1. ノーススターメトリックとは
ノーススターメトリック/North Star Metric(以下、NSM)とは、ビジネスの成長を目的とした指標設計のフレームワークで、Meta(Facebook)、Uber、Dropboxなどの著名な企業で積極的に採用されています。
近年、その有効性が再認識され、さらに多くの企業で採用され始めたことを契機に、筆者が所属しユーザー行動分析プラットフォームを提供しているAmplitudeでも積極的に啓蒙活動を行っており、NSM教本『ノーススター・プレイブック』を展開したり、世界中でワークショップを開催し、1000以上のサービスでNSM設計を支援したりしています。
また、Amplitude自体もNSMを採用し、自社サービス運用の向上に活用しています。ここでは、Amplitudeが培ったノウハウと共に、NSMの設計手法について解説していきます。
2. 今までの指標設計
一般的には指標設計をする際、まずKGI(重要目標達成指標)を設定します。そのうえで、KGIを支えるKPI(重要事業評価指標)を設計し、KGI/KPIツリーを作成する流れとなります。
多くの企業において、KGIは「売上」になるかと思います。この場合、KPIはKGIである「売上」を因数分解し、「課金ユーザー数」「ARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均課金額)」とし、そこから下にひもづける形で「購入率」「アクティブユーザー率」などのより細分化されたKPIを設定していき、以下のようなKGI/KPIツリーを構成します。
しかし、このKPI設計には売上を大きく左右する「ユーザーのプロダクト体験」が加味されていません。「ユーザーのプロダクト体験」の評価が考慮されていないと、プロダクトの成長に適した設計とは言えないため、 従来のKGI/KPIツリーは事業成長の指標としては不十分となります。
そこで、「ユーザーのプロダクト体験」を加味したKGI/KPI設定がNSMです。NSMは「ユーザーのプロダクト体験」 を通じて、売上といったKGIを支える指標となり、この場合KPIはNSMを支える指標として設計されます。このNSMの位置付けをまとめると、以下のようになるでしょう。