責任と資金面での不安定さはデメリット? 回避する方策とは?
2つ目の質問、「一エンジニアとして、大手企業とスタートアップのメリットとデメリットについて」という問いについては、小原氏は「スタートアップは、人数が少ないゆえに良くも悪くも自分の意思決定で物事が動かせること」と述べ、「それが面白さでもあるが、同時に組織に対する責任も大きくなる。自分が多少ミスをしても大手企業なら影響は小さいが、スタートアップでは致命傷になる可能性もある。メリットでもあり、デメリットでもある」と語った。
なお、ファイナンス部分についてはスタートアップは不安定なことも多いが、ブリングアウトの場合、ジャフコグループおよび東大IPCからプレシリーズA(投資家目線での事業段階の一つ。プロダクトの価値を確かめる段階といわれる)の資金調達をしており順調だという。しかし、創業期の残キャッシュは死活問題である。サービスを立ち上げようにも開発時期は営業活動もできず、業務委託などで資金繰りをする必要がある。小原氏は「自分たちは初めからフルコミットのメンバーが多かった。できることは広がったが、資本・売上・事業が何もない立ち上げ時点で月500万円程度のキャッシュアウトがあることで資金繰りに苦労した」と振り返り、「それゆえ、サービスが決まるまでは企業に所属しつつ、資金的なストレスなく副業として準備するのも手ではないか」と語った。
川崎氏は、「自分は研究開発メインで、ファイナンス部分に関しては疎かったため、当初は妻の協力を得て起業した。また、『VRゴルフトレーニングシステム』を開発後の販売ノウハウを持っていなかったため、商社出身の元同期が経営する営業力の強い会社と合併して現在の形となった」と説明。「自分が持っていない能力を持つ仲間や会社と組むことで、組織としても強くなれる」と語った。
そうした2人の話を受け、小澤氏は「起業のあり方はさまざまだが、国や自治体の創業融資や助成金などもあり、エクイティ(株式など返済期限なし)やデット(銀行借入など返済期限あり)といった資金調達以外にも、アクセラレーションプログラムなどのリソース支援も多様にそろっており、支援を受けられる。ぜひ、そうしたものを駆使して、リスクを軽減しながらスタートアップを運営してほしい」と語った。
そして最後に、「スタートアップに興味がある人に向けて、どんな人が向いているのか、どんな人と一緒に仕事をしていきたいかというメッセージを」というリクエストに応じ、小原氏は「少ない人数で運営しているので、やはり専門性の高い人は理想的。しかし、一番大切にしたいのは“いいヤツ”と働くこと」と語った。仕事はとてもタフでつらいことも多い。チャットなどでカドが立つこともあるが、できるだけ気持ちよく働くためにも人柄は大切というわけだ。川崎氏は、「XR系の会社としてXRに興味や可能性を感じている人。XRで社会を変えていきたいと考えている人と仕事をしたい」と語った。
小澤氏は「テック系スタートアップが盛り上がっていると感じてもらえたと思う。研究開発など難しそうに感じた方も、転職や副業について知りたいという方もいると思うが、ぜひアクセスしてほしい」と語り、テック系ベンチャーおよびベンチャーシーズとの求人マッチングプラットフォーム「DEEP TECH DIVE」を紹介してセッションの結びとした。