「コンサル×AI SaaS」への転換
現場のエンジニアが個人の努力でAIを活用しようとする一方、組織としての導入が進まない──この課題に対し、執行役員の西澤恭介氏は新たな事業戦略を提示した。
それが、従来のSaaS提供にとどまらない「コンサルティング×AI SaaS」へのビジネスモデル変革である。
「便利なツールを導入するだけでは、日本企業の課題は解決しない。例えば『GitHubやJiraを入れたが運用が回っていない』という状態で、さらに『AIを使え』と号令がかかっても現場は混乱するだけだ」(西澤氏)
そこで同社は、ツールの導入手前にある課題設定やプロセス改善から伴走するコンサルティング部隊を新設。さらに、組織体制としても「プラットフォーム事業」と「新規事業開発」を明確に分け、意思決定と実行の分離を図った。
単にツールを売るSaaSベンダーから、顧客の開発生産性と組織課題にコミットするパートナーへの脱皮を図る狙いである。
開発と経営をつなぐ4つの新ソリューション
この新戦略に基づき、以下の4つの新サービス・機能が紹介された。これらはエンジニア、プロダクトマネージャー、そして経営層をつなぐ共通言語となることを目指している。
1. Findy AI+(仮称):AI導入効果の「見える化」
日本企業が気にする「ROI」に対する回答となるプロダクトである。チャット形式で手軽に、組織内で誰がどれくらいAIツールを活用し、開発効率がどう変化したかを可視化する。
「AIへの投資がこれだけの成果を生んでいる」というエビデンスを提示することで、経営層の納得感ある投資を引き出す武器となる。今春(3〜4月頃)の本格リリースを予定している。
2. Findy Insights:ボトルネックは「実装」から「企画」へ
AIによって実装スピードが上がれば、次のボトルネックは上流の「企画・仕様策定」に移る。
「Findy Insights」は、顧客の声やインタビューなどの非構造データをAIで分析・構造化し、プロダクトマネージャーの意思決定を支援するツールである。すでに初期版の提供が開始されており、プロダクトマネージャーが「何を作るべきか」をより速く、正確に判断するための基盤となる。
3. Findy AI Career:年収査定に「AIスキル」を直結
「AIを使える人は年収が上がり、使えない人は下がる」。山田氏は質疑応答で、この現実を可視化する機能の実装(2月予定)について言及した。
GitHub上の活動データなどから「AIへの指示出し能力(プロンプトエンジニアリング力など)」を解析し、スキル評価に反映させる。エンジニアにとっては、自身の市場価値を客観視する新たな指標となるだろう。
4. アーキテクチャ壁打ちAI:設計の民主化
「Findy Tools」に蓄積されたアーキテクチャ図のデータを活用したAI診断ツールである。自社のシステム構成を入力すると、ベストプラクティスと比較した改善案が提示される。
AI時代に重要性を増す「アーキテクチャ設計」を支援するもので、現在はアルファ版として検証が進められている。
大企業の内製化とエンジニアの未来
質疑応答では、大企業における「開発内製化」の実態についても議論が及んだ。
山田氏は「SaaS is dead(SaaSは死んだ)」という言説に対し、「オペレーション系SaaSは苦戦しているが、開発・データ基盤系のSaaSは伸びている」と分析する。
「大企業にとって、オペレーションそのものが競争優位の源泉になりつつある。だからこそ、出来合いのSaaSを使うのではなく、自社で内製化したいというニーズが高まっている」(山田氏)
実際、トヨタ自動車や三菱商事系の企業など、従来はSIerに委託していた領域を内製化する動きが加速しており、SIerから事業会社への人材流動も起きているという。
内製化が進む大企業、そしてAIで武装したスタートアップ。どちらの環境においても、エンジニアやプロダクトマネージャーに求められる役割は変化している。
コードを書く作業がAIに代替されていく中で、人間は「AIにどのような問いを投げるか」「どのアーキテクチャを選択するか」、そしてプロダクトマネージャーであれば「どの機能に投資するか」という、より上位の意思決定にリソースを集中させる必要がある。
ファインディが掲げた「開発×経営の意思決定構造の変革」というテーマ。それは、ツール導入の話にとどまらず、2026年以降を生き抜くための、エンジニアと企業の「OSのアップデート」を迫るものであった。
