未来のチームは「境界」が溶けていく
セッションの終盤、蜂須賀氏が「場所が変われば人の思考も変わる」と水を向けると、議論は「これからのチームのあり方」へと広がった。
3氏が共通して語ったのは、「会社の内と外」「仕事とプライベート」といった境界線の融解である。
青野氏は、「依存先を分散させること」の重要性を説く。
「これからの時代、1つの会社、1つのチームだけに依存するのはリスクが高い。副業でも趣味のコミュニティでもいい。複数の『居場所(チーム)』を持つことで、精神的な自律が保たれ、結果として本業のチームにも良い影響を与えます」(青野氏)
橋本氏もこれに呼応し、これからのキャリア論として「呼ばれる人になる」ことを挙げた。
「会社という枠組みを超えて、プロジェクト単位で人が集まり、終われば解散する。映画の撮影チームのような働き方が増えていくでしょう。その時重要なのは、特定の肩書きではなく、『あいつと仕事をしたい』と呼ばれる存在であることです。そのためには、社内だけでなく社外に対してもオープンマインドでいることが大切です」(橋本氏)
結び:明日からプロダクトマネージャーができる「小さな一歩」
国産SaaSを代表する3社のトップが語り合った40分。
そこで語られた「よいチーム」の本質は、決して魔法のような新しい手法ではなかった。
- 共通のゴール(目的)を明確にする
- メンバーの組み合わせ(コンテキスト)を最適化する
- 「質問責任」と「肯定ファースト」で、情報の流動性を高める
- そして、変化(新陳代謝)を恐れない
これらはすべて、プロダクトマネージャーが日々の開発現場で実践できることばかりだ。
「チームがうまくいかない」と悩んだ時、まずはチームの中心にいる自分自身が、弱みを見せ、分からないことを「分からない」と問いかけることから始めてみてはどうだろうか。
「石垣」のように凸凹なメンバーが、互いの強みを噛み合わせ、共通のゴールに向かって熱狂する。そんなチームを作れるのは、他ならぬあなた自身なのだから。
