「南アフリカに1年近く滞在し、その過程でプロダクトマネジメントを知り、米国に戻り、この分野でのキャリアをスタートさせたのです」(ムトゥクマール氏)
ムトゥクマール氏は、自らを好奇心旺盛であるとし、その後のTwitter、Oculus、Robinhoodといったこれまでのいろいろな経験から、コミュニケーション、チームリーディング、顧客に対する共感、国際感覚、世界観などを培ってきたと語る。そしてプロダクトマネージャーのユニークな点は、専門技能でなく責務を負うことで、そのためにこれまでの経験が役立っていると語る。
「デザイナーは優れた体験を生み出す特殊な技術を持っています。エンジニアは、コードによって構築する技術を持っています。研究者もデータサイエンティストもそれぞれの専門技能があります。しかし、プロダクトマネージャーの仕事は、それらの人たちをまとめることです。過去にさまざまな経験をしていることは、非常に良いことです。私は、異なる環境に身を置き、その経験を生かすことができる優位性を持っていると感じています。直線的な道のりではありませんでしたが、得るものは大きかったです」(ムトゥクマール氏)
2021年12月に日本CPO協会が開催した「PRODUCT LEADERS SALON 2021」では、Notionのエンジニアリング責任者のMichael Manapat氏が登壇。その際にはNotionにはCPOが存在しないことが明らかにされた。今回ムトゥクマール氏のCPO就任によって、Notionは次の進化への歩みを進めたこととなるのだろうか。
ムトゥクマール氏自身も就任にあたって「なぜここまでやってきたのにCPOが必要なのか?」と疑問を持ったという。ソフトウェアプロダクトはまずエンジニアが必要で、その後デザイナーを採用していく。プロダクトマネージャーの仕事は、すべてを見渡し、これらの人材を最大限に活かす責任者の役割を果たすことだ。Notionはすでにプロダクトマネジメントを成功させた組織であり、エンジニアやデザイナーはプロダクト作りができ、マーケターは優先順位やストーリーの伝え方にたけている。
ムトゥクマール氏がCPOとなる意義とは、それぞれの専門家が担っていた責任を引き受け、プロダクトの質や改善スピード、信頼性、コミュニケーション、モチベーションの向上に役立てることにある。
「QAプロセスの管理であれ、社内向けの情報作成であれ、データの分析であれ、エンジニアやデザイナーが得意とすることに集中できるよう、業務を引き受ける必要があります。自分たちが得意とすることに集中し、他の人たちも効率的に動けるようになります」(ムトゥクマール氏)
さらに、自分たちを評価する方法には、生産性やほかの部署が喜んでいるか、顧客がプロダクトの品質向上スピードを感じているか、そして全体的な意思統一とモチベーションを保っているかを目安にできるとし、Notionは今後の成長に向けて非常に良い状態にあるとした。