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ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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ProductZineウェビナーレポート

グッドパッチに学ぶ「プロダクトマネジメント」におけるデザインの価値と役割とは?

ProductZineウェビナー「GoodpatchのUXデザイナーに学ぶプロダクトマネジメントで活きる『デザイン』の力」レポート


 プロダクト開発を進める上で直面する、さまざまな課題。それらは「デザイン」の力で解決できるかもしれない。ProductZineは4月25日に、デザインカンパニー・株式会社グッドパッチのUXデザイナー兼プロダクトマネージャーである大本理絵氏と粟井拓海氏を招き、プロダクト戦略に関するウェビナーを開催。プロダクトマネジメントにおけるデザインの価値と重要性について、具体的な事例を交えつつ解説した。

開発をリードしてプロダクトの成長にコミットすることがデザインの役割

 グッドパッチは「デザインの力を証明する」をミッションに掲げ、デザインパートナー事業とデザインプラットフォーム事業の2つのビジネスを持つデザインカンパニーだ。

 大本氏と粟井氏が所属するデザインパートナー事業部では、プロダクトの課題に並走してデザインの力でクライアントの事業を前進させている。具体的にはサントリー食品インターナショナル株式会社の事例がある。事業構想段階からプロダクト開発・グロース・プロモーションまでを一貫してサポートし、2020年度グッドデザイン賞を受賞した。また、株式会社丸井グループのLTV経営の基盤となるDXを戦略および戦術面から支援している。

 企業紹介のあと、大本氏は同社が考えるデザインについて説明した。

株式会社グッドパッチ UXデザイナー兼プロダクトマネージャー 大本理絵氏
株式会社グッドパッチ UXデザイナー兼プロダクトマネージャー 大本理絵氏

 「グッドパッチは、ただ見た目を綺麗にするだけではなく、顧客への提供価値を中心に開発をリードしてプロダクトの成長にコミットすることが『デザインの役割』だと考えています。顧客への提供価値を起点に、プロダクト開発領域だけでなくマーケティング、カスタマーサポートなどの他領域を巻き込んで、組織でグロースに導くということをやっていきたいと思っています」(大本氏)

 同社の考える「デザインの力」とは、具体的な情報を集め、抽象化、構造化していくことで本質的な価値を発見し、伝わる形に可視化して実装していくことだ。ポイントは「顧客中心」「具体と抽象の行き来」「高速仮説検証」だ。

 大本氏は受講者に「プロダクトマネジメントをする上で、どんな課題に直面していますか?」という質問を投げかけた。さまざまな回答が集まったが、大本氏は3つの課題に絞って説明を続けた。大本氏は「この3つの課題をはじめ、プロダクトマネージャーが抱える課題の多くはデザインの力で突破できる」と話す。

 1つ目は「直近の開発に手いっぱいになってしまって、中長期の視点でプロダクトを捉えられていない」という戦略面での課題だ。この課題を解決する理想の状態は、開発メンバー全体が中長期的なゴールを見据えた上で直近の開発が行われている状態だ。この理想の状態にするために、同社ではステークホルダーを巻き込んだロードマップ策定ワークを行っている。最短で2時間×3回のワークショップで戦略策定とすり合わせを効率化する。

 ワーク①ではプロダクトに関係する人を全員集めてプロダクトビジョンの認識合わせや中長期的なプロダクトのあるべき姿についてのワークショップを行う。次にワーク②で提供価値の変化を言語化し、ゴールに向けたロードマップ策定を行う。ワーク③ではこれらが形骸化しないようにチームのタスクに落としていき、半期のKPIに設定して全体に共有する。

ステークホルダーを巻き込んだロードマップ策定ワークのプロセス
ステークホルダーを巻き込んだロードマップ策定ワークのプロセス

 2つ目は「事業視点中心の開発になっていて、顧客の視点をうまく取り入れられていない」という顧客に関する課題だ。この課題を解決する理想の状態は、顧客との距離が近く、提供価値が明確な状態で企画開発を進められる状態だ。デザインの力で理想の状態にする方法として、ユーザーリサーチの定期化がある。

 具体的には、隔週でのユーザーリサーチで常に顧客像をアップデートする。まずユーザープールを確保し、ユーザー像の仮説設計、検証設計を行う。次にインタビュー運用設計をして定期的にインタビューを実施する。調査した結果わかったことと仮説を照らし合わせ、UXマスター(ユーザーの理想的な体験についてまとめたドキュメント)の更新と全体への共有を行う。ポイントは、腰が重くなりがちな定性リサーチを仕組み化することによって定常化させること、運用をしっかり行うことで開発メンバーが入れ替わっても仮説が引き継がれること。その結果として、チーム全体の顧客解像度が底上げされ、議論がしやすくなる。

ユーザーリーチの定期化で顧客との距離を近づける
ユーザーリーチの定期化で顧客との距離を近づける

 3つ目は「複数の部署間の連携がうまく取れておらず、組織もアウトプットもバラバラ」という組織面での課題だ。この課題を解決する理想の状態は、それぞれの部署内で、顧客コミュニケーションのPDCAサイクルを自律的に回せる状態だ。この状態にするために、同社ではサービス全体から領域特化にかけてユーザー体験設計を行っている。サービス全体と特定領域を繋ぎ、複数のタッチポイントで一貫したユーザー体験を提供する。

 「サービス全体のジャーニーと自分たちの部署が扱っている領域のジャーニーがどう繋がっているのかをしっかり可視化していきます。全体との繋がりを意識した上で、複数のタッチポイントに分かれても、きちんと一貫したユーザー体験を提供できるというところを一繋ぎで設計していくものになります」(大本氏)

サービス全体と領域特化のユーザー体験設計を行うことで自律的な活動を促す
サービス全体と領域特化のユーザー体験設計を行うことで自律的な活動を促す

 サービス全体を横断して設計していくことで各部門が連携して顧客への価値提供に向き合える状況を組織として作れること、またコミュニケーションポリシーの策定と仕組み化により、各現場が自立してPDCAを回せるようになるということが、組織に対してデザインの力でできることだ。

 大本氏は「デザインがこのようにプロダクト開発現場に深く入り込んでいくことによって、プロダクトマネージャーがもっと戦略を考えることに時間を使えるようになったり、ビジネス/ユーザー/エンジニアリングのバランスが取りやすくなったりすると思います。我々はこういった形で、プロダクト開発現場に価値提供をしていきたいと考えています」と述べた。

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ユーザーの声を鵜呑みにせず、本質的な課題を明らかにして機能開発することが必要

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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