1. 定着ユーザーの特徴を把握し、ユーザー数を劇的に増加
突然ですが、「Burbn」というアプリをご存じでしょうか。
「Burbn」は2010年10月頃にリリースされた、友人にユーザー自身の位置情報を容易に共有できる、SNSと位置情報機能(GPS)を組み合わせたようなモバイルアプリです。リリース当時、スマートフォンにGPSが標準的に搭載され始めたタイミングと重なったことで特に注目を浴び、新規ユーザーを順調に獲得、50万ドルの資金調達に成功しました。
サービス開始当初は順調な滑り出しだったBurbnですが、その後しばらくユーザー数が停滞します。新規ユーザーの多くは数回の利用で止めてしまい、継続的に利用するユーザーがあまり増えない状態で、「ユーザーの定着化」が大きな課題となっていました。この課題を解決するため、Burbnでは以下の点に着目しました。
- 定着ユーザーは、どのような機能を頻繁に利用しているのか
そこで、定着ユーザーが頻繁に利用している機能を詳しく分析したところ、「写真共有機能」が挙がりました。多くの定着ユーザーが、自身の位置情報をシェアする際、一緒に写真を投稿していたのです。
これらの結果をもとに、Burbnはプロダクトの方向転換を行い、「写真の共有」をサービスの中心に位置付けて、ユーザーがより容易に写真をアップロードしたり、写真にフィルターをつけたりできる機能を追加していきました。
「写真の共有」を軸に据えたバージョンに刷新されたアプリは、またたく間に評判になり、2か月後には100万ダウンロード、1年以内に1000万ダウンロードを達成しました。
現在、このBurbnは「Instagram」に名前を変えて、世界で最も利用されているソーシャルメディアサービスの一つとなっています。
2. 定着ユーザーのコホート作成
すでにサービスを利用している定着ユーザーの行動を把握することで、それまで思いもつかなかったような自社プロダクトの魅力を発見できることを、Burbnの事例から読み取れます。では、そのポイントとなる「定着ユーザーの行動」は、どのように分析したらいいのでしょうか。ここからは前回の「プロダクト時代の新たな事業成長モデル『Product-Led Growth』入門 第3回」でご紹介した「クリティカルイベント」や「プロダクト利用インターバル」というキーワードを踏まえつつ、ある「音楽配信サービス」を例に、定着ユーザーの特徴を求める方法を解説します。
今回、定着ユーザーの特徴を求めるための前提条件として、ユーザーがプロダクトの価値を享受するアクションポイント、すなわちクリティカルイベントは「楽曲を再生」、クリティカルイベント同士の一般的な間隔であるプロダクト利用インターバルは「7日間」とします。
クリティカルイベント | 楽曲を再生 |
---|---|
プロダクト利用インターバル | 7日間 |
この音楽配信サービスの例では、以下の図で示しているように「楽曲を再生」のイベントを発火したユーザーが、7日以内に再度「楽曲を再生」のイベントを発火することを条件とし、この規則に沿って定着ユーザーのコホートを作成しました。
条件に合致したユーザーの推移を調べたところ、以下の図のように、ユーザー全体の推移(青)と定着ユーザーの推移(赤)が明らかになりました。この結果より、一定数の定着ユーザーが存在し、その数も着実に増え続けていることが読み取れます。