はじめに
前回の記事では、ユーザー理解の共通認識を作るための「価値マップ」をチームで作成するメリットをご紹介しました。チームで価値マップのようなアウトプットを作る際、メンバーの関係性が構築できておらず「正直にいうと複数メンバーでワークをやるような関係性ではない」「メンバーを巻き込みにくい」という声も聞きます。
プロジェクトメンバー間の壁のワケ
さまざまなプロジェクトで起こりがちな事象ですが、プロジェクトメンバー間の壁が生まれる背景には、このような課題があるのではないでしょうか。
- プロジェクトの目指す姿をメンバー間ですりあわせていない
- プロジェクトメンバーそれぞれの、得意領域・成し遂げたいこと・仕事において大切にしたいことを知らない
- 自分の職能・立場の「正解」を「言う」だけになってしまい、議論が建設的にならない
プロダクトをグロースさせるためには、まずプロジェクトの「しかるべき人」の間で「プロジェクトの目的・目標・関係者」をすりあわせてた状況を作り、その上で目にみえるアウトプット(資産)を作ることが大切です。
ステークホルダーを巻き込み壁を突破する「インセプションデッキ」
チームビルディングにおいて有効な手段の一つに、「インセプションデッキ(Inception Deck)」というものがあります。これは書籍『アジャイルサムライ』で述べられているもので、Inception=始まりの、Deck=スライドの組を意味します。
インセプションデッキは、以下の10要素から成り立っています。
- われわれはなぜここにいるのか
- やらないことリスト
- 夜も眠れない問題
- エレベーターピッチ
- 「ご近所さん」を探せ
- 期間を見極める
- 何がどれだけ必要か
- パッケージデザイン
- 解決策を描く
- 何を諦めるのか
インセプションデッキのポイントは大きく2つ。
- プロジェクトに関する手ごわい質問を、しかるべきメンバー全員で、同じ空間で話し合い、認識を合わせること
- 認識を合わせた結果を、デッキという成果物にまとめること
これにより、プロジェクトメンバー間で後から議論の軌跡を目で見て確認できると同時に、適宜修正をかけられ、チームの状態に合わせてアップデートする習慣をつけられることでしょう。
インセプションデッキは、当然ながらプロジェクト開始時に作るのが好ましいですが、この記事をここまで読んでくださっている方の大半は、おそらくプロジェクトが走り出している中で課題を抱えていることと思います。プロジェクトが直面している壁を打破したいと考えているなら、今からでも遅くはありません。部分的でも動き出すことが重要です。
筆者が実際にプロジェクトの中盤で部分的に実施したインセプションデッキの例をもとに、必要な準備や進め方、その効果を紹介します。