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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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PMが知っておくべき、プロダクトマネジメントで重要な100のこと

火中の栗を拾え――書籍のような形式知だけでは実現が難しい、プロダクトマネージャーの打ち手の解像度を高めるために必要なこと

PMが知っておくべき、プロダクトマネジメントで重要な100のこと 第6回

 日本でも徐々になじみの出てきた「プロダクトマネージャー(PM)」ですが、その役割や認識は業界、企業、人によってさまざま。これという正解はなく、みな手探りでプロダクトに向き合っているでしょう。そこで本連載では、プロダクトマネジメントにおいて最も重要だと思うことを、プロダクトマネージャーとして活躍する方や、プロダクト開発の現場の経験が豊富な方に、自らの経験を踏まえて解説していただきます。今回のテーマは「複雑な状況に対処するプロダクトマネージャーには、試行錯誤や観察、言語化を積み重ねることで解像度の高い分析力が必要となること」について。さまざまな規模の会社で経験を積み、現在グロービスで法人向けプロダクトのプロダクトマネージャーを務めている久津佑介さんが解説します。(編集部)

今回の対象読者

  • プロダクトマネージャーとしての成長に悩んでいる方
  • プロダクトマネージャーになったばかりの方
  • これからプロダクトマネージャーを目指したいがスキル獲得の方法に悩んでいる方

はじめに

 はじめまして、久津と申します。株式会社グロービスで「GLOBIS 学び放題/GLOBIS Unlimited」の法人向けプロダクトのプロダクトマネージャーを務めています。

 これまでのキャリアでは、大手日本企業・メガベンチャー・スタートアップなどさまざまな規模やフェーズの企業で、エンジニア・プロジェクトマネージャーを経てプロダクトマネージャーとなりました。

 これまでキャリア系のイベントに登壇させていただく機会があったのですが、この経歴を説明すると「プロダクトマネージャーにジョブチェンジする際にどうやってスキルを獲得しましたか?」といった質問をいただくことがよくありました。

 最近は「プロダクトマネジメントトライアングル」(日本語訳)といったプロダクトマネージャーに必要なスキルが体系化されたものや、『プロダクトマネジメントのすべて』といった書籍など、学習する方法も増えてきたため、プロダクトマネージャーとしてはいい時代になったなと思います。

 もちろんこのような「形式知」からの学びも多いのですが、私自身の過去を振り返ってみると「自身のさまざまな経験からの学び」が強いスキルとなり今も役立っているなという印象です。

 そこでこの記事では、プロダクトマネジメントに必要なスキル獲得の方法のうち、自身の経験から学ぶ際に必要なマインドセットについて書いてみたいと思います。

プロダクトマネージャーが置かれている環境とは

 プロダクトマネージャーが日々の仕事の中で対峙する相手はプロダクトそのものだけでなく、ユーザーやマーケット、その先の社会や文化、組織やチームメンバー、さらには自分自身まで含めると、非常に多岐に渡ります。そしてこれらの相手すべてに共通するのは「複雑系」であるということです。

 複雑系とは、「複数の要因が合わさって全体として何らかの挙動を発生させるが、要因と全体の挙動の因果関係が明らかではないシステム系」を意味します。例えばマーケットは分かりやすい例かと思います。技術の進化・社会の変化・参入プレイヤーなどさまざまな要因によって日々ダイナミックに変わっていきますが、その挙動の正確な予測は困難ですし、「Aを行えば必ずBになる」のようにシステマチックにコントロールできるものではありません。同様に組織の挙動もこれまでの歴史や風習などに左右されますし、ユーザーやチームメンバーなどの個人レベルでもその意思決定プロセスや行動要因は非常に複雑です。

 しかし、プロダクトマネージャーはこのような複雑系をうまくコントロールして目標に導くことが求められます。ユーザーに自分たちのプロダクトを使ってもらう、マーケットにフィットさせる、組織にプロダクトマネジメントを定着させる、チームパフォーマンスを最大化させるためにチームメンバーを動かす、など。

 これを実現するためには、書籍などから学んだ形式知をただ適用するだけでは不十分です。なぜなら、書籍などで綺麗にまとまっているメソッドやフレームワークは、あらゆる複雑系に有用な万能薬ではないからです。書籍などが前提として置いている状況との完全な一致はほぼ起こり得ませんし、そもそもその前提を詳しく知ることも困難です。よくある例として、ただお作法としてのアジャイル開発手法の「スクラム」を導入しただけでワークしないケースが挙げられます。適用する組織がスクラムを開始するための前提(必要条件)を満たしていなければ効果は出ません。

 よって、自分が対峙している複雑系に対して、どの知識をどのように組み合わせて適用するべきかを見極める必要があります。言い換えると、対峙している複雑系のシステム構造を理解して、適切な打ち手を選択する必要があります。

次のページ
複雑系を理解するためのアプローチ「システム思考」

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この記事の著者

久津 佑介(株式会社グロービス)(ヒサツ ユウスケ)

2009年に凸版印刷へ入社。エンジニアとして基幹システム開発等に従事。その後リクルートテクノロジーズに転職し、プロジェクトマネージャーとして各種プロジェクトのマネジメント、ビジネス戦略検討、要件定義、ベンダーマネジメントなどを担当。2017年からはロイヤリティマーケティングに出向し、プロダクトマネー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/256 2021/06/29 11:00

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