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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZineイベントレポート(AD)

真の意味で顧客を理解できているか? よくあるプロダクト改善の落とし穴と、リサーチを活用する際の4つのアプローチ

「ProductZine Day 2024 Summer」レポート

調査を通じて顧客を理解する際の4つのアプローチ

 では、顧客を深く理解してプロダクトやサービスを開発するにはどうすればいいのだろうか。内藤氏は、調査を通じて顧客やユーザーの思考や行動を理解すること、つまり「顧客視点」「人間中心」であることが重要とし、その観点で次の4つのアプローチを説明した。

  1. 自社と競合他社の利用実態を知る
  2. 製品やサービスの利用上のユーザー課題を発見する
  3. すでに自身で課題を解決して上手に利用しているユーザーから、解決方法を学ぶ
  4. 想像もしない使い方をするユーザーから、その使い方に至った経緯を知る

 これらの調査を行うことで、顧客に確かな価値を提供できるだけでなく、新しい顧客体験や価値の創出も期待できる

顧客視点・人間中心の調査が求められている
顧客視点・人間中心の調査が求められている

 4つのうち最初の2つ「自社と競合他社の利用実態を知る」「製品やサービスの利用上のユーザー課題を発見する」については、平均的なターゲットユーザーへのアンケート調査が有効だ。例えば、ECサイトやECアプリでは、現金とカードを併用している人や、スマートフォンは主に1台を使用している人など、平均的なユーザーに対して調査を行う。

 思いもよらない発見によって新しい価値を創出したいときは、残りの2つ「すでに自身で課題解決して上手に利用しているユーザー」「想像もしない使い方をするユーザー」に対して調査を行う。ECサイトなら、現金しか使わない人や、その逆で現金を一切持ち歩かない人、またはスマホを使わない人や、複数のスマホを使い分けている人など、極端な属性を持つエクストリームユーザーだ。これらのユーザーがどのような工夫をして課題解決を行っているかを確認するのだ。

 後者の「新しい顧客体験や価値の創出」については別途、具体例として不動産販売会社のWebサイトリニューアルのケースを紹介し、深く掘り下げた。

 この不動産会社では、顧客から寄せられた「使いにくい」という声やアンケート、クレームを収集し、それを反映して情報や機能を増やす取り組みを行った。物件情報を増やし、検索機能を強化したが、結果的に検索条件が絞りにくくなり、ユーザーが期待する結果を提供できなかった。つまり、リニューアルが逆効果となってしまったのだ。

 そこで今度は、「不動産の購入者が、そもそもどういったプロセスで不動産を検討し、購入に至るのかを深く理解すること」に立ち返ることにした。実際に不動産を購入した人にインタビューを行い、購入プロセスを深く探った。その結果、理想的な購入プロセスに寄り添い、最終的に購入の後押しをするというコンセプトを作り上げ、改善を行った。すると、サイトの滞在時間が増加し、相談件数も増えるというポジティブな結果が得られた。

 成功したリニューアルで実施したユーザーインタビューでは、何が決め手になったのだろうか。このケースで行ったインタビューの対象者は「不動産を徹底的に検討し、納得のいく物件を購入できた人」、つまり先述の「すでに自身で課題を解決して上手に利用しているユーザー」だった。

 具体的なインタビュー内容としては、初めて不動産を購入した人には「賃貸から購入する際の壁」や「初期にどんなことを検討していたのか」などを聞いた。家を買い替えた人には「査定相場をどのように調べたのか」「査定業者の選定」などを詳しく聞き出した。

 網羅的なインタビューの結果、購入に至るプロセスとして、「検討段階」「探索段階」「検索段階」「選定段階」「決定段階」があることを改めて確認できた。そして、各プロセスに対して「思考」「行動」「情報取得手段」「課題」「課題解決の方向性」を整理した。

段階に応じた思考や行動、課題などを整理
段階に応じた思考や行動、課題などを整理

 例えば、不動産の「探索段階」では、「戸建てに住みたい」や「駅近がいい」といった大まかな条件から始まり、思いつきで物件を探していくが、直感的に良いと思える物件が見つからないとこのサイトでの検討を諦めてしまうことがある。こうした利用状況が想定できると、希望の条件を整理する難しさや、一長一短がある条件の譲歩など、ユーザーが抱くであろう課題が浮かび上がってくる。すると、「ユーザー自身とその家族の条件を整理するためのコンテンツを提供するべき」「こういうサービスが必要」といった具体的な解決策が明確になる。

 内藤氏は「調査によってステークホルダー間で顧客に対する共通理解が得られれば、アイディエーションやコンセプト作成といった次の段階に進むことができる」と述べた。

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リサーチで顧客を知ることは、プロダクトで新たな価値を創出する武器になる

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通マクロミルインサイト

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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