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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

データと共感で創る、スマホアプリUXデザイン実践ガイド

事例で分かる! 定性データでひもとくアプリのUX改善

データと共感で創る、スマホアプリUXデザイン実践ガイド 第3回

定性データ活用のユースケース

 ダブルダイヤモンドモデルに沿って、特に定性データを活用してアプリのUX改善を進める具体的イメージを持っていただく目的で、3つのユースケースをご紹介します。

ユースケース1:ECアプリの初回ユーザー体験改善

課題

 ECアプリの新規ユーザー登録の離脱率が高く、特に初回起動時に多くのユーザーが離脱していた。

定性データの活用

  • ユーザーインタビュー:離脱したユーザーや継続利用中のユーザーを対象に、初回体験についてインタビューを実施。「登録手続きが煩雑」「初回起動時の説明が長すぎる」などの不満が浮き彫りになった。
  • 行動観察:実際にユーザーがアプリを操作する様子を観察し、ユーザーがどのタイミングでストレスを感じ、離脱するかを確認。これにより、特定の画面で操作に詰まる傾向があることが分かった。

改善策

  • 課題の発見:ユーザーインタビューと行動観察を通じて課題を特定。
  • 課題の定義:ユーザーが求めるのは「シンプルでストレスのない初回体験」であると仮説を立てた。
  • 解決策の発想:チュートリアルの導入で初回のオンボーディング体験を改善。
  • 解決策の提供:チュートリアル導入後、定量データ(登録率の向上)をモニタリングし、仮説が検証された。

ユースケース2:ドラッグストア公式アプリの通知機能改善

課題

 割引クーポン情報の通知がユーザーに届いていない、または不要な通知が多いため通知の設定がオフにされる問題が発生していた。

定性データの活用

  • ソーシャルリスニング:SNS上で「通知が頻繁に来る」「通知が役に立たない」といったユーザーの声を収集し、通知が過剰であることが判明した。
  • グループインタビュー:特定のターゲット層(高頻度の来店ユーザー)を集め、通知に対する意見をディスカッション形式で収集。ユーザーは「曜日か日にちを固定して通知が欲しい」「当日ではなく前日に知っておきたい」との要望を持っていることが分かった。

改善策

  • 課題の発見:定性データから、通知の内容やタイミングに不満があることが明確になった。
  • 課題の定義:ユーザーが求めるのは「必要なときだけの通知」であると仮説を設定。
  • 解決策の発想:割引クーポンの発行を固定曜日とする運用に変え、店舗内でもレジ前でのPOPを設置した。通知種別設定機能(受け取りたいプッシュ通知情報を設定できる機能)の追加を提案。
  • 解決策の提供:新しい通知種別設定機能をリリースし、曜日固定の割引クーポン配信の運用も開始した。通知オン率と通知開封率、割引クーポンの利用率を定量データで測定。結果、通知のオフ率が低下し、ユーザーの満足度向上が確認できた。

ユースケース3:アパレルブランドの公式アプリにおけるリテンション施策

課題

 アパレルブランドの公式アプリにおいて、主に店舗利用者のアプリ使用頻度が低い。多くのユーザーが、アプリをインストールしていても、来店時のポイント付与のタイミングでしかアプリを起動しない。購入や新商品の情報取得、その他の機能をほとんど活用していない。

定性データの活用

  • ユーザーインタビュー:アプリを利用する「店舗購入のみユーザー」と、「ECを併用ユーザー」を対象に実施。店舗購入のみのユーザーは、プッシュ通知で配信される情報やアプリのコンテンツに魅力を感じていないことが分かった。また、店舗体験とアプリの連携が薄いため、ユーザーは購入時のポイント付与以外の場面でアプリを活用する動機を見いだしていないことが判明した。

改善策

  • 課題の発見:店舗のみ購入ユーザーは、アプリの利用は店舗で購入時にポイントを付与することに限定されていることが分かった。
  • 課題の定義:リサーチ結果を基に「店舗来店後もアプリに戻ってくる仕組みがない(弱い)」ことが課題と特定。
  • 解決策の発想:アプリ限定クーポンの配布。来店時に利用可能な特別クーポンをアプリ内で通知し、再来店の動機づけを強化する。また、購入履歴や来店頻度に基づき、ユーザーごとに異なる商品提案を行い、再度アプリを開く理由を提供する。
  • 解決策の提供:限定クーポンの配信を行い、プッシュ通知の開封率、アクティブ率、クーポン利用率を定量データで測定。アプリの再起動率が20%向上し、アプリ経由での購入数やクーポン利用率が大幅に増加した。

さいごに

 本記事では定性データの活用方法と、これまでご紹介してきた情報を組み合わせてUX改善を進めていく流れを解説しました。

 ユーザーの深層心理を理解するためのデザイン思考プロセスでは、データに基づいた仮説の検証と改善が鍵となります。定量データに加え定性データを活用することで、ユーザーの隠れたニーズを掘り起こし、持続的なUX改善に取り組むことができるでしょう。ユーザーの声を深く聞き、データに基づいたアプローチを継続することで、より高いユーザー満足度とアプリの成長を目指していただければ幸いです。

 アイリッジではアプリマーケティングやアプリの体験価値向上を目的として、データに基づいた戦略策定から実行支援、UX改善までをワンストップで提供しています。詳しく知りたい方は以下のサービスページをご確認ください。

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この記事の著者

西井 幸子(株式会社アイリッジ)(ニシイ サチコ)

株式会社アイリッジ UXコンサルタント/マーケティングプランナー アパレル業界でVMDや店舗管理に携わった後、デジタルエージェンシーで大手ブランドやサービスのデジタル戦略やコンテンツマーケティング、メディアガイドラインの策定等に従事。アイリッジではマーケットリサーチやアプリを中心としたユーザー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3065 2024/12/18 11:00

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