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デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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「Product Leaders AI 2025」レポート

無数の製品が生まれるAI時代に、私たちはなにを作るのか──Figma VP of Productが語る、プロダクト開発の本質

「Product Leaders AI 2025」レポート

「文化を育て続けていくこと」がなぜ大切なのか

Ken:最近、「AIを活用している企業では、ジュニアレベルのエンジニアやデザイナーの採用を減らしている」という話を耳にしますが、Figmaでは、こうした変化をどう考えていますか?また、今後それぞれの世代の働き手がテクノロジーをどう受け入れていくと捉えているのか、見解をお聞かせください。

Sho:私たちでいえば、ジュニアエンジニアの採用をやめたわけではありません。今も引き続き、ジュニアとシニアの両方を採用しています。というのも、それぞれが会社にもたらす価値が異なるからです。また、Figmaで開発しているソフトウェアはかなり技術的で、ほかの企業が扱っている製品とは少し性質が違う部分があるなどの理由から、私たちは変わらず若いエンジニアを採用していますし、それはとても良いことだと思っています。

 それをふまえ、私は企業がもっとも大切にすべきなのは、「自分たちは何者なのか」「何を成し遂げたいのか」だと考えています。

 そのなかで私が言いたいのは「“カルチャー”こそがすべての土台になる」ということ。環境がどれだけ変わっても、企業文化がしっかりしていれば、その時代にふさわしい会社であり続けることができます。だからこそ、会社の文化を常に観察し、手入れをし、育て直していくことが大切なんです。そしてその文化を豊かにするうえで、若い人もベテランも、さまざまな背景を持つ人たちが混ざり合っていることこそ、とても重要なポイントだと考えています。

 そしてもう一つ大切なのが、「自分たちは何をするのか」という点です。

 例えば、これから5年後、10年後のソフトウェアの世界を想像してみてください。ソフトウェアを作るコストがどんどん下がっていけば、より多くの人がソフトウェアを開発するようになるでしょう。昔は、ワープロソフトを開発している企業は数えるほどでしたし、のちに「もう新しいワープロソフトなんて誰も作らないだろう」と思われる時期がやってきました。

 ですがこれから10年、20年後の世界ではどうでしょう。もしソフトウェアが誰にでも簡単に作れるようになったら、Wordのようなアプリが10種類、20種類、あるいは100種類も存在しているかもしれません。そんな「無数のソフトウェアがあふれる世界」では、果たして誰が勝つのでしょうか。

 だからこそ私たちは、「何を模倣し、何を再構築すべきかを見極めること」こそがもっとも重要になると考えています。誰でもソフトウェアを作れる時代だからこそ、「正しいソフトウェア」を生み出す必要がある。誰もが車を運転できたとしても、「正しい方向に走る」ことが大切なのと同じ。私の考える「デザイン」とは、まさにその方向を見極める行為なんです。

 解くべき課題は何か。「理想のワープロ」を作るとはどういう意味なのか──。それを深く考え抜くことがデザインだと思っています。それが、これからの時代においてデザインはますます重要になると、私たちが信じている理由です。

Figmaが目指す「誰もが少しずつ何でもできる」世界

Ken:Figmaは今後どのようにその方向をリードしていくのでしょうか。イメージがあればお聞かせください。

Sho:すべてがあまりに速く変化しているので断言は難しいのですが、私たちが考える未来の働き方とは、誰もが少しずつ「なんでもできる」世界です。

 エンジニアはデザインを少し手がけ、プロジェクトマネージャーはコードを少し書く──。そんなふうに、職種の境界が溶けていく世界です。そしてそれにあわせてこれからのデザイン、「手でコードを書く」「AIにプロンプトを出してもらう」「マウスやトラックパッドで描く」といった行為を、シームレスに行き来できる形になると思います。LLMの登場によって、文章やコードを書くスピードは驚くほど速くなりました。デザインの領域ではまだそこまで大きな影響は出ていませんが、それも時間の問題でしょう。

 そもそもデザインとは、絵を描くことではありません。デザインとは、「課題をどう解くか」を考えるプロセスなんです

 そして私たちは、AIなどの新しい手段によって、そのプロセスがますます加速していくと考えています。さらに、多様な人々が協働することで、そのスピードと創造性は一段と高まっていくはずです。

Ken:では最後に、日本でプロダクト開発に携わる人たちにメッセージをお願いします。

Sho:未来というのは、まさにその中にいるときには決して見えませんが、振り返ってみると「あぁ、そうなるのは当然だった」と思えるものだと思うんです。

 先ほどもお伝えしたとおり、AIの登場は私がWebの誕生以来でもっともワクワクしている出来事です。今ではオンラインで買い物をすることもニュースをWebで読むのも当たり前になりましたが、以前はそんな未来を誰も描くことができなかった。これはAIでも同じです。

 この先どのように世界が変わっていくのかは、まだ誰にも分かりません。ただ1つ確かなのは、これからの10年で何千、何万という変化が起こるということ。そして10年後に振り返ったとききっと、「なぜあのとき思いつかなかったんだろう」と感じるのでしょう。

 だからこそ、今が考えるべきときなんです。アイデアを持つのに特別な資格はいりません。誰もが新しい発想を生み出し、それを形にできるチャンスがある。大きな変化が起きている今こそ、何かに挑戦するのに最適なタイミングです。

 そんななかで私がお伝えしたいのは、「今こそ、自由に創造しよう」ということ。すべてが、あまりに速いスピードで変化している今、「バカげたアイデア」なんてものは存在しないのですから。

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この記事の著者

中村 直香(ナカムラ ナオカ)

 IT系編集者/ライター。都市銀行、クリエイター育成機関での営業などを経て、出版社のウェブメディア事業へ従事。約8年間で、コンテンツの企画や取材、編集、執筆、新規ウェブメディアの立ち上げなどを経験。その後はフリーランスとして独立し、事業会社のオウンドメディア運営・企画、インタビュー記事やイベントレポ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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