会社の新たなビジネスモデルを生み出す、AIを搭載した営業支援システム
損保業界初(当時)のAIを搭載した代理店営業支援システムとして、三井住友海上火災保険が国内で3万店以上のネットワークがある保険代理店にむけて2020年2月にリリースした「MS1 Brain(エムエスワン・ブレイン)」。講演では、「MS1 Brain」の開発チームをリードする飯間昭夫氏が発表した。
飯間氏が所属するビジネスデザイン部では、役割として「お客さまへの提供価値の変革」「同社のイノベーション企業への変革」の2つがあり、特に飯間氏は、後者において会社のビジネスモデルを変える仕組みを作るため、「MS1 Brain」を開発している。
飯間氏はもともと営業畑で、2018年に新設されたデジタル戦略部に異動するまで、どちらかというとデジタルから遠いところにいた人間だという。営業の第一線を知る、つまり代理店(ユーザー)の気持ちや実際のビジネスを知る人材としてプロジェクトリーダーを担当することになり、2020年2月に「MS1 Brain」をリリース。
その後、コロナ禍を経て2021~2023年まで、出資先である保険の米スタートアップ「Hippo」に出向し、最先端のデータ活用やUXを学んだ後、「MS1 Brain」の専門チームの立ち上げに伴い帰国した。現在は、「AI インフィニティラボ」という社内有志によるAIの探索活動も行っている。
「MS1 Brain」は、代理店向けの基幹業務システム「代理店MS1」の上に構築された、AIを搭載した代理店営業支援システムで、簡単に言うと、CRM(顧客管理システム)とSFA(営業支援システム)を合わせたものとなっている。主な機能としては、Webを介した面談・手続きといった「リモート接続」、お客さまごとに適した特約や補償を紹介する「パーソナライズド動画」、ハイパフォーマーな営業のノウハウを提供する「ネクストベストアクション(NBA)」、ダッシュボードで構築されている経営者向け機能「経営者メニュー」などを備えている。
コア機能は、AIを使った「ニーズ予測分析」で、お客さまの保険加入ニーズを予測し、リード(見込み客)として代理店に知らせるものとなっている。NECが国内販売を手がけるデータ分析プラットフォームの「dotData」を利用して実装されており、代理店が所有するお客さま情報、保険会社が所有する契約・事故データ、企業情報などの外部データを掛け合わせる形で実現している。
「MS1 Brain」の導入により、システムのユーザーである代理店は、お客さまのニーズを踏まえた、より適切な提案活動ができるようになり、優先順位付けや精度の向上により、成約率が3倍になったという。