収集したデータをUX改善に活かすプロセス例
続いて、これまで集めた定量/定性データを使ってUX改善方針を考えるためのプロセスをご紹介します。
ユーザーの課題は1つではなく、複数の要因があって複雑化していることも少なくありません。課題の優先順位や、より効果が期待できる改善策は何か、判断基準をどこに設定すれば良いかなど、迷うことも多いのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、「ダブルダイヤモンド(※)」というデザイン思考のフレームワーク。「発散」と「収束」のプロセスを2つのダイヤモンド(ひし形)で視覚化し、ユーザー視点から課題を発見して適切な解決策を導き出すアプローチを体系化したものです。主にデザインや製品・サービス開発での問題解決のために活用されますが、UXの改善を行う際にも応用が可能です。
このダブルダイヤモンドモデルを活用して、データをUX改善に活かすプロセスを見ていきましょう。
(※)ダブルダイヤモンドモデルについては近年新たな要素も取り入れられていますが、本記事では旧バージョンの4ステップのフレームワークを中心に説明することで、UX改善における定性データの重要性にフォーカスします。
1.課題の発見(Discover)
最初のフェーズでは、アプリ利用者の行動データや体験に基づく定性データ(ユーザーインタビュー、行動観察)が有効です。例えば、アプリの特定の画面で離脱率が高いといった定量データを発見した場合、その背景にあるユーザーの意図や感情を理解する目的で、実際にインタビューを実施し離脱要因を深掘りします。
実施例
- ユーザーインタビュー:離脱ポイントが新規会員登録画面である場合、実際のユーザーにその画面での体験を尋ね、複雑な入力項目や情報過多が原因であることを特定する。
- 行動観察:ユーザーがどのような手順で操作しているかを観察し、UIの改善ポイントを発見する。
2.課題の定義(Define)
課題の発見フェーズで収集したデータを基に、具体的に課題を定義するフェーズです。この段階では、定量データ(ログ解析やアンケート)と定性データを組み合わせ、問題の根本原因を洗い出します。
実施例
- 定量データ:アプリ内のクリック率や離脱率の分析。
- 定性データ:ユーザーの「操作が分かりにくい」といったフィードバックをさらに分析し、「どの操作」が具体的に分かりにくいのかを特定。
3.解決策の発想・開発(Develop)
新たなアイデアや改善案を基に、プロトタイプを作成し検証します。この段階では、ユーザビリティテストを通じて、ユーザーからの直接的なフィードバックを得ることが効果的です。
実施例
- ユーザビリティテスト:改善案をプロトタイプとして作成してユーザーに実際に操作してもらい、使用感や改善点を収集。操作時の不満や混乱のポイントを見つけ出し、さらなる改善につなげる。
4.解決策の提供(Deliver)
改善施策や新しいUI/UXをリリースし、その効果を定量的に測定します。ここではA/Bテストや行動ログ分析が役立ちます。新しいデザインや機能がユーザーにどのような影響を与えたかを検証し、次の改善につなげるためのデータを蓄積します。
実施例
- A/Bテスト:UIの変更がユーザーの操作時間やコンバージョンにどのような影響を与えたかを測定。
仮説検証を繰り返し、継続的にアプローチ
UX改善は、一度実施すれば終わるものではありません。継続的なデータ収集と仮説検証のサイクルを繰り返す必要があります。改善実施した後も、ユーザーの行動データやフィードバックを継続的に収集し、施策の効果を見極めることが大切です。
具体的には、データに基づいて仮説を立て、検証するプロセスが求められます。例えば、新しい通知機能を導入した際に、「この変更がユーザーのエンゲージメントを向上させる」という仮説を立てたなら、改善後のユーザーの反応や利用状況をモニタリングし、その効果を測定します。その結果を基にさらなる改善を計画し、最適化を続けることで、ユーザー体験をより良いものに進化させていきましょう。