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ProductZine Day 2024 Winter

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キーパーソンインタビュー

プロダクトマネージャーを増やし、日本発のソフトウェアを世界に届けたい――CPO協会代表理事Ken Wakamatsuインタビュー

 2021年1月20日、日本CPO協会の設立が発表された。CPO(Chief Product Officer)とは、プロダクトをリードし中期的なプロダクトの方針やあり方を決定する役割を担う人物である。企業によってはVP of Product(プロダクトの包括責任者、以下VPoP)やプロダクトマネージャー(PM)と呼ばれていることもあるだろう。なぜ今、このタイミングで日本CPO協会を設立したのか。同協会ではどんな活動をしていくのか。同協会を設立し、代表理事を務める株式会社metrolyのKen Wakamatsu(ケン・ワカマツ)氏に話を聞いた。

CPO協会を設立した理由

──CPO協会とはどういった団体なのでしょうか。設立の契機から伺えればと思います。

Ken Wakamatsu氏(以下Wakamatsu氏):CPO協会はSaaSやeコマースなどのプロダクトを作っているリーダーたちの団体です。CPO協会を設立した理由は大きく2つあります。

 一つ目は日本では人材があまり流動しないため、情報が1か所にとどまってしまうこと。そこで、プロダクトに携わるさまざまな企業の人が情報を集めて共有できる場所があればよいなと思いました。

 二つ目は、プロダクトオーナーやプロダクトマネージャーという職種が、社内でも孤立した存在であること。プロダクトマネージャー一人に対して、エンジニアはおそらく7~8倍の人数がいます。エンジニアはプロダクト作りの作業の中で、リレーションシップを築き情報を共有することができます。

 一方のプロダクトマネージャーはそれぞれ独立したプロダクトを担当するため、同じ社内でもプロダクトマネージャー同士の情報共有はあまり行われません。プロダクトマネージャーが一人ということもあるでしょう。プロダクトをリードする人たちの孤立を解消するため、情報を共有する場を作りたいと思いました。

 こういった課題を解決することによって、日本企業の中でプロダクトマネージャーやCPOを増やし、日本のプロダクトづくりをグローバルで通用するものに強化していくことを目指して、CPO協会を設立しました。

日本CPO協会 代表理事 メトロリー CEO兼CPOのKen Wakamatsu氏
日本CPO協会 代表理事 メトロリー CEO兼CPOのKen Wakamatsu氏

──CPO協会の構想は半年前から考えていたとのことですが、どのようにして設立までこぎつけたのでしょう。

Wakamatsu氏:2016年にセールスフォースのプロダクトマネージャーとして来日したときに、freeeの代表の佐々木大輔さんやSansanの代表の寺田親弘さんにお会いして、グローバルの開発のベストプラクティスを共有する機会がありました。その後、ちょうどセールスフォースを退職して起業したタイミングで、SansanでCPOを務める大津裕史さんを寺田さんから紹介いただき、情報交換するようになりました。大津さんと話をするうちに「もっといろんな会社と情報共有していきたい。そういう組織を立ち上げよう」という話になりました。そこから今の理事のメンバーに声がけして、設立されたのがCPO協会です。

──理事メンバーとはどのようなつながりがあったのでしょうか。

Wakamatsu氏:大津さんとは先のようなきっかけで知り合いましたが、他の方とは昨年9月に開催されたfreee主催の「Product Management Night Tokyo」というプロダクトマネジメントのミートアップ(レポート記事はこちら)で知り合った方たちから広がった縁ですね。実はコロナ禍で知り合ったメンバーがほとんどなので、オンラインで情報共有はしていますが、一度もオフラインで集まったことはないんですよ。

日本CPO協会 理事のメンバー
日本CPO協会 理事のメンバー

──なぜ、このタイミングでの設立だったのでしょう。

Wakamatsu氏:日本発のよいプロダクトを世界に発信していくためには、ちょうどよいタイミングだったと思います。例えば私がセールスフォースに入社した2011年は、2008年のリーマン・ショックで落ち込んだ経済が回復し、セールスフォースをはじめ、SaaSやeコマース企業の売り上げが大きく伸びた時期でした。その環境と今の日本のビジネス環境は非常に近い感じがします。

 当協会の理事の会社も上場し、どんどん組織や事業が大きくなっています。組織や事業が大きくなると、エンジニアも増え、プロダクト開発をリードするプロダクトマネージャーが必要になります。だからこのタイミングで、私のこれまでの経験を日本のプロダクトマネージャーに還元したいと思ったのです。

Wakamatsu氏はエンジニアからPMに転身

──Wakamatsuさんはプロダクトマネージャーとしてどのような経験を積まれてきたのでしょう。

Wakamatsu氏:キャリアはエンジニアとしてスタートしました。しかし、エンジニアにあまり向いていないと感じ、悩んでいろんな人に相談していたときに、当時所属していたアドビの中にEntrepreneur in Residenceというスタートアップを社内で作る仕組みが立ち上がったので、そこに所属することになりました。

 1999年当時のアドビはシュリンクラップ契約方式で、いわゆるパッケージでソフトウェアを販売するビジネスモデルでした。いろんな会社がオンラインサービスに乗り出す中で、アドビがその動きに参画すると、当時のビジネスモデルからかけ離れてしまうという課題がありました。そこでまずは私の組織で実験的にサービス化に取り組むことになりました。私がプロダクトマネージャーとして担当したのがAdobe PremiereとPhotoshopのクラウドサービス化。Photoshop.comやPhotoshop Expressというアドビ初のスマホアプリを作りました。その中でプロダクトマネジメントを学んでいきました。これがプロダクトマネージャーとしてのファーストフェーズです。

 次に日本のハードウェアに憧れを持っていた私は、ハードウェアのプロダクトマネージャーに携わってみたいと思い、当時、シスコが買収したコンシューマ向け小型ビデオカメラのソフトウェア側のプロダクトマネージャーのロールに転職しました。そこでハードウェアの中のソフトウェアを作る難しさを経験しました。シスコはルーターなどBtoB向け通信機器の会社です。その利益からすると、コンシューマプロダクトの利益は数%と微々たるもの。利益率の悪さから、同プロダクトの生産を中止することになり、僕も転職することにしました。

 これまで手がけてきた多くの無料のコンシューマ製品は、経営が傾くとリストラの対象になりがちです。そこでキャリアとしてもっとビジネスの中心にあるものに携わりたいと思い、セールスフォースに入社しました。約9年間、プロダクトマネージャーとしてSalesforce EinsteinなどSales Cloudで提供するプロダクトを開発し、SaaSのビジネスを深く学びました。2016年に日本法人に出向になり、プロダクトマネジメントチームの立ち上げを行いました。

 2020年に自分たちでプロダクトを作って運営するフェーズにチャレンジしたいと思い、2017年に設立されたAIベンチャー、metrolyに参画。CEO兼CPOとしてプロダクト作りに従事しています。

次のページ
海外と日本のプロダクトマネジメントの違いは? CPO協会をPMの情報共有の場に

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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