変革を全社に展開するためのプラットフォーム戦略
続いて武智氏は話題を「1→10フェーズ」での事例に移した。このフェーズでは、0→1フェーズで構築した成功モデルを複数の事業部門に展開し、全社としての価値を拡大する。デジタル内製組織の役割も、特定の事業部門を支援する段階から、全社的な価値の最大化を目指す方向へと進化していった。
0→1フェーズにおいて武智氏は代理プロダクトオーナーとして事業部門の要求に応えながら共同で開発を進めてきた。しかし、支援対象の事業部門が増えるにつれ、製品特性やビジネス特性の違いが顕在化し、特定の事業部門に偏った機能開発や人員リソースの不足といった課題が浮上した。
これらの課題に対応するため、武智氏はプロダクト開発を「個別システム作りから脱却し、プラットフォーム作りへシフトすること」に舵を切った。プラットフォームでは、事業部門で重複する提供機能を共通化し、効率化を図るとともに、全社にとっての本質的価値を見極めることに注力した。チェンジ戦略やビジネスモデルの分析を進める中で、プラットフォームの仕様策定や共通基盤の構築、提供機能のオンオフ制御といった仕組みを整備した。
開発プロセスでは、スピードや俊敏性を重視し、効率的な体制を構築。事業部門との連携方法や仮説検証のプロセスを再設計し、伴走型支援を維持しながら成果を出す仕組みを整えた。2024年にはプラットフォームづくりの型を適用し、事業部門へのプロダクト展開を本格的に開始した。
武智氏は「プラットフォームを通じて事業部門にわずかな制約を示すことで、変革のきっかけが生まれています。この取り組みはプロダクト提供にとどまらず、ビジネスモデルや組織の変革を目指すものへ進化していると感じています。ただし、まだ道半ばであり、多くの課題が残っています。同様の取り組みをされている方と情報交換ができればうれしいです」と語り、同じ課題を抱える人々との連携を呼びかけた。