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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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ProductZine Day 2024 Summer

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元大手企業エンジニアが東大関連スタートアップの創業CTOへ! キャリア・事業・社会課題解決のリアルなここだけの話

【9-E-3】元大手企業エンジニアが東大関連スタートアップの創業CTOへ!キャリア・事業・社会課題解決のリアルなここだけの話

 東京大学から世界に向けたイノベーション拡大をミッションとする東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)の投資先の中から、注目のテック系スタートアップの創業CTOである、株式会社ブリングアウトの小原正大氏、イマクリエイト株式会社の川崎仁史氏が登壇。各社の事業やテクノロジーについてのピッチに加え、続くトークセッションでは東大IPC 小澤彩織氏のモデレートのもと、キャリアや起業の経緯などについても赤裸々に語った。

 本記事は、ソフトウェア開発者向けのオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」からの転載記事です(オリジナル記事)。

面談中の要点抽出で、営業職の生産性向上に寄与する「ブリングアウト」

 東京大学の100%子会社として、世界に向けたイノベーション拡大を目的に、アカデミア関連ベンチャー、研究者、技術者のための投資事業・起業支援・DEEP TECH DIVEなどに取り組む東大IPC。総額500億円規模のファンドを運用し、投資先企業数は約50社、支援先企業数は約60社にも上る。

 その1社として注目を集めているのが、2020年12月に設立したブリングアウトだ。営業商談で「必要な質問」ができているかを可視化し、その要点を抽出することで、合意事項を適切に満たしているかどうかを確認できる。日本の就労人口の12.6%を占める販売従業員(営業職)の“生産性”を高めることが、同社の提供価値というわけだ。

 CTOを務める小原正大(こはら・しょうた)氏は、「開発職の場合、プルリクエストを送って皆からレビューが返されて改善するというサイクルになっており、それによって効率や品質を高めることに成功している。しかし、営業職では商談中の発言内容はクローズで、振り返りがなされずに気合と行動量でなんとかする、という立ち振る舞いが多かった。ブリングアウトのサービスは、このブラックボックスを開いて高精度に要点抽出を行い、商材ごとにチューニングできる」と事業について紹介した。

株式会社ブリングアウト CTO・人事部長 小原正大氏
株式会社ブリングアウト CTO・人事部長 小原正大氏

 実際に人が話す内容から要点抽出を行うことは、人間でもなかなか難しい。それを高精度に行い、例えば、テストクロージング(商談途中での購買意思の確認)などで「聞くべきことを聞けているかどうか」を可視化するというわけだ。実際に行った調査では、上司が8割は聞けていると思っていたものが4割程度しか聞けていないことが判明し、その内容も確認できた。現在リクルートなど営業を強みとする大手企業に採用されており、顧客企業ごとにカスタムを行い、精度を高めて提供されているという。

 「PDCAが回るインフラを実装し、あらゆる活動を日々より良いものにしていくサービスを今後も展開していく」と小原氏は語り、「コンサルティングやソフトウェア、自然言語処理エンジニアなど、メンバーを増やしていきたい」とアピールした。

ブリングアウトが提供するノーコードAIプラットフォームでは、商談を可視化して会社の資産にすることができる
ブリングアウトが提供するノーコードAIプラットフォームでは、商談を可視化して会社の資産にすることができる

最先端のXR技術で「見る」ではなく「する」ためのバーチャル体験を創出する「イマクリエイト」

 続いて紹介されたイマクリエイトもまた、「さまざまな可能性をもっと身近に」をパーパスとし、最先端のテクノロジーで注目される企業だ。CTOの川崎仁史(かわさき・ひとし)氏は「インターネットなどで『知る』が容易になったが、『する』には場所や知識、道具、設備などのハードルがある。それをなくすために、『見る』ためでなく『する』ためのバーチャル技術で体験そのものを進化させようとしている」と事業について説明する。

イマクリエイト株式会社 CTO 川崎仁史氏
イマクリエイト株式会社 CTO 川崎仁史氏

 バーチャル空間なら場所に制限なく、できることが一気に増える。例えば、見えないものを可視化したり、物体の内部を透過したり、重力や速度を自在にコントロールしたりすることができる。

 それらを活かして開発したものとして、「VRけん玉トレーニングシステム」が紹介された。そのシステムでは、ゆっくりと玉を動かしたり、熟練者の様子を第三者の視点で見たりすることができ、それによって難しい技の習得が容易になるという。これによって体験者1128人中1087人が新しい技を習得できた。

「VRけん玉トレーニングシステム」により96%以上のユーザーが新しいけん玉の技を習得できた
「VRけん玉トレーニングシステム」により96%以上のユーザーが新しいけん玉の技を習得できた

 また「VR溶接トレーニングシステム」では、熟練者の作業を録画して3D化し、そのお手本をまねして学習できる。溶接はマスクをして手元が暗い状況で作業する場合が多いが、作業を見やすくするためにマスクを外した状態で練習することもできる。これによって共同開発社のコペルコE&Mでは、新人研修で実技以上の習熟効果を確認できたという。

 川崎氏は「“本当にできるようになる”という効果性にコミットし、『バーチャルのほうが便利』という事例を多数作っていく。例えば、習得したい技術を体にダウンロードさせたり、意識下で練習したり、究極的には体を動かさずに技術習得ができる。夢は映画『マトリックス』のトレーニングシステムを実現すること」と述べ、「すべての人が自由に便利に使えるバーチャル空間の提供によって、『現実でやってみる』のほかに、『XRでやってみる』という選択肢が当たり前に存在する世の中を実現したい」と語った。

 そして、新しいもの、話題となるものではなく、現実をより良いものにしていける手段として「バーチャル技術って便利!」と感じてもらえるような価値を世の中に届け、実感してもらえるよう、研究開発を進めていくという。川崎氏は「そうした『するXR』の技術・事業を支えるUnityエンジニア、デザイナー、モデラーを募集している。興味がある人はぜひ参画してほしい」と訴えた。

スタートアップ創業は失敗しても「挑戦した」というキャリアになる

 2社のピッチに続き、小原氏、川崎氏に加え、モデレーターの東大IPCの小澤彩織氏も加わってのトークセッションが行われた。

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 協創推進部 マネージャー DEEP TECH DIVE(ディープテック・ダイブ) 小澤彩織氏
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 協創推進部 マネージャー DEEP TECH DIVE(ディープテック・ダイブ) 小澤彩織氏

 まずブリングアウトのCTOを務める小原正大氏は、もとはリクルートでプロダクトマネージャーとして複数の新規事業をリード。その後も「手を動かしながら」新規事業開発に携わってきたという「事業立ち上げにキャリアを全振りした」という経歴の持ち主だ。

 そして、イマクリエイトのCTOである川崎仁史氏は、NTT研究所で、ITを活用した人の意欲向上支援に関する研究開発に従事。現在は現職に加え、東京大学工学系研究科の社会人博士として、XRによる能力向上支援に関する研究開発に取り組んでいる。

 小澤氏の「2人とも、大手企業からスタートアップ創業という経歴だが、周囲はどのような反応だったのか」という問いかけに、小原氏は「リクルートという入社3年目にして半分くらいが起業しているという環境だったので、むしろ元同僚などに『いつ辞めるのか』と背中を押される形だった」と語る。もともと学生の頃からベンチャー創業を手伝うなど起業志向だったが、福岡でサラリーマン家庭に育ったこともあり、まずは大手企業に入ることで両親に安心してもらいたかったという。

 さらに、「決して打算的な意図はないが、たとえ失敗したとしても挑戦した結果がキャリアとして残る。そうした人を採用する傾向にもあり、今後、キャリアが詰むということはないと考えている」と語った。

 川崎氏も、「NTT在職時に開発した「VRけん玉」への周囲の反応がよく、反対や心配の声はほとんどなかった」と語る。実母および配偶者の両親は懸念する様子が見られたものの、「東京IPCの投資支援に加え、ゴルフのトレーニングシステムなど具体的な企画が進むことで、不安感を払拭できた。個人的には研究成果をもとに突っ走った感はあるが、周囲の応援も感じており、キャリアパスとしても心配はしていない」と強調した。

 スタートアップ創業で失敗すると、自身のキャリアに傷がつくと考え、不安に感じる人がいるかもしれない。しかし、実際には2人とも、スタートアップ創業が挑戦したことに対するキャリアとして価値があるものと認識しているという。

 なお、家族の理解については、「応援してもらえるよう情熱を示すこと」(川崎氏)、「話し合いと家族の生活を大切にすること」(小原氏)などでしっかりコンセンサスを取ることが重要になるようだ。

責任と資金面での不安定さはデメリット? 回避する方策とは?

 2つ目の質問、「一エンジニアとして、大手企業とスタートアップのメリットとデメリットについて」という問いについては、小原氏は「スタートアップは、人数が少ないゆえに良くも悪くも自分の意思決定で物事が動かせること」と述べ、「それが面白さでもあるが、同時に組織に対する責任も大きくなる。自分が多少ミスをしても大手企業なら影響は小さいが、スタートアップでは致命傷になる可能性もある。メリットでもあり、デメリットでもある」と語った。

 なお、ファイナンス部分についてはスタートアップは不安定なことも多いが、ブリングアウトの場合、ジャフコグループおよび東大IPCからプレシリーズA(投資家目線での事業段階の一つ。プロダクトの価値を確かめる段階といわれる)の資金調達をしており順調だという。しかし、創業期の残キャッシュは死活問題である。サービスを立ち上げようにも開発時期は営業活動もできず、業務委託などで資金繰りをする必要がある。小原氏は「自分たちは初めからフルコミットのメンバーが多かった。できることは広がったが、資本・売上・事業が何もない立ち上げ時点で月500万円程度のキャッシュアウトがあることで資金繰りに苦労した」と振り返り、「それゆえ、サービスが決まるまでは企業に所属しつつ、資金的なストレスなく副業として準備するのも手ではないか」と語った。

 川崎氏は、「自分は研究開発メインで、ファイナンス部分に関しては疎かったため、当初は妻の協力を得て起業した。また、『VRゴルフトレーニングシステム』を開発後の販売ノウハウを持っていなかったため、商社出身の元同期が経営する営業力の強い会社と合併して現在の形となった」と説明。「自分が持っていない能力を持つ仲間や会社と組むことで、組織としても強くなれる」と語った。

 そうした2人の話を受け、小澤氏は「起業のあり方はさまざまだが、国や自治体の創業融資や助成金などもあり、エクイティ(株式など返済期限なし)やデット(銀行借入など返済期限あり)といった資金調達以外にも、アクセラレーションプログラムなどのリソース支援も多様にそろっており、支援を受けられる。ぜひ、そうしたものを駆使して、リスクを軽減しながらスタートアップを運営してほしい」と語った。

 そして最後に、「スタートアップに興味がある人に向けて、どんな人が向いているのか、どんな人と一緒に仕事をしていきたいかというメッセージを」というリクエストに応じ、小原氏は「少ない人数で運営しているので、やはり専門性の高い人は理想的。しかし、一番大切にしたいのは“いいヤツ”と働くこと」と語った。仕事はとてもタフでつらいことも多い。チャットなどでカドが立つこともあるが、できるだけ気持ちよく働くためにも人柄は大切というわけだ。川崎氏は、「XR系の会社としてXRに興味や可能性を感じている人。XRで社会を変えていきたいと考えている人と仕事をしたい」と語った。

 小澤氏は「テック系スタートアップが盛り上がっていると感じてもらえたと思う。研究開発など難しそうに感じた方も、転職や副業について知りたいという方もいると思うが、ぜひアクセスしてほしい」と語り、テック系ベンチャーおよびベンチャーシーズとの求人マッチングプラットフォーム「DEEP TECH DIVE」を紹介してセッションの結びとした。

求人マッチングプラットフォーム「DEEP TECH DIVE」
求人マッチングプラットフォーム「DEEP TECH DIVE」

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提供:東京大学協創プラットフォーム開発株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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