改めて「インサイト」とは何か?
インタビュー調査では、インサイトを導き出すことが重要と言われますが、インサイトとは何を意味するのでしょうか。Insight(インサイト)を辞書で調べると「物事の実態・真相を見抜く力、洞察力」と出てきます。つまり「インサイト」とは、インタビューの対象者(以降、「対象者」と表記)が発した言葉そのものではなく、話の文脈や内容、顔の表情やしぐさなどからインタビュアーや観察者が読み取ったこと、対象者の声にならない声を意味します。
一口にインサイトといっても、読み取ることは何でもよいわけではありません。検証すべきポイントに対してインサイトを導き出さなければ意味がないのです。そのために、「インタビューで持ち帰るもの」「これだけは明らかにすること」を事前に明示しておくことが大事だと、第3回の「準備編」で述べました。ただし、検証ポイントや問いをやみくもに用意しても、インタビューとは名ばかりの一問一答のアンケートのようになってしまいます。ではどうすればよいのでしょうか。
インタビュー前:「探索」と「検証」を意識して準備をする
インタビュー調査の目的には、大きく分けて「機会の探索」と「仮説の検証」の2つの要素があります。プロダクト開発の初期段階における「機会の探索」とは、顧客の「悩み・困りごと・ニーズ」を理解し、プロダクトの可能性をあぶりだすことです。「仮説の検証」とは、想定した顧客課題が存在するか、考案したコンセプトが顧客ニーズにマッチしているかなどを把握することです。「機会の探索」と「仮説の検証」はどちらか一方だけということはなく、両方が混在することが多いのです。そのため、どのように両立させるかを事前に考えておく必要があります。
DSRチームの事例「グループ旅行の幹事の困りごと」のインタビューでは、手元に「想定される顧客課題」をまとめた資料を用意しつつ、最初はオープンに「グループ旅行の幹事の悩み・困りごと」を探索するという方法を採りました。これにより、まずはバイアスにとらわれずに対象者の体験や考えを聴取することができます。同時に、想定した顧客課題が存在するのかも検証できるので、仮説とギャップがあった場合は、対象者が何に困っていて、それがなぜ起こったのかの探索に重点を置きました。このように準備することで、対象者の話にあわせて「探索」と「検証」を効果的に両立できました。